初めに
本記事は知的財産管理技能協会が公開している試験科目及びその範囲の細目の資料と過去問を踏まえ、関係する資料をまとめたものです。過去試験の問題文やその解説をしているわけではありません。また、本記事に記載の情報が試験にでることを保証するものでもありません。試験情報が少ない中で、受験者の勉強した内容を記録したものであることをご理解ください。
本記事に記載する内容は引例元を記載するので、最新の情報を必ず参照してください。
国や地方公共団体、独立行政法人の報告書等は転載可ですので地の文に記載&最後に出展をまとめています。(国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができます(著32条2項)。)
試験の全体像はこちらにまとめています。
表1 試験科目及びその範囲 試験科目及びその範囲の細目 学 科 試 験 (2025年11月以降)
| 4 関係法規 | 権利の価値評価に関し、次に掲げる事項について専門的な次に掲げる関係法規(判例を含む)に関し、知的財産に関連する事項について専 門的な知識を有すること。 (1)民法(総則、担保権、債権) (2)民事訴訟法 (3)不正競争防止法 (4)独占禁止法・下請法・不当景品類及び不当表示防止法 (5)関税法 (6)TRIPS協定 (7)憲法 (8)刑法 (9)商法・会社法 (10)民事執行法 (11)民事保全法 (12)所得税法 (13)法人税法 |
特に、契約書や事例問題中に問題を埋め込んでくることが度々ある。民法・民事訴訟法・不競法・独禁法はある程度勉強しておきたい。関税法も1問くらいは出ることが多いので過去問の内容くらいは押さえておきたい。
独占禁止法
契約や事例問題び絡めて頻出。「不当な取引制限」に該当するか否かが重要であり、どんな場合は不当な取引制限にあたるのか、原則不当な取引制限に当たらない事例にはどんなものがあるのか、といった観点から整理しておくのが良い。
知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針
引用元:https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/chitekizaisan.html はマスト!
以下は引用元から一部抜粋。
不当な取引制限の観点からの考え方
技術の利用に係る制限行為が、「事業者が他の事業者と共同して、相互にその事業活動を拘束し又は遂行する」(独占禁止法第2条第6項)ものである場合は、不当な取引制限の規定の適用が問題となる。
(1) パテントプール
ア パテントプールとは、ある技術に権利を有する複数の者が、それぞれが有する権利又は当該権利についてライセンスをする権利を一定の企業体や組織体(その組織の形態には様々なものがあり、また、その組織を新たに設立する場合や既存の組織が利用される場合があり得る。)に集中し、当該企業体や組織体を通じてパテントプールの構成員等が必要なライセンスを受けるものをいう。パテントプールは、事業活動に必要な技術の効率的利用に資するものであり、それ自体が直ちに不当な取引制限に該当するものではない。
イ しかしながら、一定の技術市場において代替関係にある技術に権利を有する者同士が、それぞれ有する権利についてパテントプールを通じてライセンスをすることとし、その際のライセンス条件(技術の利用の範囲を含む。)について共同で取り決める行為は、当該技術の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。
また、これらの事業者が、プールしている技術の改良を相互に制限する行為や、ライセンスをする相手先を相互に制限する行為は、当該技術の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。
ウ 一定の製品市場で競争関係に立つ事業者が、製品を供給するために必要な技術を相互に利用するためにパテントプールを形成し、それを通じて必要な技術のライセンスを受けるとともに、当該技術を用いて供給する製品の対価、数量、供給先等についても共同して取り決める行為は、当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。
エ 一定の製品市場において競争関係にある事業者が、製品を供給するために必要な技術についてパテントプールを形成し、他の事業者に対するライセンスは当該プールを通じてのみ行うこととする場合において、新規参入者や特定の既存事業者に対するライセンスを合理的理由なく拒絶する行為は、共同して新規参入を阻害する、又は共同して既存事業者の事業活動を困難にするものであり、当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。
(2) マルティプルライセンス
マルティプルライセンスとは、ある技術を複数の事業者にライセンスをすることをいう。
