進歩性の判断フロー
進歩性有無の判断の仕方は特許庁が公開しています。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0202bm.pdf
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阻害要因の主張が認められた事例
特願2013-204989
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】特許第6243686号(P6243686)
(24)【登録日】平成29年11月17日(2017.11.17)
(45)【発行日】平成29年12月6日(2017.12.6)
(54)【発明の名称】杜仲加工物および生姜加工物を含有する経口組成物、及び杜仲の香り増強方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杜仲加工物および生姜科植物加工物を含有する経口組成物(ただし、生薬の茯苓、地黄、牛膝、防風、芍薬、桂皮、甘草、細辛、当帰、川きゅう、唐独活、桑寄生、党参、杜仲、秦ぎょう、及び生姜からの抽出物からなる鎮痛作用を有する漢方薬、および呉茱萸3-12重量部、人参3-12重量部、沢瀉3-12重量部、杜仲10-20重量部、生姜2-15重量部、及び大棗5-20重量部を含有する高血圧改善用漢方薬を除く)。
【請求項2】
錠剤である請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
杜仲加工物に生姜科植物加工物を混合する工程を含む、杜仲の香りの増強方法。
【請求項4】
杜仲加工物に生姜科植物加工物を配合する工程を含む、杜仲加工物を含有する錠剤の崩壊性向上方法。
【書類名】 意見書
【あて先】 特許庁審査官殿
【事件の表示】
【出願番号】 特願2013-204989
【特許出願人】
【識別番号】 000186588
【氏名又は名称】 小林製薬株式会社
【代理人】
【識別番号】 110000914
【氏名又は名称】 特許業務法人 安富国際特許事務所
【代表者】 玉井 敬憲
【連絡先】 担当は秋山文男及び福家浩之
【発送番号】 230215
【意見の内容】
(1)審査官殿は、平成29年5月30日(発送日)付拒絶理由通知書において、請求項1~2について引用文献1に対し新規性および進歩性がなく、請求項1~2について引用文献2に対し新規性および進歩性がなく、請求項1、2および4について引用文献3~4に対し進歩性がないとご指摘になっています。
(2)補正の内容
出願人は、本意見書と同日付にて手続補正書を提出し特許請求の範囲について補正致しましたので、まず補正の内容をご説明致します。
請求項1において、経口組成物から、生薬の茯苓、地黄、牛膝、防風、芍薬、桂皮、甘草、細辛、当帰、川きゅう、唐独活、桑寄生、党参、杜仲、秦ぎょう、及び生姜からの抽出物からなる鎮痛作用を有する漢方薬、および、呉茱萸3-12重量部、人参3-12重量部、沢瀉3-12重量部、杜仲10-20重量部、生姜2-15重量部、及び大棗5-20重量部を含有する高血圧改善用漢方薬を除く補正を行いました。
生薬の茯苓、地黄、牛膝、防風、芍薬、桂皮、甘草、細辛、当帰、川きゅう、唐独活、桑寄生、党参、杜仲、秦ぎょう、及び生姜からの抽出物からなる鎮痛作用を有する漢方薬は引用文献1の請求項1に記載されています。また、呉茱萸3-12重量部、人参3-12重量部、沢瀉3-12重量部、杜仲10-20重量部、生姜2-15重量部、及び大棗5-20重量部を含有する高血圧改善用漢方薬は引用文献2の請求項1に記載されています。
よって、この補正は、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで先行技術との重なりのみを除く補正であって、新たな技術的事項を導入するものではありません。
従って、この補正が新規事項の追加に該当しないことは明らかです。
(3)引用文献1に対する新規性および進歩性
(3-1)審査官殿は、引用文献1には、杜仲、生姜等の抽出物からなる漢方薬が記載され、該抽出物から丸薬を得たことが記載されている(特許請求の範囲、実施例)と述べられています。
(3-2)そこで、請求項1において、引用文献1の請求項1に記載の漢方薬を除く補正を行いました。よって、請求項1~2は引用文献1に対し新規性を有します。
