【意見書で学ぶ】PBP_プロダクトバイプロセスの主張が認められた事例(36条6項2号(明確性)

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特許6586506号

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】特許第6586506号(P6586506)
(24)【登録日】令和1年9月13日(2019.9.13)
(45)【発行日】令和1年10月2日(2019.10.2)
(54)【発明の名称】皮膚外用剤

【請求項1】
下記(A)~(D)の成分を含有する皮膚外用剤。
(A)キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物
(B)メドウフォーム油
(C)スクワラン
(D)アルガン油

拒絶理由通知書

 特許出願の番号      特願2018-237880
 起案日          令和 1年 7月 2日
 特許庁審査官       辰己 雅夫        2941 4D00
 特許出願人        株式会社ノエビア 様
 適用条文         第36条

           <<<<  最後  >>>>

 この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

                 理由

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

                 記

●理由1について
・請求項1
 本願請求項1は補正され、特定溶媒(95容量%のエタノール)による抽出物であることが明らかにされた。

 請求項1は、
「下記(A)~(D)の成分を含有する皮膚外用剤。
(A)キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物
(B)メドウフォーム油
(C)スクワラン
(D)アルガン油」
という物の発明であるが、「95容量%エタノール抽出物」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。

                                                                 P.2

(a)しかしながら、製造方法による「抽出物」の特定は、当該「抽出物」がいかなる構造、性質等を有するものであるのかを特定するには不十分であり、請求項1に係る発明が物としていかなる「皮膚外用剤」であるのかが明確でなく、特に、「単なるキク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の抽出物を含む皮膚外用剤」と、本願製造方法により製造された「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物を含む皮膚外用剤」との間に、いかなる構造、性質等の差異が存在するのか、が明確でない。
(b)仮に、「単なるキク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の抽出物を含む皮膚外用剤」と、本願製造方法により製造された「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物を含む皮膚外用剤」との間に存在する物としての差異が明らかになったとしても、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
 しかしながら、本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるともいえない。
 したがって、請求項1に係る発明は明確でない。

【書類名】意見書


【整理番号】     KP1905
【あて先】      特許庁審査官 殿
【事件の表示】
  【出願番号】   特願2018-237880
【特許出願人】
  【識別番号】   000135324
  【氏名又は名称】 株式会社ノエビア
  【代表者】    海田 安夫
  【電話番号】   0748-23-1498
【発送番号】     289245
【意見の内容】
[1]拒絶理由の内容
 令和1年7月2日付拒絶理由通知書(令和1年7月23日発送)に対し、以下の通り意
見を述べます。
 審査官殿は、[請求項1は、
「下記(A)~(D)の成分を含有する皮膚外用剤。
(A)キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物
(B)メドウフォーム油
(C)スクワラン
(D)アルガン油」という物の発明であるが、「95容量%エタノール抽出物」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。]とご指摘されています。


 (a)「ローマカミツレ花由来の精油」とは、ローマカミツレ花の油胞に存在する揮発性の芳香物質を抽出したものであり、「単なるキク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の抽出物」であります。「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物、メドウフォーム油、スクワラン及びアルガン油を含有する皮膚外用剤。」が「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物をローマカミツレ花由来の精油であるCAMOMILE ROMAN OIL(GENERAL AROMATICS社製)に置き換えた試料6」と比較して高い保湿効果を発揮することは、令和1年5月29日に提出いたしました意見書に示した通りです。したがって、「ローマカミツレ花由来の精油に置き換えた試料6」すなわち「単なるキク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の抽出物を含む皮膚外用剤」と、[本願製造方法により製造された「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物を含む皮膚外用剤」]は全く別物であり、キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物、メドウフォーム油、スクワラン及びアルガン油を含む皮膚外用剤が格別な効果を発揮することは明らかです。したがって、「単なるキク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の抽出物を含む皮膚外用剤」と「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物を含む皮膚外用剤」の性質の差は明確です。


