山田養蜂場 酵素分解ローヤルゼリーキングの特許技術を読み解く ── なぜ安いサプリと中身が違うのか

■本記事はAmazonアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。掲載している特許分析は執筆時点の公報に基づきます。

「ローヤルゼリーはタンパク質が多いから体にいい」という話はよく聞きます。ただ、そのタンパク質、そのまま飲んでもほとんど吸収されないという事実はあまり語られません。山田養蜂場が2023年に取得した特許第7218961号を読んでいたら、ちょうどそこに切り込んだ技術が書かれていました。

この特許、何を権利にしているのか

特許第7218961号の発明の名称は「ローヤルゼリー酵素分解物の製造方法及びローヤルゼリー酵素分解物」です。特許権者は岡山県の株式会社山田養蜂場本社。

請求項(特許で保護される権利の範囲のことです)を整理すると、大きく2種類の権利が書かれています。ひとつは「製造方法」の特許、もうひとつは「その製法で作られた分解物の組成」の特許です。

製造方法の核心は、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)が産生するペプチダーゼを使うこと。しかも「エンドペプチダーゼ作用」と「エキソペプチダーゼ作用」の両方を持ち、至適温度が50℃以上のものに限定しています(請求項1)。

少し補足すると、タンパク質を切る酵素(ペプチダーゼ)には2種類あります。タンパク質の鎖を中ほどから切る「エンドペプチダーゼ」と、端っこからアミノ酸をひとつずつ切り離す「エキソペプチダーゼ」です。この2種の働きを1種の酵素が持っていることで、一段階の処理だけでタンパク質を細かいペプチドやアミノ酸まで分解できます。

組成の特許でポイントになるのが、Tyr-Asp(チロシン-アスパラギン酸、YD)を乾燥物100gあたり100mg以上含むという規定です(請求項3)。さらに、Val-Pro(VP)を40mg以上、Met-Pro(MP)を0.5mg以上含む組成も権利化されています(請求項4)。これが他社製品と組成上どう違うのかは、後半の実施例のところで確認できます。

酵素分解技術 ── 公報から見えてくること

【00004】には、酵素処理していないローヤルゼリーと比べて、酵素処理したものは温度や湿度の影響を受けやすく、加温・加湿条件で褐変が進みやすいという問題が書かれています。

褐変というのは、酵素分解で生じたペプチドやアミノ酸のアミド基と、ローヤルゼリーに含まれる還元糖のアノメリック炭素(糖の1番炭素のこと)との間で起きるメイラード反応によるものと考えられています。焼いたパンが茶色くなるのと同じ化学反応が、保管中に粉末の中で起きていたわけです。

従来の対策としては高圧処理、デンプン添加、酵母発酵などが知られていましたが(【00005】〜【00006】)、いずれも製造時と製造後の両方で褐変を同時に抑制できるものではなかった。ここに本発明の課題があります。

アスペルギルス・オリゼーは「麹菌」として日本の発酵食品(味噌・醤油・日本酒)で古くから使われてきた菌です。この菌が産生するペプチダーゼ「プロテアックス」(天野エンザイム社)を使うことが、公報の実施例1に具体的に書かれています。

実施例1の手順は以下のようなものです。生ローヤルゼリー474gをイオン交換水400mLで希釈し、2N NaOH水溶液でpHを7.8に調整。プロテアックス4.75gをイオン交換水20mLに溶かして加え、全量を980gに調整。50℃の恒温水槽でプロペラ撹拌しながら2時間反応。80℃で15分間加熱して酵素を失活させる(【00066】)。

pH7.8、温度50℃という条件は、プロテアックスの至適pH(7〜8)と至適温度(50℃以上)にきちんと合わせた設定です(【00037】)。

用量・比率・組み合わせの確認

実施例3(【00077】〜【00082】)では、プロテアックス処理品と他社製品の組成を比較しています。使われた機器はThermofisher Ultimate 3000(HPLC)とQ Exactive focus(高分解能質量分析計)。正確に各ペプチドの量をLC-MS法で定量した結果が表4に示されています。

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プロテアックス処理品のYD含量は約173〜181mg。アクチナーゼAS処理品の23mgと比べると、約7〜8倍の差があります。VPにいたっては比較例がほぼ0.2mg以下なのに対し、プロテアックス処理品は60〜75mgと大きな開きが見られます。

