【意見書で学ぶ】「含有量の限定は不要」の旨を主張してサポート要件違反を解消した事例

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知財高裁平成24 年(行ケ)第10387 号

本件発明1~8は、『安定化された溶媒組成物』との発明特定事項を有するところ、安定剤の含有量の好適範囲として記載されている数値範囲以外、特に下限値を下回るもので、結果的に『金属腐食の遅延化をもたらす』との課題が解決できないものは、『安定化された溶媒組成物』ではなく、本件発明1~8の範囲外になるものである。これに対して、本件発明9、10は、『安定化された溶媒組成物』との発明特定事項を含んでおらず、安定剤の含有量の好適範囲として記載されている数値範囲以外、特に好適範囲の下限値を下回るものを含むものであるから、そのようなものにあっては、必ずしも『金属腐食の遅延化をもたらす』との課題が解決できるとはいえない。したがって、本件発明9、10は、その範囲すべてにおいて発明の課題が解決できるとはいえない。」という認定がなされていたのに対し、判決では「しかし、本件発明は、臭化n-プロピルを安定化する臭化n-プロピルと安定剤の最良の組合せを見出すことを発明の課題とするものであって、臭化n-プロピルと安定剤の配合比の最適化を発明の課題とするものではないので、特許請求の範囲に、安定剤系として選択される物質の配合量の下限値が記載されていないことを根拠に、本件発明9及び10がサポート要件を満たさないとすることはできない。」

知財高裁 平成24年(行ケ)第10299号

液体調味料に配合するコーヒー豆抽出物の量については,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者であれば,配合するコーヒー豆抽出物の量が少なければ血圧降下作用が限定される一方,その量が多ければ風味変化の改善が限定されることを理解することができるから,風味変化の改善等を図るためにその配合量を調整することが容易に可能である。したがって,本件発明(特に本件発明6~8)の特許請求の範囲の記載に配合量の上限値及び下限値の記載がないからといって,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が,本件発明6ないし8がその解決すべき課題を解決できるものと認識できないとみることはできない。

特願 2022-121901 

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2022-136301(P2022-136301A)
(43)【公開日】令和4年9月15日(2022.9.15)
(54)【発明の名称】固形製剤

  【請求項1】
 (A)紅麹及び/又はその加工物と、(B)ステアリン酸カルシウムとを含有し、前記
(B)成分の配合量が0.1重量%以上である、固形製剤(但し、[I]~[XII]を含むものとを除く。除く範囲は省略)。
  【請求項2】
 前記(A)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が0.05~7重量部である
、請求項1に記載の固形製剤。
  【請求項3】
 前記(A)成分の配合量が2重量%以上である、請求項1又は2に記載の固形製剤。

拒絶理由通知書(この内容で拒絶査定)

  拒絶査定

 特許出願の番号      特願2022-121901
 起案日          令和 5年 6月27日
 特許庁審査官       長谷川 莉慧霞      1970 4H00
 発明の名称        固形製剤
 特許出願人        小林製薬株式会社
 代理人          田中 順也(ほか 2名)

 この出願については、令和 4年12月23日付け拒絶理由通知書に記載した
理由2、3によって、拒絶をすべきものです。
 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足り
る根拠が見いだせません。

[5]
●理由3(特許法第36条第6項第1号)について

・請求項 1-3

 拒絶の理由は、先の拒絶理由通知の[5]に記載のとおりである。
 ここで、令和5年5月8日付け意見書において、出願人は、以下の主張をしている。
「本願発明は、紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤において、紅麹及び/又はその加工物と変色抑制剤との好ましい組み合わせを見出すことを発明の課題をするものであって、紅麹及び/又はその加工物と変色抑制剤との配合比の最適化を発明の課題とするものではありません。
 そして、請求項1に係る発明において、各成分の配合量を実際にどの程度の含有量に設定すべきかについては、本願明細書の開示内容を参酌した上で、変色の課題を生じる成分の量と、求められる変色抑制効果の程度とに応じて、適宜設定できる事項です。」
 しかしながら、例えば、本願明細書の表2における、実施例10-1と10-2、実施例4-1と4-2の結果をみても、添加剤の含有量でΔE(光)の値が異なっている。してみれば、添加剤の配合量も、本願の課題解決手段に関係するパラメータであるものと解される。
 また、先の拒絶理由通知の[5]サポート要件で通知した拒絶理由の趣旨は、本願明細書の[0007]にも記載される、「紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤でありながら、変色が抑制された固形製剤の提供」という課題が、実施例10-1、実施例10-2の2点の結果をもって、請求項1に係る発明である「(A)紅麹及び/又はその加工物と、(B)ステアリン酸カルシウムとを含有し、前記(B)成分の配合量が0.1重量%以上である、固形製剤」全てにわたって、解決できたとは認められず、出願当初明細書に、「(A)紅麹及び/又はその加工物と、(B)ステアリン酸カルシウムとを含有し、前記(B)成分の配合量が0.1重量%以上である、固形製剤」が上記課題を解決できたことを裏付ける根拠が示されていたとも認められない、というものである。