マルティプルライセンスにおいて、ライセンサー及び複数のライセンシーが共通の制限を受けるとの認識の下に、当該技術の利用の範囲、当該技術を用いて製造する製品の販売価格、販売数量、販売先等を制限する行為は、これら事業者の事業活動の相互拘束に当たり、当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。また、同様の認識の下に、当該技術の改良・応用研究、その成果たる技術(以下「改良技術」という。)についてライセンスをする相手方、代替技術の採用等を制限する行為も、技術の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。
(3) クロスライセンス
ア クロスライセンスとは、技術に権利を有する複数の者が、それぞれの権利を、相互にライセンスをすることをいう。クロスライセンスは、パテントプールやマルティプルライセンスに比べて、関与する事業者が少数であることが多い。
イ 関与する事業者が少数であっても、それらの事業者が一定の製品市場において占める合算シェアが高い場合に、当該製品の対価、数量、供給先等について共同で取り決める行為や他の事業者へのライセンスを行わないことを共同で取り決める行為は、前記のパテントプールと同様の効果を有することとなるため、前記(1)と同様に、当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。
ウ 技術の利用範囲としてそれぞれが当該技術を用いて行う事業活動の範囲を共同して取り決める行為は、技術又は製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。
4 技術の利用に関し制限を課す行為
ある技術に権利を有する者が、当該技術の利用を他の事業者にライセンスをする際に、当該技術の利用に関し、当該技術の機能・効用を実現する目的、安全性を確保する目的、又は、ノウハウのような秘密性を有するものについて漏洩や流用を防止する目的で、ライセンシーに対し一定の制限を課すことがある。これらの制限については、技術の効率的な利用、円滑な技術取引の促進の観点から一定の合理性がある場合が少なくないと考えられる。他方、これらの制限を課すことは、ライセンシーの事業活動を拘束する行為であり、競争を減殺する場合もあるので、制限の内容が上記の目的を達成するために必要な範囲にとどまるものかどうかの点を含め、公正競争阻害性の有無を検討する必要がある。
(1) 原材料・部品に係る制限
ライセンサーがライセンシーに対し、原材料・部品その他ライセンス技術を用いて製品を供給する際に必要なもの(役務や他の技術を含む。以下「原材料・部品」という。)の品質又は購入先を制限する行為は、当該技術の機能・効用の保証、安全性の確保、秘密漏洩の防止の観点から必要であるなど一定の合理性が認められる場合がある。
しかし、ライセンス技術を用いた製品の供給は、ライセンシー自身の事業活動であるので、原材料・部品に係る制限はライセンシーの競争手段(原材料・部品の品質・購入先の選択の自由)を制約し、また、代替的な原材料・部品を供給する事業者の取引の機会を排除する効果を持つ。したがって、上記の観点から必要な限度を超えてこのような制限を課す行為は、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第10項、第11項、第12項)。
(2) 販売に係る制限
ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンス技術を用いた製品(プログラム著作物の複製物を含む。)の販売に関し、販売地域、販売数量、販売先、商標使用等を制限する行為(価格に係る制限については次項を参照)は、ライセンシーの事業活動の拘束に当たる。
ア ライセンス技術を用いた製品を販売できる地域及び販売できる数量を制限する行為については、基本的に前記3の柱書及び同(2)の考え方が当てはまる。しかし、当該権利が国内において消尽していると認められる場合又はノウハウのライセンスの場合であって、公正競争阻害性を有するときは、不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。
イ ライセンス技術を用いた製品の販売の相手方を制限する行為(ライセンサーの指定した流通業者にのみ販売させること、ライセンシーごとに販売先を割り当てること、特定の者に対しては販売させないことなど)は、前記アの販売地域や販売数量の制限とは異なり利用範囲の制限とは認められないことから、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(注13)(一般指定第12項)。
(注13) 種苗法上の品種登録がされた種苗について、種苗の生産に係るライセンシーが生産した種苗の販売先を種苗を用いた収穫物の生産に係るライセンシーに限ることは、収穫物の生産に係る権利の侵害を防止するために必要な制限と考えられる。
ウ ライセンサーがライセンシーに対し、特定の商標の使用を義務付ける行為は、商標が重要な競争手段であり、かつ、ライセンシーが他の商標を併用することを禁止する場合を除き、競争を減殺するおそれは小さいと考えられるので、原則として不公正な取引方法に該当しない。