(3-3)さらに、引用文献1の段落[0006]では、独活寄生湯に使用される生薬成分の内、人参の代りに党参を用いることにより、顕著な鎮痛作用が得られるという全く新しい知見を得たと記載されており、杜仲及び生姜の他に、生薬の茯苓、地黄、牛膝、防風、芍薬、桂皮、甘草、細辛、当帰、川きゅう、唐独活、桑寄生、党参、及び秦ぎょうが必須成分として記載されています。引用文献1においてどの必須成分が欠けても鎮痛作用が損なわれるおそれがあり、引用文献1に接した当業者は、茯苓、党参等を含めた必須の生薬構成を含まない本願発明の経口組成物に想到することの動機付けが生じえず、阻害要因があるといえます。
また、本願発明の経口組成物は杜仲の香りを増強し(表1~3の実施例1~15)、錠剤の崩壊性を向上する(表4の実施例9)効果を奏します。鎮痛作用しか記載されていない引用文献1からは、これらの効果は予想できません。
よって、請求項1~2は引用文献1に対し進歩性を有します。
(4)引用文献2に対する新規性および進歩性
(4-1)審査官殿は、引用文献2には、生姜、杜仲等の煎液から得られた錠剤が記載されている(特許請求の範囲、実施例3)と述べられています。
(4-2)そこで、請求項1において、引用文献2の請求項1に記載の高血圧改善用漢方薬を除く補正を行いました。よって、請求項1~2は引用文献2に対し新規性を有します。
(4-3)さらに、引用文献2では、高血圧を治療するための伝統的な漢方薬として呉茱萸3-12重量部、人参3-12重量部、沢瀉3-12重量部、杜仲10-20重量部、生姜2-15重量部、及び大棗5-20重量部が記載されており、杜仲及び生姜の他に、呉茱萸、人参、沢瀉、及び大棗が必須成分として記載されています。引用文献2においてどの必須成分が欠けても高血圧治療作用が損なわれるおそれがあり、引用文献2に接した当業者は、呉茱萸等の必須の生薬構成を含まない本願発明の経口組成物に想到することの動機付けが生じえず、阻害要因があるといえます。
また、高血圧治療作用しか記載されていない引用文献2からは、本願発明の経口組成物により杜仲の香りが増強され、錠剤形態とした場合に崩壊性を向上できることは、到底予想できません。
よって、請求項1~2は引用文献2に対し進歩性を有します。
(5)引用文献3~4に対する進歩性
審査官殿は、引用文献3及び4に記載の発明はいずれも錠剤という共通の技術分野に属するものであるから、引用文献3に記載の錠剤の崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを、錠剤の崩壊性を向上することのできる引用文献4に記載のウコンと置換することは、当業者が容易に想到し得ることであり、上記請求項に記載された発明により、格別顕著な効果が奏せられるとは認められないと述べられています。
しかしながら、錠剤の崩壊性が、錠剤に含まれる成分の影響を受けることは技術常識です。この点、引用文献4の2-1-2節、3-1節、および3-2節ではウコン以外の成分は特定されていないので、生姜科植物加工物と杜仲加工物を組み合わせたときにどのような崩壊性が観察されるか全く予想できません。
また、引用文献4の3-2節からは、ウコンを含む市販品の錠剤が、1種類を除いて日本薬局方の製剤総則上で錠剤が満たすべき規格に合致するものであることは認識できますが、崩壊性が格別良いとは認識できません。また、他の成分と組み合わせて錠剤にした際に、崩壊性を向上させる機能があるとは全く理解できません。前記のとおり、ウコンを含む市販品の錠剤の1種類が日本薬局方の製剤総則で定める規格を満たさないことは、ウコンは錠剤の崩壊性を悪化させるのではないかとも考えうるものといえます。引用文献4に接した当業者は、生姜科植物加工物を杜仲加工物と組み合わせると、それらを含む錠剤の崩壊性を向上できるとは予想できません。よって、引用文献3に記載の錠剤の崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをウコンに置換することに想到することは不可能です。
以上、請求項1~2、および4は引用文献3~4に対し進歩性を有します。
(6)以上で本願発明が拒絶理由に該当しないことが明らかになったものと考えますので、本件特許出願について、特許をすべき旨の査定を賜わりますようお願い申し上げます。
阻害要因の主張が認められなかった事例
特願 2020-186437(アスコルビン酸とアスコルビン酸Na)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2022-76152(P2022-76152A)
