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青汁に重曹とクエン酸を合わせる、という発想は最近じわじわ広まっているけれど、それを「製品として設計する」となると、話はまったく別の次元になる。噂の重曹クエン酸青汁® PREMIUMは、青汁の製法そのものに特許技術を絡めた製品で、公報を読むと「なぜこの青汁なのか」が少し見えてくる。
この特許、何を権利にしているのか
今回読んだのは特許第7290261号(2023年6月登録)、権利者は株式会社東洋新薬(福岡市)で、発明の名称は「大麦緑葉粉末の製造方法」です。
「請求項」というのは特許の権利範囲を定めた部分のことで、ここに書いてある要件をすべて満たした方法を他社が使うと、権利侵害になる可能性があります。この特許の請求項1を読むと、権利の核心は「成分の組み合わせ」ではなく「大麦若葉をどう切るか」という工程にあることが分かります。
具体的には、2本の回転軸にそれぞれ取り付けた「回転カッタ」を噛み合わせて大麦緑葉をはさみ込むように引き込み、せん断(剪断)によって切断する、というやり方を権利にしています。さらに請求項1には、ディスク(回転カッタの刃が付いた円板)の厚さが15〜30mm、ブレードの間隔が10〜35mm、ディスクの直径が22〜27cmという数値も書かれています。
なぜ「切り方」を特許にするのか。それを読み解くのがこの記事のメインテーマです。
大麦緑葉粉末の製造 ── 公報から見えてくること
従来の「垂直切断」には限界があった
公報【0005】には、大麦緑葉粉末の製造ラインにおける悩みが書かれています。従来の製法では「裁断する前処理が律速(ボトルネック)になっていた」とあります。
律速とは、ラインの中で一番遅い工程がライン全体の速度を決めてしまう現象のことです。青汁の場合、刈り取った大麦を細かく切る工程が遅いと、後工程(ブランチング・乾燥・粉砕)がいくら速くても全体がそこで詰まってしまいます。
比較例(【0069】)を読むと、従来の垂直裁断方式の高速裁断機では切断後の長さが15〜30cm、処理能力は1.9t/hだったと書かれています。一方、実施例1(【0068】)では、この特許の切断装置を使うと切断後の長さが3〜7cmで処理能力が3.7t/hになったとあります。公報にはっきり「比較例1に比して実施例1は前処理の処理能力が2倍となった」と書かれています。
品質を落とさずに処理量を2倍にできた、という結果が実施例として示されています。
回転カッタが大麦緑葉を「引き込む」しくみ
この切断装置の面白いところは、ブレードの形状にも工夫があることです。
公報【0030】には、ブレードが「第1刃面(θ1)」と「それより角度が小さい第2刃面(θ2)」の2つの面を持つ構造だと書かれています。刃先縁はこの2面の間に形成されます。これにより、大麦緑葉を刃先縁でひっかけて第1刃面で効率よく捕集した後に切断できる、とあります。
また【0034】には、刃先縁が回転軸の軸方向に対して「斜めに」形成されている点も解説されています。これによって刃の上に溜まった水分が隙間から下に逃げやすくなり、水分が多い生の大麦緑葉でも噛み込みやすくなる、という理屈です。生の葉物が持つ水分の多さへの対策が刃の形状に組み込まれているのが、読んでいてなかなか面白い部分でした。
さらに【0033】【0035】では、軸方向に並ぶブレードの位相を少しずつずらす配置構造についても触れられています。これにより複数の刃先縁が同時に負荷をかけることを防ぎ、回転軸や刃への集中した負荷を分散させる効果があるとされています。

ブランチング・乾燥・粉砕の工程
切断の後は、ブランチング処理(大麦緑葉の緑色を鮮やかに保つための加熱処理)に入ります。公報【0050】によると、70〜100℃の熱水または水蒸気で30〜240秒間処理する方法が挙げられています。請求項2には「ブランチングの温度が85〜95℃」という具体的な数値も書かれています。
乾燥は水分含量が10質量%以下(好ましくは5質量%以下)になるまで行われ(【0052】)、粉砕にはジェットミルを使うことが特許として押さえられています(請求項4)。
ジェットミルとは、高圧の気流で粒子を衝突させて細かく砕く装置のことです。摩擦熱が発生しにくいため、熱に弱い成分を壊しにくいとされています。公報【0053】には「高品質の緑葉粉末が得られる利点がある」と書かれています。ただし、ジェットミルに供するには「目開き1mmの篩を通過する乾燥物」程度まで事前に細かくしておく必要があり、そのためにも前処理の裁断工程が重要になる、という流れです。
用量・比率・組み合わせの確認
公報【0057】には、成人1日の摂取量として「大麦緑葉粉末の質量換算で0.1〜100g、好ましくは1〜50g」と書かれています。製品に使われる際の含有量については【0056】に「乾燥質量で0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、1質量%以上がさらに好ましい」とあります。
