第13回を解いて見えた出題傾向

他の回もまとめています。以下からどうぞ。

[知的財産管理技能検定1級(特許専門業務)学習記録まとめ|知財のすみっこ]


1. 分野別の出題構成——条約・民事法の比重が高い回

第13回(2012年11月実施・法令基準日2012年5月1日)・全45問を分野別に整理すると、次のようになります。

分野問数割合
米国特許実務6問13.3%
条約(パリ条約・PCT)5問11.1%
民法・民事訴訟法5問11.1%
契約実務(共同研究契約)4問8.9%
代理人・訴訟制度4問8.9%
標準化・知財戦略3問6.7%
統計(特許行政年次報告書)3問6.7%
営業秘密管理3問6.7%
記載要件(特許法36条)3問6.7%
特許調査2問4.4%
発明発掘・評価2問4.4%
侵害対応(警告書)2問4.4%
外国制度(中国・韓国・香港)1問2.2%
権利管理(特許料)1問2.2%
資金調達・知財価値評価2問4.4%

第9回・第7回では米国実務・PCTの比重が圧倒的でしたが、第13回はそれに加えて民法・民事訴訟法が5問とまとまった分量で出題されているのが特徴です。訴訟の仕組み(既判力、自由心証主義、管轄)まで押さえておかないと、この回は安定して得点できません。

今回、自分が間違えたのは問13・21・23・24・30・32・33・35・38・39・42・43の12問でした。分野で見ると民事系(問23・40番台)と条約・米国実務(問30〜38)に誤答が集中しており、この2つが今回の弱点だったことになります。以下、間違えた問題を中心に、どこでつまずいたのかを整理します。


2. 「正しい前提から違う結論を導く」型に何度も引っかかった

今回の誤答で目立ったのは、選択肢の前段が正しいために、後段の誤りまで正しく見えてしまうパターンでした。

  • 問13:Y大学との共同研究契約書の条項を読み取らせる問題。正解は「特許出願の手続を誰が行うかは協議不要(契約書で確定済み)、費用負担のみ協議が必要」という、契約書第8条3項をそのまま読み取れば取れる内容でした。自分は「持分は当然に教授側が多くなる」とする選択肢(エ)に引きずられましたが、これは契約書のどこにも書かれていない前提を勝手に持ち込んだ上で「当然に」と断定する二段構えの誤りで、契約書に書いていない事実は原則として持ち込めない、という基本を見落としていました。
  • 問21:特許料の納付期限・延長・追納の問題。112条が引用する条文を「108条2項又は3項」と誤って記憶していたため、「設定登録料にも倍額追納が認められる」とするエを消しきれませんでした。実際の112条1項が引くのは108条2項(第4年以後の年金)と109条・109条の2の猶予後の期間のみで、108条1項(設定登録料)は最初から対象外です。延長(108条3項・4条)と追納(112条)が対象とする期間がきれいに裏返しになっている、という構造を条文の文言レベルで確認していなかったのが敗因でした。
  • 問35:パリ条約5条A(不実施に対する措置)の問題。「強制実施権の設定後であれば、不実施を理由に特許を取り消せる場合がある」という正解(エ)を、「取消しなんて強い効果が条約上認められているはずがない」と直感で消してしまいました。5条A(3)は「強制実施権では不十分な場合に限り」「最初の許諾から2年経過後」という条件付きで、取消しを各国の立法に委ねる余地を明文で残しています。「そんな強い効果はないはず」という直感は、条文の限定的な書きぶりを読み飛ばした結果だったと反省しています。

これらに共通するのは、選択肢の一部(多くは前段)が正しいことに気を取られ、決め手となる後段や、根拠条文の文言そのものを確認しないまま判断してしまったという点です。特に問21は、自分の中にあった条文の記憶がそもそも不正確だったことが後から判明しました。過去問の解説を作るときに条文を一次ソースで引き直したところ、記憶していた条文番号が誤っていることに気づき、修正しています。「知っているつもり」の条文ほど、正誤判定の決め手にする前に必ず一次ソースで確認する必要があると痛感しました。