(43)【公開日】令和4年5月19日(2022.5.19)
(54)【発明の名称】変色が抑制された経口組成物及びその変色抑制方法
【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
以下の(A)~(C)を含有することを特徴とする経口組成物であって、(A)鉄塩、(B)アスコルビン酸ナトリウムの合計質量に対する、(C)酸化マグネシウムの質量が5質量%から500質量%であることを特徴とする経口組成物。
(A)鉄塩
(B)アスコルビン酸ナトリウム
(C)酸化マグネシウム
【請求項2】
(A)成分が、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄から選択される1以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
経口組成物が、錠剤、チュアブル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤およびカプセル剤から選択されるいずれかの形態であることを特徴とする、請求項1または2に記載の経口組成物。
【請求項4】
以下の(A)~(C)を含有させることを特徴とする経口組成物の変色抑制方法であって、(A)鉄塩、(B)アスコルビン酸ナトリウムの合計質量に対する、(C)酸化マグネシウムの質量が5質量%から500質量%であることを特徴とする経口組成物の変色抑制方法。
(A)鉄塩
(B)アスコルビン酸ナトリウム
(C)酸化マグネシウム
【請求項5】
(A)成分が、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄から選択される1以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の経口組成物の変色抑制方法。
【請求項6】
経口組成物が、錠剤、チュアブル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤およびカプセル剤から選択されるいずれかの形態であることを特徴とする、請求項4または5に記載の経口組成物の変色抑制方法。
拒絶査定
特許出願の番号 特願2020-186437
起案日 令和 7年 2月 3日
特許庁審査官 田畑 利幸 4544 4O00
発明の名称 変色が抑制された経口組成物及びその変色抑制方
法
特許出願人 株式会社ファンケル
この出願については、令和 6年10月 9日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-6
・引用文献等 2
先に通知した引用文献2([0042]、[0044]-[0049])には、 組成物であって、錠剤、カプレット剤、カプセル剤、チュアブル投与形態、散剤、サシェなどの個体の投与形態をとり([0042])、 鉄(フマル酸鉄(II)として)、 ビタミンC(アスコルビン酸)、 マグネシウム(酸化マグネシウムとして)、を含有する(特に、実施例1の表1~表3、実施例2の[0047]の記載を参照。)、組成物が記載されている。
そして、引用文献2には、水分促進性分解反応は、ミネラルイオンおよび酸化可能ビタミンを含むマルチ成分栄養補助食品の効力の喪失および/もしくは魅力のない変色をもたらすので、マルチ成分栄養補助食品における水分促進性分解を減少させる組成物および/もしくは方法が必要とされる([0010])、と記載されている。
ここで、ビタミンCとして、公知のアスコルビン酸ナトリウムを採用すること、および、鉄塩として、公知のクエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、その効果について検討しても、予測し得ない効果を認めることはできない。
なお、引用文献2の表1~3([0045]-[0047])より、鉄塩、アスコルビン酸の合計質量に対する、酸化マグネシウムの質量は、31%質量から93%質量の範囲にある。
しれみれば、引用文献2の発明において、アスコルビン酸ナトリウムを採用した場合であっても、酸化マグネシウムの質量%は、請求項2に記載された範囲内含まれるといえる。
出願人は、令和 6年11月22日付け意見書において「アスコルビン酸はあくまで、本発明の機能を損なわない限り配合が許容されるものであり、引用文献2は、マルチビタミンおよびマルチミネラル組成物において、移動性の結合水を実質的に含まないことによって、変色等の課題を解決する発明であって、鉄塩とアスコルビン酸ナトリウムとの変色について検討されておらず、酸化マグネシウムを添加することよりその課題が解決することについて示唆がない」旨、主張している。
