(ア) 特許権の通常実施権の設定を受けた者が,当然に実施許諾を受けた特許の有効性を争うことができないとすると,無効理由を含む特許につき実施料の支払等の不利益を甘受しなければならなくなる。したがって,通常実施権者であっても,特許の有効性を争わない等の格別の合意がされない限り,実施許諾の基礎となった特許の有効性を争うことが許される。この理は,実施許諾の基礎となった特許について,第三者から無効審判請求をされた場合であっても同様であり,特許権者が無効理由を解消させる目的で行う訂正請求ないし訂正審判請求をする際,通常実施権者は,特許の有効性を争わない等の格別の合意をした場合でない限り,特許権者に対して,訂正審判請求等の承諾を与えないことは,当然に許される。
(イ) 本件全証拠によっても,第三者からされた無効審判請求における無効審決に対抗するために原告らが行った訂正審判請求について,被告において承諾を拒否したことが信義則違反及び権利濫用に当たると解すべき事情は何ら存在しない(もとより,被告が承諾することを約した事実もない。)。
したがって,原告らの前記主張は理由がない。
ウ 小括 以上のとおり,被告が原告らの訂正審判請求の承諾をしなかったことは,本件契約の違反にならず,また,信義則違反及び権利濫用に該当しない。
平成 15年 (ワ) 26297号
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