3. 米国法・条約の「時系列」を丁寧に追えていなかった

問30(ビルスキー事件最高裁判決)は、正解に至る過程で判例の時系列を正確に並べる必要がある問題でした。

  • 1998年 State Street判決(CAFC):「有用、具体的かつ有形の結果」を基準にビジネス方法特許を広く認める
  • 2008年 In re Bilski(CAFC大法廷):State Street基準を退け、「機械・変換テスト」を唯一の基準とする
  • 2010年 Bilski v. Kappos(最高裁):機械・変換テストは有用な手がかりだが唯一の基準ではないとし、CAFCの結論(この事案は特許適格性なし)は維持

自分は「機械・変換テストを唯一の基準として採用することを否定した」という正解の言い回しを、「機械・変換テストそのものを否定した」と読み違えました。最高裁は判断基準を否定したのではなく、それを『唯一のもの』とする位置づけを否定しただけで、テスト自体は今も有効な判断材料として使われています。この「一部否定」と「全部否定」の区別を、判例の時系列を並べずに直感で処理しようとしたのが誤答の原因でした。

問32(先行詞の欠如、antecedent basis)と問33(図面要件・多数項従属クレームの制限)も、米国特許実務の細かいルールを問う問題でした。

  • 問32は、Claim 1に登場する要素が「a random access memory」「a read only memory」の2つであって「a memory」という要素は登場していない、というクレームの字面を正確に追う問題でした。”said memory” が先行詞を欠くという結論には、Claim 1の文言を一語一語照合する作業が必要で、感覚的な理解だけでは対応できませんでした。
  • 問33は、「クレームに記載された構成要素はすべて図面に示されていなければならない」(37 CFR §1.83(a))という、日本の実務にはない要件を知っているかどうかで決まる問題でした。日本では図面は任意的な添付書類ですが、米国はクレームの全特徴の図示を求めており、この日米差を「知識として持っているか」がそのまま得点に直結します。

米国実務の問題は、判例なら時系列、クレームなら字面、制度なら日本との対比という3種類の異なる読み方が要求されており、同じ「米国法」というくくりでも解き方が違う、という点を今回改めて意識しました。


4. 民事訴訟法は「刑事訴訟との混同」に注意

問42(自由心証主義)は、「反対尋問を経ない伝聞証言には証拠能力が認められない」という選択肢を最も不適切なものとして選ぶ問題でした。この記述は**刑事訴訟法の伝聞法則(伝聞証拠禁止の原則)**を民事訴訟に持ち込んだ誤りで、民事訴訟には伝聞法則が存在せず、反対尋問を経ていないことは証拠能力ではなく証明力(信用性)の問題として自由心証主義のもとで評価されます。

自分がこの選択肢を誤って選ばなかった(=適切だと判断してしまった)のは、「反対尋問」「伝聞」という語自体が法律用語として耳慣れていたため、民事と刑事のどちらの文脈の話かを意識せずに読んでしまったためでした。第9回のまとめでも触れましたが、用語自体は正しくても、どの手続(民事か刑事か、訴訟か審判か)の話かを取り違えさせる出題は、知財検定1級で繰り返し登場するパターンです。

問43(既判力の遮断効)も同系統で、「相殺権については遮断効が及ばない」という判例・通説の例外を知らなかったために、取消権・時効の援用と同じ扱いだと考えて誤答しました。相殺だけが特別扱いされる理由(訴求債権自体の瑕疵を主張するものではないこと、反対債権が被告独自の財産的価値を持つこと、相殺の抗弁には既判力が生じ被告にとってもリスクを伴うこと)を筋道立てて理解していなかったため、3つの選択肢が同じ論理構造で書かれている中で、例外がどれかを判断できませんでした。

問23(自由心証主義の前段にあたる、処分権主義・弁論主義・職権進行主義の空欄補充)と問24(知的財産権訴訟の管轄)も、民事訴訟の基本構造をどれだけ正確に体系立てて覚えているかが問われる問題でした。特に問24では、知的財産高等裁判所が「侵害訴訟の控訴審」であり「侵害訴訟の第1審」ではないという点を、審決取消訴訟(知財高裁が第1審)と混同して誤答しました。同じ知財高裁でも、扱う訴訟の系列(私人間の民事訴訟か、特許庁の処分を争う行政訴訟か)によって審級上の位置づけが正反対になる、という整理を自分の中で持てていなかったのが原因です。