 よって、出願人が主張する、「特定成分の組み合わせを見いだしたことが本願発明の特徴であって、(B)成分の配合量が0.1重量%以上である、固形製剤であれば、上記課題を解決できる」という主張を裏付ける根拠が示されていないから、請求項1-3に係る発明は、依然として、発明の詳細な説明に記載したものでない。

審判請求書(認められて特許査定)

【書類名】      手続補正書(方式)
【整理番号】     4579JP
【提出日】      令和 5年11月15日
【あて先】      特許庁長官殿
【事件の表示】
  【審判番号】   不服2023- 16710
  【出願番号】   特願2022-121901


【意見の内容】※抜粋

(3-3-5)サポート要件-維持された拒絶理由[5]
 拒絶査定では、『本願明細書の表2における、実施例10-1と10-2、実施例4-1と4-2の結果をみても、添加剤の含有量でΔE(光)の値が異なっている。してみれば、添加剤の配合量も、本願の課題解決手段に関係するパラメータであるものと解される』こと、本願発明の課題に対し、『請求項1に係る発明である「(A)紅麹及び/又はその加工物と、(B)ステアリン酸カルシウムとを含有し、前記(B)成分の配合量が0.1重量%以上である、固形製剤」全てにわたって、解決できたとは認められ』ないことを述べています。

 まず、本願発明の課題解決手段は、実施例10-1と10-2で用いられている「ステアリン酸カルシウム」であり、実施例4-1と4-2で用いられている「乳清タンパク質」ではありません。
 また、『添加剤の配合量も、本願の課題解決手段に関係するパラメータであるものと解される』とのご指摘がなされ、令和4年12月23日付け起案の拒絶理由通知書における主旨が、要すれば、実施例の2点の結果をもって請求項1の全範囲にわたって課題を解決できたとは認めないことである旨を確認する内容が述べられていますが、令和5年5月8日付け提出の意見書の項目3-3で述べた内容は、当該拒絶理由通知書における主旨に対応するものです。つまり、本願発明は、「紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤でありながら、変色が抑制された固形製剤を提供する」(0007)という課題に対して、紅麹及び/又はその加工物((A)成分)を含む固形製剤において、ステアリン酸カルシウム((B)成分)を併用する(0009の項1)という、従来技術では想定されていない課題解決手段を見出したものであり、ステアリン酸カルシウム((B)成分)の量を最適化することを課題とするものではありません。紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤の変色抑制にステアリン酸カルシウムが有効であることが本願出願時に知られていなかったことは、上記(3-3-2)~(3-3-4)で詳述した通りです。
 そして、従来技術で想定されていなかった課題解決手段であるステアリン酸カルシウムは、請求項1に文言で明確に規定されています。
 拒絶査定では、請求項1においてステアリン酸カルシウムの含有量が、課題が解決できる範囲に限定されていないことが強調されていますが、たとえ実施例が1点であったとしても、サポート要件を満たす上で、本願発明の課題の解決手段であるステアリン酸カルシウムの含有量の限定は不要です。
 そして、サポート要件を満たす上で課題解決手段となる成分の含有量の限定が不要であることは、令和5年5月8日付け提出の意見書の項目3-3で、平成24年(行ケ)第10387号(知的財産高等裁判所 平成25年9月19日判決)の判示内容を引用した通りです。

 従いまして、本願発明1~3はサポート要件を満たしています。

『審決は,特許請求の範囲に臭化n-プロピルと組み合わせる安定剤の下限値が記載されておらず,当然にその効果を奏さないような,安定剤をごくわずかしか含まないような配合量についての発明が本件発明9及び10の範囲に形式上含まれることをもって,本件発明9及び10がサポート要件を満たさないと判断した。しかし,本件発明は,臭化n-プロピルを安定化する臭化n-プロピルと安定剤の最良の組合せを見出すことを発明の課題とするものであって,臭化n-プロピルと安定剤の配合比の最適化を発明の課題とするものではないので,特許請求の範囲に,安定剤系として選択される物質の配合量の下限値が特定された記載されていないことを根拠に,本件発明9及び10がサポート要件を満たさないとすることはできない。』(平成24年(行ケ)第10387号の一部抜粋)

平成24年(行ケ)第10387号

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