マカや亜鉛をただ混ぜただけではない?
「エデース亜鉛」の配合ロジックを
特許の実施例データから読み解く
こんにちは、身近な商品に隠された知財の面白さを紐解くシリーズ「商品で見る特許」。
以前の記事で『エデース亜鉛』の配合ロジックをざっくりご紹介しましたが、今回はその続編として、特許第5383549号の実施例データにがっつり踏み込んでみたいと思います。
「マカ」や「亜鉛」は男性向けサプリメントの定番成分です。棚に並ぶ商品のパッケージを眺めると、どれも似たような顔ぶれの成分が並んでいて、「結局どれも同じじゃないの?」と思ったことがある方もいるんじゃないでしょうか。
実は、特許公報を読んでいくと「単に成分を足し算した」わけじゃないことがわかります。ポイントは「卵白加水分解物」と、「亜鉛・マカ・エゾウコギとの組み合わせ」です。今回はそこを実施例のデータレベルまで掘り下げていきます。
そもそもこの特許、何が新しいのか
特許公報には「特許請求の範囲」というセクションがあります。ここには「この特許で権利として守られている発明の中身」が書かれていて、一言で言うと”この特許の本丸はどこか”が書いてある部分です。この特許の請求項1を読むと、核となる発明は「卵白加水分解物+亜鉛化合物 or マカ or エゾウコギ」の組み合わせによるNO産生促進組成物であることがわかります。
ここで「NO産生促進」というキーワードが登場します。NOとは一酸化窒素(Nitric Oxide)のことで、血管内皮細胞が産生する生体内シグナル分子です。血管平滑筋に作用して血管を拡張させる働きがあり、全身の血流維持に関わっています。
このNO産生を担う酵素がeNOS(内皮型一酸化窒素合成酵素)で、食品由来の成分でこのeNOSを活性化できれば、副作用リスクを抑えながら血流のサポートにアプローチできる——これがこの特許の出発点にある考え方です。
公報の背景技術(【0013】〜【0015】)には、既存の医薬品アプローチには副作用リスクや使用制限があり、一方で当時の健康食品は「効果が十分でなかった」と率直に書かれています。
「ただの卵白」じゃない——酵素処理が鍵を握る
この特許で使われる「卵白加水分解物」は、市販の卵白粉末をそのまま使うわけではありません。アスペルギルス属やバチルス属の微生物が産生するプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を使って、卵白を細かく分解したものです。
アスペルギルス(麹菌の仲間)やバチルス(枯草菌の仲間)の酵素は、食品加工や発酵産業でも広く使われています。重要なのは、同じ卵白でも「どのプロテアーゼで分解するか」によって得られるペプチドの種類が変わり、その結果としてNO産生に対する働きも変わってくるという点です。
実施例1・2:まず「どの酵素が有効か」を検証する
実施例1では、7種類の異なるプロテアーゼ処理でそれぞれ卵白加水分解物を調製し(サンプルNo.1〜7)、eNOSを安定発現させた細胞株(B36株)に添加してNO産生量を比較しています。
公報の図1を見ると、バチルス属菌由来のオリエンターゼを使ったサンプルNo.5〜7が、アスペルギルス属やパパイン系のNo.1〜4と比べて際立って高いNO産生促進活性を示していることがわかります。
ちなみに実施例2では、調製条件(pH・温度など)をさらに細かく振って、NO産生活性を高める分解条件を絞り込んでいます。公報のサンプルNo.8〜10の比較からは、酵素添加の順序や組み合わせも結果に影響することが読み取れます。
用量依存性の確認——「濃度が上がるとNO産生も増える」を証明する
実施例3:どれだけ使えば効くのか
実施例3は、実施例2で最も高い活性を示した卵白加水分解物について、添加濃度を1〜1000μg/mLまで段階的に変えてNO産生量がどう変化するかを確認した試験です。
結果として、添加濃度の上昇とともにNO産生量が段階的に増加し、1000μg/mLの濃度でコントロール群との間に統計的な有意差(p<0.01)が認められています(公報図3)。
さらに同実施例3では、NOS阻害剤のL-NAME(L-NG-Nitroarginine Methyl Ester)を共存させると卵白加水分解物によるNO産生促進が濃度依存的に抑制されることも確認されています(公報図4)。これは「卵白加水分解物がeNOS酵素を介してNOを産生させている」というメカニズムの根拠を示す実験です。
「効果があること」と「なぜ効果があるのかのメカニズム」を両方データで示せている発明は、特許審査の場でも強い裏付けになります。この特許はその両方をきちんと押さえています。
ここが本丸——亜鉛との「相乗効果」を示す実施例5
実施例5では、卵白加水分解物(1000μg/mL)に塩化亜鉛を3段階の濃度(1・10・100μg/mL)でそれぞれ組み合わせた場合のNO産生量を、単独使用と比較した試験を行っています。比較サンプルは以下の通りです。