(3) 販売価格・再販売価格の制限
ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンス技術を用いた製品に関し、販売価格又は再販売価格を制限する行為は、ライセンシー又は当該製品を買い受けた流通業者の事業活動の最も基本となる競争手段に制約を加えるものであり、競争を減殺することが明らかであるから、原則として不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。
(4) 競争品の製造・販売又は競争者との取引の制限
ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンサーの競争品を製造・販売すること又はライセンサーの競争者から競争技術のライセンスを受けることを制限する行為は、ライセンシーによる技術の効率的な利用や円滑な技術取引を妨げ、競争者の取引の機会を排除する効果を持つ。したがって、これらの行為は、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第2項、第11項、第12項)。
なお、当該技術がノウハウに係るものであるため、当該制限以外に当該技術の漏洩又は流用を防止するための手段がない場合には、秘密性を保持するために必要な範囲でこのような制限を課すことは公正競争阻害性を有さないと認められることが多いと考えられる。このことは、契約終了後の制限であっても短期間であれば同様である。
(5) 最善実施努力義務
ライセンサーがライセンシーに対して、当該技術の利用に関し、最善実施努力義務を課す行為は、当該技術が有効に使われるようにする効果が認められ、努力義務にとどまる限りはライセンシーの事業活動を拘束する程度が小さく、競争を減殺するおそれは小さいので、原則として不公正な取引方法に該当しない。
(6) ノウハウの秘密保持義務
ライセンサーがライセンシーに対して、契約期間中及び契約終了後において、契約対象ノウハウの秘密性を保持する義務を課す行為は、公正競争阻害性を有するものではなく、原則として不公正な取引方法に該当しない。
(7) 不争義務
ライセンサーがライセンシーに対して、ライセンス技術に係る権利の有効性について争わない義務(注14)を課す行為は、円滑な技術取引を通じ競争の促進に資する面が認められ、かつ、直接的には競争を減殺するおそれは小さい。
しかしながら、無効にされるべき権利が存続し、当該権利に係る技術の利用が制限されることから、公正競争阻害性を有するものとして不公正な取引方法に該当する場合もある(一般指定第12項)。
なお、ライセンシーが権利の有効性を争った場合に当該権利の対象となっている技術についてライセンス契約を解除する旨を定めることは、原則として不公正な取引方法に該当しない。
(注14) 「権利の有効性について争わない義務」とは、例えば、ライセンスを受けている特許発明に対して特許無効審判の請求を行ったりしないなどの義務をいい、ライセンシーが所有し、又は取得することとなる権利をライセンサー等に対して行使することが禁止される非係争義務(後記5-(6)参照)とは異なる。
5 その他の制限を課す行為
前記4のほか、ライセンスをする際に、ライセンシーの事業活動に様々な制限を課すことがあり、これらについての考え方は以下のとおりである。
なお、ライセンサーがライセンシーに一定の制限を課すことがライセンサーの権利の行使とみられる行為である場合には、前記第2-1の考え方に従い検討することになる。
(1) 一方的解約条件
ライセンス契約において、ライセンサーが一方的に又は適当な猶予期間を与えることなく直ちに契約を解除できる旨を定めるなど、ライセンシーに一方的に不利益な解約条件を付す行為は、独占禁止法上問題となる他の制限行為と一体として行われ、当該制限行為の実効性を確保する手段として用いられる場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第2項、第12項)。
(2) 技術の利用と無関係なライセンス料の設定
ライセンサーがライセンス技術の利用と関係ない基準に基づいてライセンス料を設定する行為、例えば、ライセンス技術を用いない製品の製造数量又は販売数量に応じてライセンス料の支払義務を課すことは、ライセンシーが競争品又は競争技術を利用することを妨げる効果を有することがある。したがって、このような行為は、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第11項、第12項)。
なお、当該技術が製造工程の一部に使用される場合又は部品に係るものである場合に、計算等の便宜上、当該技術又は部品を使用した最終製品の製造・販売数量又は額、原材料、部品等の使用数量をライセンス料の算定基礎とすること等、算定方法に合理性が認められる場合は、原則として不公正な取引方法に該当しない。
(3) 権利消滅後の制限
