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アスタキサンチンのサプリを選ぶとき、「どれも同じでしょ」と思って安い方を買ってしまいがち。でも特許公報を読んでみると、粉末の作り方ひとつでかなり差があることがわかりました。ファンケルが2022年に取得した特許第7094816号は、アスタキサンチンをどう粉末にするかという「製法そのもの」に関する特許です。
この特許、何を権利にしているのか
請求項(特許で守られている権利の範囲)を確認すると、大きく2点が権利化されています。ひとつは「アスタキサンチンと多孔性微粒子からなる粉末」という組成物そのもの、もうひとつは「15MPa以上の超臨界抽出を使ってその粉末を作る方法」です。
MPa(メガパスカル)というのは圧力の単位で、15MPaというのは大気圧の約150倍にあたる高圧状態です。その条件でないとうまく作れない、というのがポイントになってきます。
多孔性微粒子(たくさんの細かい穴が開いたごく小さな粒子)として使われるのは、二酸化ケイ素・ケイ酸カルシウム・多孔質でんぷんの3種類【0012】。これらの粒子の穴にアスタキサンチンを担持させ(くっつけて留めておき)、アスタキサンチン以外の油脂成分だけを超臨界CO₂で除去する、という発想で作られています。
アスタキサンチン粉末化技術 ── 公報から見えてくること
アスタキサンチンはもともと油に溶ける成分で、単体で粉末にするのが難しい素材です【0007】。市販のアスタキサンチン含有液状油にはアスタキサンチンが1〜20質量%含まれており、それを粉末にしようとすると乳化剤や賦形剤を大量に混ぜて噴霧乾燥する必要がありました。
ところが従来の粉末化法には問題がありました。公報【0008】によると、乳化技術で作った粉末は油性成分を大量に含むため「打錠適性に問題があった」と書かれています。打錠適性というのは錠剤に成形しやすいかどうかのことで、油が多いとうまく固まらず、製造上のトラブル(スティッキング:粉が杵にくっつく現象など)が起きやすいのです。
ファンケルが開発したのは、この問題を超臨界抽出で解決する方法です。
製造工程を整理すると、まずアスタキサンチン含有液状油と多孔性微粒子を混ぜます。次に超臨界抽出装置の耐圧容器(0.5L)に入れ、CO₂を溶媒として20〜50℃・15MPa以上の条件で30分〜1.5時間抽出操作を行います【0021】。実施例では25MPa・40℃・CO₂流速65g/分・1時間という条件が使われています【0023】。
超臨界CO₂(気体でも液体でもない特殊な状態のCO₂)は油脂は溶かしてくれるのに、アスタキサンチンは溶かしにくいという性質があります。その性質を利用して、油だけを抽出槽の外に運び出し、アスタキサンチンだけを多孔性微粒子の穴の中に残すわけです【0021】。
実施例1〜3の結果をまとめると以下の通りです。

【表1より】
面白いのは比較例です。シクロデキストリンやホタテ末でも粉末化を試みたところ、いずれもペースト状になってしまい、粉末化できなかった【0030】。「多孔性であること」が粉末化の鍵であることが、この比較によってはっきり示されています。

用量・比率・組み合わせの確認
超臨界抽出の圧力条件については、実施例4・5(25MPa・40℃および20MPa・40℃)では粉末化に成功し、アスタキサンチン含有量はそれぞれ12.88%・12.04%でした。一方、比較例4(10MPa・40℃)ではペースト状になり粉末化できませんでした【表2】。
この結果から公報【0037】には「15MPa以上の高圧条件が必要なことが判明した」と書かれています。
アスタキサンチン油と多孔性微粒子の混合比率については、アスタキサンチン1質量部に対して多孔性微粒子0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは1〜6質量部【0019】とされており、実施例ではアスタキサンチン油:添加粉末=10:1(質量比)という条件で試験されています【表1・表2】。
ここが肝心 ── 溶出性と生体吸収性の差
公報で気になったのが、溶出試験と動物試験の結果です。
溶出試験(日本薬局方に準じた試験)では、3種の多孔性微粒子のうち二酸化ケイ素を担体にしたもの(サイロページ)が「特に高い溶出性を示した」と書かれています【0039】。縦軸がA460nm(アスタキサンチンの溶出量)、横軸が時間(分)のグラフ(図4)では、サイロページを使った粉末が他の担体と比較して溶出量が大きく、かつ長い時間にわたって放出が続く傾向が読み取れます。