| サンプルNo. | 内容 |
|---|---|
| No.11〜13 | 塩化亜鉛のみ(1・10・100μg/mL) |
| No.14 | 卵白加水分解物のみ(1000μg/mL) |
| No.15〜17 | 卵白加水分解物(1000μg/mL)+塩化亜鉛(1・10・100μg/mL) |
公報の図6を見ると、組み合わせサンプル(No.15〜17)は単独成分(No.11〜14)のいずれと比べても顕著に高いNO産生量を示しており、特に卵白加水分解物+塩化亜鉛10μg/mL(No.16)が最も高い値となっています。
「卵白加水分解物に亜鉛化合物を組み合わせることで、NO産生能を相乗的に向上させることができる」 ― 特許第5383549号 【発明を実施するための形態】【0020】より要約
「とりあえず男性向けに良さそうな成分を並べた」のではなく、「組み合わせることで初めて出る相乗効果を、細胞実験のデータで裏付けた」というのがこの発明の肝だと思います。この差は特許として権利化できるかどうかの差でもあります。
同様の組み合わせ試験はマカやエゾウコギ、ガラナ、シトルリン、トンカットアリとの組み合わせ(実施例5の後半〜実施例9)でも行われており、それぞれのNO産生への寄与が検証されています。卵白加水分解物との組み合わせパターンを網羅的に検証しているあたり、研究の丁寧さが伝わってきます。
「亜鉛」という成分について、もう少し掘り下げると
上の実施例でメインの組み合わせ相手になっている「亜鉛」ですが、これは特許の観点だけでなく栄養学的にも重要な成分です。
亜鉛は体内で300種類以上の酵素の構成成分または補因子として機能するミネラルで、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では成人男性の推奨量が1日あたり11mgと定められています。現代の食生活では不足しがちなミネラルのひとつとして知られており、牡蠣・牛赤身肉などに多く含まれますが、毎日の食事から安定して摂るのはなかなか難しい。
日本では亜鉛は栄養機能食品の対象成分として消費者庁に位置づけられており、一定量を含む製品には以下の機能表示が認められています。
・亜鉛は、たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立つ栄養素です
・亜鉛は、生殖機能を正常に保つのに必要な栄養素です
・亜鉛は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です
・亜鉛は、味覚を正常に保つのに必要な栄養素です ― 消費者庁 栄養機能食品の基準(法定表示)
また、特許公報の【0036】には亜鉛化合物の具体例として「グルコン酸亜鉛」が明記されています。グルコン酸亜鉛は有機亜鉛の一種で、酸化亜鉛などの無機亜鉛と比べて体内への吸収に優れるとされています。どんな成分も「体内に取り込まれなければ意味がない」ので、吸収性は製品設計上のポイントになります。
エデース亜鉛について PR
上でご紹介した特許研究の文脈でいうと、グルコン酸亜鉛を採用している点がひとつのポイントです。1日あたりの亜鉛摂取量の目安は約14mgで、成人男性の推奨量(11mg)をカバーできる設計になっています。
栄養機能食品として届出済みなので、「生殖機能を正常に保つのに必要な栄養素」としての亜鉛の機能表示が認められています。成分や配合の根拠を大切にしながらサプリを選びたい方にとって、参考になる選択肢のひとつではないでしょうか。
※本製品は栄養機能食品であり、疾病の治療・予防を目的とするものではありません。
おわりに
特許公報は難しそうに見えて、実施例のデータは「この成分の組み合わせで何が起きたか」を素直に示してくれているものです。細かい数値や統計の記号が並んでいますが、グラフを追っていくと「なるほどこの組み合わせが肝なんだ」というのが見えてきます。
サプリメントは成分表示だけ見てもなかなか判断が難しい。でも、その背後にある特許を読むと「なぜその成分なのか」「なぜその組み合わせなのか」という開発側のロジックが見えてきます。そういう視点でサプリを選ぶのも、一つの楽しみ方じゃないかなと思っています。
今後も身近な商品の特許をこうして読み解いていく予定なので、気になる商品やリクエストがあればお気軽にどうぞ。
参考情報・出典
- 特許第5383549号「NO産生促進組成物及びそれを含有する組成物」出願人:株式会社ファーマフーズ(J-PlatPat)
- 日本人の食事摂取基準(2020年版)厚生労働省
- 栄養機能食品制度について 消費者庁
- A8.net 法律関連の禁止事項(https://www.a8.net/compliance/legal-prohibitions.php)


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