【拒絶理由で学ぶ】発泡性顆粒、発泡性錠剤、発泡性顆粒の製造方法【進歩性(29条2項)】

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書誌事項・特許請求の範囲

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2022-85767(P2022-85767A)
(43)【公開日】令和4年6月8日(2022.6.8)
(54)【発明の名称】発泡性顆粒、発泡性錠剤、発泡性顆粒の製造方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有することを特徴とする、発泡性顆粒。
【請求項2】
さらに、脂質成分を含有することを特徴とする、発泡性顆粒。
【請求項3】
さらに、賦形剤を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の発泡性顆粒。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性顆粒及び発泡助剤を含有することを特徴とする、発泡性錠剤。
【請求項5】
発泡成分、セルロース誘導体、及びカテキン類を含有する発泡性顆粒の製造方法であって、
工程(i)前記発泡成分を含有する粉末組成物を準備する工程、
工程(ii)前記セルロース誘導体を含有するセルロース誘導体含有溶液を準備する工程、
工程(iii)前記粉末組成物に、前記セルロース誘導体含有溶液を添加して造粒する工程、を有し、
前記カテキン類は、前記粉末組成物及び/又は前記セルロース誘導体含有溶液に添加することを特徴とする、発泡性顆粒の製造方法。

拒絶理由通知書

 特許出願の番号      特願2020-197627
 起案日          令和 6年 4月30日
 特許庁審査官       中西 聡         2665 4C00
 特許出願人代理人     弁理士法人雄渾 様
 適用条文         第29条第2項(進歩性)

 この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見が
ありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してくだ
さい。

                理由

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又
は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を
通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技
術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたもので
あるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

     記   (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1-5
・引用文献等 1
・備考
 引用文献1には、緑茶抽出物、ビタミン、炭酸水素ナトリウム、ポリビニルピロリドンを含む、発泡性組成物を形成する顆粒水溶性製剤の発明が記載されている(特に、請求項1、10、21、[0042]実施例2)。ここで、段落0019に記載されているように、炭酸水素ナトリウムは発泡成分である。
 請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明を対比すると、前者はセルロース誘導体及びカテキン類を含むと特定されているのに対し、後者にはそのような記載がない点で相違する。
 これらの相違点について検討する。

                                                                 P.2

 まず、カテキン類を含む点について、例えば段落0004に記載されているように一般的に緑茶抽出物にはカテキンが含まれており、段落0026に記載されているように顆粒水溶性製剤はカテキンを放出するものであるところ、引用文献1に記載された顆粒水溶性製剤はカテキンを含有すると解される。したがって、この点は実質的に相違点ではない。
 次に、セルロース誘導体を含む点について、引用文献1の段落0029に記載されているように、引用文献1に記載された発明において、ポリビニルピロリドンは結合剤として水溶性製剤中に含有させており、この段落には、結合剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体を含む公知の潤滑剤も等しく使用できることが記載されている。そうすると、引用文献1に記載された発明について、ポリビニルピロリドンにかえてセルロース誘導体を結合剤として用いることは当業者が適宜なし得ることである。そして、本願の発明の詳細な説明を参照しても、セルロース誘導体を含有させたことによって当業者が予測できない顕著な効果が奏されるとはいえない。

 請求項2に係る発明は、さらに脂質成分を含有すると特定しており、この点で
引用文献1に記載された発明とさらに相違する。
 しかしながら、引用文献1の段落0042に記載されているように、ビタミンとしては「水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B12、B13、B15、B17、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、PABA、ビタミンC およびビタミンP)または油溶性ビタミン(ビタミンA、D、EおよびK)のいずれかから1種以上のビタミンを選択でき」る。
 ここで、参考文献2(「脂質」欄)に記載されているように、一般に脂質とは、水に不溶で脂肪溶剤に溶ける、いわゆる脂溶性の物質の総称と言えるから、前記油溶性ビタミンは、脂質成分の一種と解される。
 そして、引用文献1に記載された発明におけるビタミンとして、前記のとおり脂質成分と言える油溶性ビタミンを選択することは当業者が容易に想到することである。また、本願の発明の詳細な説明を参照しても、脂質成分を含有させたことによって当業者が予測できない顕著な効果が奏されるとはいえない。

 請求項3-5に係る発明に関して、発泡を補助するために発泡助剤を含有させること、製剤に一般的に用いられる公知の賦形剤を適宜配合すること、公知の方法を用いて製剤を製造することは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないところ、特に本願請求項3-5に記載された成分の配合や、製造方法を満たすことによって当業者が予測できない顕著な効果が奏されるはいえない。

 したがって、請求項1-5に係る発明は引用文献1に基づいて当業者が容易に

                                                                 P.3

発明をすることができたものである。

             <引用文献等一覧>
1.特表2003-503324号公報
2.今堀和友 他編,「脂質」,生化学事典第3版,東京化学同人,1998年(周
知技術を示す文献)

進歩性の判断フロー

進歩性有無の判断の仕方は特許庁が公開しています。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0202bm.pdf

チャートにしたら下のようになります。

小山特許事務所HPより引用

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