動物試験(ラット、8週齢雄性、1群6匹、アスタキサンチン50mg/kgを経口単回投与)では、本発明の粉末とアスタキサンチン含有液状油(アスタリールオイル50FC)を比較しています【0040〜0045】。

公報【0045】には「本発明のアスタキサンチン粉末がアスタキサンチンの生体吸収性を顕著に改善することがわかった」と書かれており、図5・図6のグラフではコントロール(液状油)と比べてCmax(血中最大濃度)・AUC(血中濃度の時間曲線下面積=吸収された総量の指標)ともに大きな差があることが確認されます。なお、AUCの有意差検定結果はP<0.05と示されています【図6】。
さらに動物試験(2)では、乳化技術を使った「自己乳化型製剤(SEDDS)」や「現行品(ファンケルの従来製品)」と比較しています【0046〜0051】。面白いのは、従来の乳化型はCmaxが投与後1〜3時間以内に出現するのに対し、本発明の粉末はCmaxが投与後48時間という後半に出現したことです【0051】。一般的な乳化型は素早く吸収される一方、この技術は「緩やかに生体内に吸収されていることが明らかとなった」と公報に書かれています。
アスタキサンチンについて少し補足
アスタキサンチンはβ-カロテンやリコピンと同じカロテノイドの一種で、エビや鮭・ヘマトコッカス藻などに含まれる赤い色素成分です【0002】。高い抗酸化作用を持ち、「紫外線や脂質過酸化反応から生体を防御する因子として働いていると考えられる」と公報に記されています。
機能性表示食品として消費者庁へ届出されている製品では、「アスタキサンチンが目の疲れを緩和する機能、肌の水分を維持する機能などが報告されている」という表示がなされているケースがあります。
アスタキサンチンが油溶性であるため、摂取時の吸収性には製剤の工夫が大きく関わってくるという点は、この特許を読んで改めて実感しました。
ファンケル アスタキサンチン 乳化吸収型について PR
この製品の名前に「乳化吸収型」とついている意味が、公報を読むとよくわかります。ファンケルが持つ特許第7094816号の技術、つまり多孔性微粒子×超臨界抽出という製法がそのまま商品名に反映されているわけです。
「なぜこの値段なのか」という点でいうと、15MPa以上の超臨界抽出装置を使うというのはそれなりに設備コストがかかる工程です。乳化剤と賦形剤を混ぜて噴霧乾燥するだけの低コスト製法とは製造プロセスが根本的に異なります。安いアスタキサンチンサプリとの差は「どんな粉末原料を使っているか」の差でもあります。
また、従来のアスタキサンチン粉末原料(市販品アスタリールパウダー20F)と打錠適性を比較した試験では、既存の市販粉末製品は錠剤強度が低くスティッキングリスクが高い一方、本特許の実施例(特に実施例3:多孔質でんぷん担持)が最も良好な打錠性能を示したと記されています【0057、図8】。「きちんと錠剤になっている」という当たり前の品質の裏にも、こうした製法技術が関わっています。

※本製品は食品であり、疾病の治療・予防を目的とするものではありません。
おわりに
公報を読む前は「アスタキサンチンは全部同じ」と思っていたのですが、粉末の作り方ひとつで溶出性や吸収特性がここまで変わるんだということに正直驚きました。超臨界抽出という言葉だけ聞くと難しそうですが、要は「油だけをCO₂で取り除いて、アスタキサンチンを穴の開いた粒子に閉じ込める」という発想で、公報を読んでからは自分もこの製法で作られた製品を意識して選ぶようになっています。アスタキサンチンを試してみようと思っている方の参考になれば、うれしいです。
参考:特許第7094816号(J-PlatPat) https://patents.google.com/patent/JP7094816B2/ja


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