青汁用途に限れば【0066】に、固形分中3質量%以上であることが本製造方法の効果を高める点で好ましい、5質量%以上がさらに好ましい、10質量%以上が特に好ましいと書かれています。
「青汁の品質」は切断工程から始まっている
読んでみて気になったのは、ブランチング(加熱)前の裁断サイズが、後の工程の品質に直結しているという記述です。
公報【0042】には「収穫後、ブランチング処理にて十分に大麦緑葉を均一に所定温度に加熱できるサイズに切断するまでの時間を短縮できるので、収穫からブランチング処理までの前処理時間を短縮でき、これにより得られる粉末品質の安定化の効果も得られる」と書かれています。
つまり、「短時間で細かく切れる → ブランチングまでの時間が短くなる → 品質が安定する」という連鎖があるわけです。収穫直後の大麦緑葉は時間が経つほど変質しやすい(公報【0014】)ため、速く細かく切ることは単なる生産効率の問題ではなく、最終的な色味や風味に関わってくる、という理屈が公報の記述から読み取れます。
また公報【0055】には「ブランチング処理前の裁断処理により得られる形状・大きさが適度であるため、ブランチング処理にて品質劣化が起こらないため、その色味や風味が良好なものである」と直接的に書かれています。
青汁を選ぶとき「色が鮮やか」「青臭くない」といった要素を気にする人は多いと思いますが、それが実は「最初の切断工程がどうだったか」に依存しているというのは、公報を読む前には想像しにくいことでした。
大麦若葉について少し補足
大麦若葉はビタミン類・ミネラル類・食物繊維に富む素材として知られており、公報【0002】にもそう記されています。青汁の素材として長年使われてきたものです。
公報【0013】によると、収穫時期は「分けつ開始期から出穂開始前期」が好ましく、背丈30〜70cm程度のものが推奨されています(「分けつ」とは、植物の茎の根元付近から新しい茎が出てくること)。この時期の大麦は栄養が充実しているとされますが、同時に繊維も多く切断しにくいという面があり、それがまた前述の切断装置が必要とされた背景でもあります。
なお、この製品(噂の重曹クエン酸青汁® PREMIUM)には東洋新薬の大麦緑葉粉末が使われていると考えられますが、製品としての配合比や成分量については公報とは別に製品表示等でご確認ください。
出願中のレシピ特許(特願2025-108602)について
製品サイトの情報によると、「重曹×クエン酸×青汁」の黄金比とされる配合レシピは現在特許出願中とのことです(特願2025-108602)。執筆時点では公開されていないため内容を直接確認することはできませんが、通常、特許出願は出願から約1年半後に公開されます。
出願が公開された段階で読むと、おそらく次のような要素が権利範囲として書かれているのではないかと想像します。重曹(炭酸水素ナトリウム)とクエン酸の比率、青汁粉末の配合量、そして三者を混合したときのpHや発泡特性に関する規定といったあたりが候補として思い浮かびます。ただしこれはあくまで推測で、実際の内容は公開後の公報で確認するのが確実です。
「重曹クエン酸水」はここ数年SNSでも話題になっていて、重曹とクエン酸が水に溶けると炭酸ガスが発生し、爽快感のある飲み物になることが知られています。それを青汁の栄養設計と組み合わせて「毎日続けやすい味」にするための配合は、確かに特許で保護する動機が十分ある部分だと思います。
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公報を読んで感じたのは、この製品の背景にある青汁粉末の製法が、「速く・細かく・品質を落とさずに切る」という工程の工夫に支えられているということです。東洋新薬は約30年にわたって青汁素材の研究を続けているメーカーとされており、今回の特許もその蓄積の一部といえます。
重曹クエン酸の爽快感と青汁の栄養設計を組み合わせた製品として、気になる方はAmazonでご確認いただけます。
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※本製品は食品であり、疾病の治療・予防を目的とするものではありません。
おわりに
大麦緑葉粉末の特許というと、成分や効能の話かと思いきや、読んでみると「刃の形」と「回転速度」の話でした。素材の品質が工程設計に左右されるというのは、食品製造全般に言えることだと思いますが、特許を通じてその具体的なロジックが見えてくるのは面白いところです。レシピ特許の公開後も機会があれば読んでみたいと思います。参考になれば幸いです。
参考:特許第7290261号


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