 (b)本発明は、「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物、メドウフォーム油、スクワラン及びアルガン油を含有する皮膚外用剤。」が高い保湿効果を発揮することを見出しなされたものです。しかし、「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物」に、どのような成分が抽出されてくるのか、すべてを決定することは、およそ実際的ではありません。より具体的には、例えば、得られた抽出物をクロマトグラフィーで限界まで何度も分離を繰り返し、分離されてきた成分一つ一つをNMRやMS等で構造解析して分子構造を決定していくことも理論的には考えられますが、未知物質がどれほど含まれるかも予測できず、また微量成分については個別に高純度まで精製しなければなりません。このように、本願請求項1に係る「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物を含む皮膚外用剤」について、本発明の効果に寄与する成分の種類を明確に特定する等して、本願出願時において当該「キク科ローマカミツレ属(Anthemis)植物の花の95容量%エタノール抽出物を含む皮膚外用剤」をその構造又は特性により直接特定することは、およそ実際的ではありません。
 何卒再度ご審査のうえ、特許査定を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

特許第7587877号(補正無し・意見書のみ)

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】特許第7587877号(P7587877)
(24)【登録日】令和6年11月13日(2024.11.13)
(45)【発行日】令和6年11月21日(2024.11.21)
(54)【発明の名称】組成物

 【請求項1】
米胚芽のクエン酸水溶液抽出末並びに、大麦及びヨモギから選ばれる少なくとも1種を含有する組成物。

拒絶理由通知書

 特許出願の番号      特願2023-099746
 起案日          令和 6年 8月26日
 特許庁審査官       柴原 直司        3534 4U00
 特許出願人        株式会社東洋新薬 様
 適用条文         第36条第6項第2号(明確性)

          <<<<  最後  >>>>

 この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

                理由

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

                  記

●理由1について
・請求項1
 請求項1に係る発明は、「組成物」(物の発明)であるが、当該請求項には、「米胚芽のクエン酸水溶液抽出末」という、その物の製造方法が記載されているものと認められる。
 ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最判平成27年6月5日平成24年(受)第1204号、同2658号)。
 しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
 したがって、請求項1に係る発明は明確でない。

              <補正等の示唆>

 出願人は、上記拒絶理由1を解消するために、以下の対応をとることが考えられますので、参考にしてください。また、特許・実用新案審査ハンドブック第II部第2章2203~2205も適宜参照してください。

 ア.該当する請求項の削除
 イ.該当する請求項に係る発明を、物を生産する方法の発明とする補正
 ウ.該当する請求項に係る発明を、製造方法を含まない物の発明とする補正
 エ.不可能・非実際的事情についての意見書等による主張・立証

 補正の際は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(「当初明細書等」)に記載した事項の範囲内で行わなければならないことに留意してください。特に上記ウにおいて単に製造方法の記載を削除する補正は、特許請求の範囲が当初明細書等に記載した事項の範囲内でないものになりやすいことにも留意してください。
 また、上記エにおいて不可能・非実際的事情を主張する際には、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定すること」が不可能又はおよそ非実際的である事情を具体的に記載してください。

 なお、上記の補正等の示唆は、法律的効果を生じさせるものではなく、拒絶理由を解消するための一案です。どのように補正、主張・立証を行うかは、出願人が決定すべきものです。

 (本願については、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定すること」が不可能又はおよそ非実際的である事情を意見書等に具体的に記載し、主張・立証すればこの限りでない。)

意見書(補正無し。認められて特許査定)

【意見の内容】
1.拒絶理由の内容
審査官殿は、令和6年8月26日(起案日)付けの拒絶理由通知書において、以下の理由により、この出願は特許を受けることができないと認定されました。

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.本願が特許されるべき理由
 本願発明は、米胚芽のクエン酸水溶液抽出末を含有する組成物ですが、米胚芽のクエン酸水溶液抽出末には、ポリアミン又はその塩の他に多種多様な化学物質が含まれており、この多種多様な化学物質をすべて特定することは、膨大な時間を必要とし、非常に困難な作業となります。また、この多種多様な化学物質の中で本発明に寄与する化学物質を的確に特定することは、さらに膨大な時間を必要とし、さらに困難な作業となります。
したがって、本願発明の組成物について、本願発明の効果に寄与する化学物質を明確に特定する等して、本願出願時において当該組成物をその構造又は特性により直接特定することは、実際的ではありません。
このように、本願発明に係る発明の組成物について、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定すること」が不可能又はおよそ非実際的である事情が存在するため、物の発明に関するものであり、かつ、製造方法によってその物を特定する請求項(PBPクレーム)による特定が認められる例に該当するものと思料いたします。

3.結論
 以上のように、ご指摘頂いた拒絶理由につきましては全て解消したものと考えます。再
度ご審査の上、特許査定を賜りますようにお願い申し上げます。
以上

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