しかしながら、ビタミンC(アスコルビン酸)として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩はありふれた公知材料であり、いずれも、水和水を持たない化合物である。ゆえに、引用文献2に記載された発明に、公知材料であるアスコルビン酸ナトリウムを採用することに対して、阻害要因は認められない。
したがって、出願人の主張は、採用できない。
よって、請求項1-6に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものであるから、依然として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
〇付記(進歩性について)
審判請求の際は、下記についても参照されたい。
・請求項 1-6
・引用文献等 3
引用文献3(特に、p4 示した栄養成分表示を参照。)には、 スポーツドリンク用の粉末組成物であって、50g あたり、
ビタミンC 33.00mg、
マグネシウム 19.06mg(酸化Mgとして)、
鉄 0.62mg(ピロリン酸第二鉄として)、
を含有する組成物が記載されている。
ここで、引用文献3に記載された組成物は、500ml の水に溶かして飲用するものであるから(p2 参照。)、ビタミンCとして、公知材料であり、ビタミンCよりも、溶解度の高いアスコルビン酸ナトリウムを採用することは、当業者が適宜なし得ることであり、その効果について検討しても、予測し得ない効果を認めることはできない。
また、引用文献3に記載された組成物は、乾燥粉末として販売されていることから、当該の粉末の変色を抑制している蓋然性が高い。
そして、引用文献3に記載された、ビタミンC、マグネシウム、鉄それぞれの50g あたりの含有量から、ピロリン酸第二鉄とビタミンC(ナトリウム塩)の合計質量に対する、酸化マグネシウムの質量は、
アスコルビン酸Na(*1)+ピロリン酸第二鉄(*2)=37.1mg+2.5mg
酸化マグネシウム=31.6mg
となるので、約80%と算出される。
*1アスコルビン酸換算で33mgとして計算
*2鉄含有量25%として計算
なお、鉄塩として、公知材料である、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、ピロリン酸第一鉄を採用することは、当業者が適宜なし得ることであり、その効果について検討しても、予測し得ない効果を認めることはできない。
また、引用文献3に記載されたスポーツドリンク用の粉末組成物は、食塩相当量 0.05g を含有すること(p2 参照)、が記載されており、当該粉末組成物を水に溶かしたものに含まれる、アスコルビン酸ナトリウムと、本願に記載されたアスコルビン酸ナトリウムを区別することは困難である。
したがって、本願の請求項1-6に係る発明は、引用文献3に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものである。
<引用文献等一覧>
2.特表2010-518822号公報
3.”ファインラボ ファイナルエナジー ヴィターゴ 3Kg” [online],2025年01月31日,pp.1-4,[retrieved on 2025-01-31], Retrieved from ,Amazon(日本)取り扱い開始日は、2010年 9月10日(新たに
引用された文献)
(注)法律または契約等の制限により、提示した非特許文献の一部または全てが送付されない場合があります。
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この査定に不服があるときは、この査定の謄本の送達があった日から3月以内(在外者にあっては、4月以内)に、特許庁長官に対して、拒絶査定不服審判を請求することができます(参照条文:特許法第121条第1項)。
<行政事件訴訟法第46条第2項に基づく教示>
この査定に対しては取消訴訟を提起することはできません。この査定についての審判請求に対する審決に対してのみ取消訴訟を提起することができます(参照条文:特許法第178条第6項)。





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