市販の他社製品(MF4、RJペプチドパウダー、森川健康堂、マルオ食研、中原、日新ローヤルゼリーP)のYDは0〜24.63mg、VPは0〜10.05mgの範囲にとどまっており(【表4】)、プロテアックス処理品との組成上の差が数値として確認できます。

ここが肝心 ── 酵素の種類でペプチド組成がまるで変わる

表4を見て、なるほどと思ったのはここです。同じ「酵素処理ローヤルゼリー」という名称でも、どの酵素を使うかで産生されるペプチドの組成がまったく異なる。

アクチナーゼAS(ストレプトマイセス・グリセウス由来)もエンドペプチダーゼ・エキソペプチダーゼの両作用を持ちますが(【00034】)、表4での組成は大幅に異なります。プロテアックス固有の「切り方」があって、それによって初めてYD・VP・MPが豊富に生成される、という構造です。

公報【00057】には、「本発明のローヤルゼリー酵素分解物は、抗酸化活性を有するYDを含むため、抗酸化活性を有し得る。さらに、抗酸化活性及び抗糖尿病活性を有するMP及びVPを含むことで、抗酸化活性及び抗糖尿病活性を有し得る」と書かれています。ここに書かれているのは組成の特徴と既知の活性との対応関係であり、本製品を摂取すれば特定の効果が得られるということではありません。

褐変試験の結果(【00074】〜【00075】)も面白いところです。製造直後の輝度(色の明るさ)を測ると、未酵素処理RJが56%、実施例1(プロテアックス)が55%、比較例1(アクチナーゼAS)が45%。従来の方法では酵素分解により見られていた輝度の低下、褐変の現象が本発明の方法によって得られるローヤルゼリー酵素分解物では見られず、50℃にて7日間の保管後においても同様に褐変が抑制されています(表2、図2)

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アレルゲン性の確認試験(CAST法)では、生ローヤルゼリーにアレルギー反応を経験したことのある被験者の血液サンプルを使用。ヒスタミン遊離量(アレルゲン反応の指標のひとつ)が、実施例1では比較例1に比べて1/2以下になっていることが確認されています(【00073】、図1)。

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ペプチドYD・VP・MPについて少し補足

公報には、YD(チロシン-アスパラギン酸)は「抗酸化活性を有することが知られている」、MP(メチオニン-プロリン)・VP(バリン-プロリン)は「抗糖尿病活性及び抗酸化活性を有することが知られている」と記載されています(【00082】)。これは既存の学術知見に基づく記述であり、本製品の摂取による疾患の予防・改善を示すものではありません。

プロリン(Pro)という名前が複数のペプチドに登場します。プロリンはアミノ酸のなかでも独特の環状構造を持ち、体内の消化酵素で切れにくいのが特徴のひとつです。VP(バリン-プロリン)やIP(イソロイシン-プロリン)のように、プロリンを含む2〜3個のペプチドが腸内で比較的安定して存在しやすいとされる研究があります。なぜプロリン含有ペプチドが多く産生されるのかを追いかけると、アスペルギルス・オリゼー由来酵素の切り方の特徴が関係しているようです。

山田養蜂場 酵素分解ローヤルゼリーキングについて PR

「酵素処理ローヤルゼリー」はいまや珍しい素材ではありませんが、どの酵素でどう処理するかは各社まったく異なります。この特許が権利化しているのは「プロテアックスで処理する方法」と「その結果できる特定ペプチド組成を持つ分解物」の2層構造です。特にYDを100mg以上/100g、VPを40mg以上/100g含む組成は、比較した他社製品のいずれも達していない数値であることが表4から読み取れます。

公報【00066】の実施例からわかるように、生ローヤルゼリーのpHを精密に7.8に合わせ、50℃を維持しながら2時間反応、80℃15分で酵素失活という工程管理が必要です。原料の生ローヤルゼリー自体も自社養蜂場で採取されたものが使われています(特許権者の所在地は岡山県苫田郡鏡野町の山田養蜂場本社内)。製法管理のコストがかかるのは公報を読むと納得できます。

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※本製品は食品であり、疾病の治療・予防を目的とするものではありません。

おわりに

公報を読む前は「ローヤルゼリーはどれも同じでは」と思っていたのが正直なところです。ただ表4の数値を見てから、どの酵素を使ったかという製造の選択が最終的なペプチド組成を大きく左右するんだということが実感として理解できて、自分でもプロテアックス処理品を選ぶようになりました。ローヤルゼリーサプリを選ぶときの基準がひとつ増えた、という感覚です。参考になれば。

参考:特許第7218961号(J-PlatPat)

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