ライセンサーがライセンシーに対して、技術に係る権利が消滅した後においても、当該技術を利用することを制限する行為、又はライセンス料の支払義務を課す行為は、一般に技術の自由な利用を阻害するものであり、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。
ただし、ライセンス料の支払義務については、ライセンス料の分割払い又は延べ払いと認められる範囲内であれば、ライセンシーの事業活動を不当に拘束するものではないと考えられる。
(4) 一括ライセンス
ライセンサーがライセンシーに対してライセンシーの求める技術以外の技術についても、一括してライセンスを受ける義務を課す行為(注15、16)は、ライセンシーが求める技術の効用を保証するために必要であるなど、一定の合理性が認められる場合には、前記4-(1)の原材料・部品に係る制限と同様の考え方によって判断される。
しかしながら、技術の効用を発揮させる上で必要ではない場合又は必要な範囲を超えた技術のライセンスが義務付けられる場合は、ライセンシーの技術の選択の自由が制限され、競争技術が排除される効果を持ち得ることから、公正競争阻害性を有するときには、不公正な取引方法に該当する(一般指定第10項、第12項)。
(注15) このような義務が課されているかどうかは、ライセンサーが指定する技術以外の技術をライセンシーが選択することが、実質的に困難であるかの観点から判断することになる。
(注16) 複数の特許権等について一括してライセンスを受ける義務を課す場合であっても、そのうち使用された特許権等についてのみ対価を支払う契約となっている場合には、ここでいう一括ライセンスには該当しない。
(5) 技術への機能追加
ライセンサーが、既にライセンスをした技術に新機能を追加して新たにライセンスをする行為は、一般的には改良技術のライセンスにほかならず、それ自体はライセンスに伴う制限とはいえない。
しかしながら、ある技術がその技術の仕様や規格を前提として、次の製品やサービスが提供されるという機能(以下「プラットフォーム機能」という。)を持つものであり、当該プラットフォーム機能を前提として、多数の応用技術が開発され、これら応用技術の間で競争が行われている状況において、当該プラットフォーム機能を持つ技術のライセンサーが、既存の応用技術が提供する機能を当該プラットフォーム機能に取り込んだ上で新たにライセンスをする行為は、ライセンシーが新たに取り込まれた機能のライセンスを受けざるを得ない場合には、当該ライセンシーがその他の応用技術を利用することを妨げ、当該応用技術を提供する他の事業者の取引機会を排除する効果を持つ。したがって、このような行為は、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第10項、第12項)。
(6) 非係争義務
ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンシーが所有し、又は取得することとなる全部又は一部の権利をライセンサー又はライセンサーの指定する事業者に対して行使しない義務(注17)を課す行為は、ライセンサーの技術市場若しくは製品市場における有力な地位を強化することにつながること、又はライセンシーの権利行使が制限されることによってライセンシーの研究開発意欲を損ない、新たな技術の開発を阻害することにより、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。
ただし、実質的にみて、ライセンシーが開発した改良技術についてライセンサーに非独占的にライセンスをする義務が課されているにすぎない場合は、後記(9)の改良技術の非独占的ライセンス義務と同様、原則として不公正な取引方法に該当しない。
(注17) ライセンシーが所有し、又は取得することとなる全部又は一部の特許権等をライセンサー又はライセンサーの指定する事業者に対してライセンスをする義務を含む。
(7) 研究開発活動の制限
ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンス技術又はその競争技術に関し、ライセンシーが自ら又は第三者と共同して研究開発を行うことを禁止するなど、ライセンシーの自由な研究開発活動を制限する行為は、一般に研究開発をめぐる競争への影響を通じて将来の技術市場又は製品市場における競争を減殺するおそれがあり、公正競争阻害性を有する(注18)。したがって、このような制限は原則として不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。
ただし、当該技術がノウハウとして保護・管理される場合に、ノウハウの漏洩・流用の防止に必要な範囲でライセンシーが第三者と共同して研究開発を行うことを制限する行為は、一般には公正競争阻害性が認められず、不公正な取引方法に該当しない。
