【開発者向け】IPC分類を活用した特許調査の実践手順【J-platpatスクリーンショット多数で解説】

知財部の話


1. キーワード検索の限界と特許調査の課題

製品開発や研究の過程で、関連技術の特許動向を把握するための特許調査は不可欠です。しかし、特許文献の調査において、単に技術に関連するキーワード発明者名を検索窓に入力するだけでは、真に求める特許群を見つけ出すことは困難です。

この難しさの背景には、以下の理由があります。

  • 用語の揺らぎ: 発明の内容は同じでも、出願人や代理人によって使用される専門用語や表現が異なるため、特定のキーワードだけでは網羅的な検索ができない。
  • 技術進化と分類の乖離: 新しい技術やトレンドに関する特許は、まだ一般に定着していない造語や、既存のキーワード検索ではヒットしない独特の表現を用いることがある。
  • ノイズの多さ: 広範囲な技術を含むキーワード(例:「AI」「センサ」)で検索すると、関係性の薄い大量の特許(ノイズ)がヒットし、必要な情報の抽出効率が極端に低下する。

真に網羅的かつ効率的な調査を行うためには、国際的に統一された技術分類システムである**国際特許分類(IPC)**を活用する必要があります。


2. 国際特許分類(IPC)の概要

国際特許分類(International Patent Classification: IPC)とは、世界知的所有権機関(WIPO)が定めている、発明の内容を体系的に分類するための国際的なシステムです。

IPCは、すべての技術分野を階層的に細分化し、それぞれの発明に特定の記号(分類記号)を割り当てることで、言語や国境を超えて技術内容を把握できるように設計されています。

IPCの構造は、技術分野の大分類から小分類へと続く階層構造を持っています。

https://chizai-portal.inpit.go.jp/madoguchi/kumamoto/consultation/support/patent/class/

3. 類似特許からIPCを特定する手順

調査対象の技術に関連するIPC分類記号を見つけることが、効率的な特許調査の第一歩となります。この分類記号を特定する最も確実な方法は、既に権利化されている類似特許の分類を参照することです。

今回は仮想事例として、以下のような状況を想定します。
あなた:化粧品メーカーの技術者
背景:化粧水の新商品開発の企画のため、類似特許がないかを調査したい。
状況:新しい化粧水の開発に当たり、資生堂の商品を参考にしようとしている。ナイアシンアミドをコンセプトにしようと考えている。

手順3-1. 類似特許の発見と収集

まず、検索したい技術に関連性の高い特許文献を3件から5件程度、特定のキーワード検索や出願人名検索を用いて特定します。この段階では、キーワード検索の限界を理解しつつ、最も代表的な文献を見つけることを目的とします。

手順3-2. IPC分類記号の抽出

特定した各特許文献の詳細情報(公報)を確認し、付与されているIPC分類記号を全て抽出します。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)などの特許情報検索サービスを利用し、公報の書誌事項に記載されている分類を確認します。

A61K 8/86 (2006.01)
C08G 65/22 (2006.01)
A61K 8/02 (2006.01)
A61Q 19/00 (2006.01) といったIPCが付与されていることを確認

手順3-3. 主要な分類記号の特定と分析

抽出した複数の特許文献のIPC分類記号を比較し、共通して付与されている**サブクラス(例:A61K)メイングループ(例:A61K 31/00)**の記号を特定します。

この共通の記号こそが、調査したい技術分野の中核を示す主要なIPC分類記号となります。

手順3-4. 分類定義の確認

主要な分類記号(例:A61K 31/00)が特定できたら、特許庁やWIPOが公開しているIPC分類表を参照し、その分類記号が実際にどのような技術内容を対象としているか、その定義(タイトルおよび注釈)を確認します。この確認により、分類記号が持つ技術的範囲を正確に理解します。


A61K 8/86 (2006.01)
C08G 65/22 (2006.01)
A61K 8/02 (2006.01)
A61Q 19/00 (2006.01) がどんな内容かチェックする

チェックをIPCに変更。A61K 8/86 を調べる。

チェックしたところ、A61K 8/00 が化粧品全般のIPCであることがわかった。

4. IPC分類を用いた実践的な検索(再構築検索)

IPC分類記号を特定したら、その記号を検索式に組み込むことで、網羅性の高い特許調査が可能となります。

手順4-1. IPC単独での検索

特定した主要なIPC分類記号(例:A61K 8/00)を検索窓に入力し、該当する全ての特許文献を検索します。

この検索結果は、キーワード検索では漏れていた、しかし技術内容は関連性の高い特許群を一挙に抽出します。これは、特許調査の網羅性を高める上で最も重要なステップです。

手順4-2. IPCとキーワードの組み合わせ検索(絞り込み)

IPC単独での検索結果は件数が多すぎる場合があるため、ここでキーワードを併用して絞り込みます。

検索式例: IPC=(A61K 8/00) AND (キーワードA OR キーワードB)

この組み合わせ検索により、特定の技術分野(IPC)に属しつつ、特定の要素(キーワード)を含む特許文献のみを効率よく抽出できます。ノイズを大幅に削減し、検索効率を向上させることができます。

<実践>

背景:化粧水の新商品開発の企画のため、類似特許がないかを調査したい。
状況:新しい化粧水の開発に当たり、資生堂の商品を参考にしようとしている。ナイアシンアミドをコンセプトにしようと考えている。

状況に応じて様々なアプローチの仕方があるが、今回は技術者(×知的財産部)がやりやすい検索の仕方を説明する。

<ダメな例>

明細書に化粧水と書いてあるものではヒット数が多すぎた。
もっと具体的に、的確に検索する必要がある。

<よい例>
今回は「ナイアシンアミド」をコンセプトにした商品を作りたいのだから、ナイアシンアミドに関する特許を抽出する必要がある。

特許請求の範囲にナイアシンとその別名を入れることで、ほしい特許を抽出することができた。

手順4-3. 関連IPCへの展開

特定した主要なIPC分類記号(例:A61K 31/00)の周辺にある、関連性の高い隣接する分類記号(例:A61K 33/00など)も確認します。

IPC分類表で確認した、類似技術や応用技術を含む可能性のある分類記号を追加で検索式に組み込むことで、視野の広い調査が可能となり、潜在的な競合技術や応用分野の特許を見逃すリスクを低減できます。


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