5. 条文の「文脈」で解く問題も、思い込みで外した

問38(PCTにおける非公式コメント・19条補正・34条補正の空欄補充)は、本文の文脈から機械的に空欄を確定できる問題でした。

  • 「請求する」「機関」という語から[1]=国際予備審査
  • 「国際予備審査機関に対して……補正書」という文脈から[2]=第34条(19条補正は国際事務局への提出であって国際予備審査機関への提出ではない)
  • 「指定官庁に送付」という記述から[3]=国際事務局

自分は19条補正と34条補正の**提出先(国際事務局か国際予備審査機関か)**を逆に記憶しており、文脈から機械的に解けたはずの問題を、誤った知識で上書きしてしまいました。文脈で確定できる問題ほど、自分の既存の記憶を疑わずに素直に文脈を追うべきだったという反省があります。

問39(香港・中国・韓国の特許制度)では、「韓国では請求の範囲を記載しないで特許出願できる」という正解の選択肢を、「そんな出願が認められるはずがない」という先入観で消してしまいました。実際には2008年施行の韓国特許法改正により、米国の仮出願に類似した制度として認められています。自分の知らない制度を「存在しないはず」と決めつけて消去法を誤るのは、第9回のまとめで触れた「存在しない制度を紛れ込ませるパターン」の裏返し(存在するのに存在しないと思い込む)で、根が同じ問題だと感じました。


6. 今回の振り返りから見えた学習の優先順位

第1優先:条文は一次ソースで確認してから覚え直す 問21のように、自分の記憶している条文番号・引用関係そのものが誤っている場合、正誤判定の土台から崩れます。特に112条・108条のような、複数の項が絡み合う条文は、思い込みで済ませず必ず条文を引いて確認する。

第2優先:民事訴訟法は「刑事訴訟との混同」「行政訴訟との混同」を意識して整理する 問42(伝聞法則)、問24(知財高裁の審級)はいずれも、隣接する別の手続の規律を持ち込んでしまう誤りでした。侵害訴訟(民事)・審決取消訴訟(行政)・刑事訴訟、という3つの手続の違いを表にして持っておくと、この種の誤答は防げます。

第3優先:米国実務は「時系列」「字面」「日米対比」を問題の型ごとに使い分ける 判例問題(問30)は年表で、クレーム問題(問32)は一語一語の照合で、制度問題(問33)は日本との対比で解く、という解き方の違いを意識する。

第4優先:文脈で解ける問題は、素直に文脈を優先する 問38のように、本文の文脈だけで機械的に解ける空欄補充問題は、既存の(誤っているかもしれない)知識で上書きしないよう注意する。

第5優先:知らない制度を「存在しないはず」と決めつけない 問39のように、自分が知らないというだけで選択肢を消去してしまうと、逆に正解を切ってしまうことがある。


第13回の全45問について

本記事では出題傾向の分析を扱いました。第13回・全45問について、正解・不正解の理由を選択肢ごとに整理したものは、別途まとめています。

各設問について、問われている論点、正解肢の根拠、誤り肢がなぜ誤りか、関連して押さえておきたい周辺知識をまとめてあります。米国特許関連の問題(問28〜33)については、AIA(America Invents Act)による条文の条ずれ(112条第2段落→112条(b)等)や、その後の判例(Alice判決)との関係も、現行法との差異として付記しています。


免責事項

本記事は一受験者が独自に作成した学習用コンテンツであり、知的財産教育協会および試験実施機関とは一切関係がありません。「知的財産管理技能検定」は同協会の登録商標です。

記載内容には万全を期していますが、誤りが含まれる可能性があります。また第13回試験は2012年5月1日時点の法令に基づいて実施されており、現行法令と異なる箇所があります(特に米国特許法の条文番号、営業秘密管理指針、民法の瑕疵担保責任・委任の解除等は、その後の法改正・判例により結論または条文表記が変わっています)。本記事の利用により生じた不利益について筆者は責任を負いません。正式な情報は必ず公式発表および現行法令をご確認ください。

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