(注18) プログラム著作物については、当該プログラムの改変を禁止することは、一般的に著作権法(外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます)上の権利の行使とみられる行為である。しかしながら、著作権法(外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます)上も、ライセンシーが当該ソフトウェアを効果的に利用するために行う改変は認められており(第20条第2項第3号、第47条の2)、このような行為まで制限することは権利の行使とは認められない。
(8) 改良技術の譲渡義務・独占的ライセンス義務
ア ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンシーが開発した改良技術について、ライセンサー又はライセンサーの指定する事業者にその権利を帰属させる義務、又はライセンサーに独占的ライセンス(注19)をする義務を課す行為は、技術市場又は製品市場におけるライセンサーの地位を強化し、また、ライセンシーに改良技術を利用させないことによりライセンシーの研究開発意欲を損なうものであり、また、通常、このような制限を課す合理的理由があるとは認められないので、原則として不公正な取引方法に該当する(注20)(一般指定第12項)。
イ ライセンシーが開発した改良技術に係る権利をライセンサーとの共有とする義務は、ライセンシーの研究開発意欲を損なう程度は上記アの制限と比べて小さいが、ライセンシーが自らの改良・応用研究の成果を自由に利用・処分することを妨げるものであるので、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。
ウ もっとも、ライセンシーが開発した改良技術が、ライセンス技術なしには利用できないものである場合に、当該改良技術に係る権利を相応の対価でライセンサーに譲渡する義務を課す行為については、円滑な技術取引を促進する上で必要と認められる場合があり、また、ライセンシーの研究開発意欲を損なうとまでは認められないことから、一般に公正競争阻害性を有するものではない。
(注19) 本指針において独占的ライセンスとは、特許法に規定する専用実施権を設定すること、独占的な通常実施権を与えるとともに権利者自身もライセンス地域内で権利を実施しないこと等をいう。権利者自身がライセンス技術を利用する権利を留保する形態のものは非独占的ライセンスとして取り扱う。
(注20) ライセンシーが特許等の出願を希望しない国・地域について、ライセンサーに対して特許等の出願をする権利を与える義務を課すことは、本制限には該当しない。
(9) 改良技術の非独占的ライセンス義務
ア ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンシーによる改良技術をライセンサーに非独占的にライセンスをする義務を課す行為は、ライセンシーが自ら開発した改良技術を自由に利用できる場合は、ライセンシーの事業活動を拘束する程度は小さく、ライセンシーの研究開発意欲を損なうおそれがあるとは認められないので、原則として不公正な取引方法に該当しない。
イ しかしながら、これに伴い、当該改良技術のライセンス先を制限する場合(例えば、ライセンサーの競争者や他のライセンシーにはライセンスをしない義務を課すなど)は、ライセンシーの研究開発意欲を損なうことにつながり、また、技術市場又は製品市場におけるライセンサーの地位を強化するものとなり得るので、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(注21)(一般指定第12項)。
(注21) ライセンシーが開発した改良技術がライセンサーの技術なくしては利用できない場合において、他の事業者にライセンスをする際にはライセンサーの同意を得ることを義務付ける行為は、原則として不公正な取引方法に該当しない。
(10) 取得知識、経験の報告義務
ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンス技術についてライセンシーが利用する過程で取得した知識又は経験をライセンサーに報告する義務を課す行為は、ライセンサーがライセンスをする意欲を高めることになる一方、ライセンシーの研究開発意欲を損なうものではないので、原則として不公正な取引方法に該当しない。ただし、ライセンシーが有する知識又は経験をライセンサーに報告することを義務付けることが、実質的には、ライセンシーが取得したノウハウをライセンサーにライセンスをすることを義務付けるものと認められる場合は、前記(8)又は(9)と同様の考え方により、公正競争阻害性を有するときには、不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。
参考文献
知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/chitekizaisan.html





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