【拒絶理由で学ぶ】固形製剤【明確性(除く補正(36条6項2号))】

学ぶシリーズ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2024-28666(P2024-28666A)
(43)【公開日】令和6年3月4日(2024.3.4)
(54)【発明の名称】固形製剤

【請求項1】
 (A)紅麹及び/又はその加工物と、(B)ステアリン酸カルシウムとを含有し、顆粒
剤、細粒剤、散剤、又はカプセル剤である、固形製剤(但し、[i]ゼオライトの焼成物、
貝殻の焼成物及びクエン酸を含む炎症性腸疾患の予防又は治療用組成物と、[ii]植物ステ
ロールを含むものと、[iii]酒粕発酵物を含むものと、[iv]紅麹以外の穀物麹を含むもの
と、[v]ナットウキナーゼ含有納豆菌培養エキス末を含むものと、[vi]丹参を含むものと
を除く)。
【請求項2】
 前記(A)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が0.05~7重量部である
、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
 (A)紅麹及び/又はその加工物を含み、顆粒剤、細粒剤、散剤、又はカプセル剤であ
る固形製剤(但し、[i]ゼオライトの焼成物、貝殻の焼成物及びクエン酸を含む炎症性腸
疾患の予防又は治療用組成物と、[ii]植物ステロールを含むものと、[iii]酒粕発酵物を
含むものと、[iv]紅麹以外の穀物麹を含むものと、[v]ナットウキナーゼ含有納豆菌培養
エキス末を含むものと、[vi]丹参を含むものとを除く)の変色を抑制する方法であって、
前記固形製剤において、前記(A)成分と共に、(B)ステアリン酸カルシウムを配合す
る、変色抑制方法。

拒絶理由通知書

 特許出願の番号      特願2024-010706
 起案日          令和 6年 4月26日
 特許庁審査官       長谷川 莉慧霞      1970 4O00
 特許出願人代理人     田中 順也(ほか 2名) 様
 適用条文         第36条第6項第2号(明確性)
              第29条第1項第3号(新規性)
              第29条第2項(進歩性)
              第36条第6項第1号(サポート要件)

 この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見が
ありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してくだ
さい。

                理由

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36
条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又
は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を
通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に
該当し、特許を受けることができない。

3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又
は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を
通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技
術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたもので
あるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法
第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

記   (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(明確性)について

・請求項 1-3

 請求項1に係る発明は、「(A)紅麹及び/又はその加工物と、(B)ステア
リン酸カルシウムとを含有し、顆粒剤、細粒剤、散剤、又はカプセル剤である、
固形製剤(但し、[i]ゼオライトの焼成物、貝殻の焼成物及びクエン酸を含む炎
症性腸疾患の予防又は治療用組成物と、[ii]植物ステロールを含むものと、[iii
]酒粕発酵物を含むものと、[iv]紅麹以外の穀物麹を含むものと、[v]ナットウキ
ナーゼ含有納豆菌培養エキス末を含むものと、[vi]丹参を含むものとを除く)。
」であって、「(A)紅麹及び/又はその加工物と、(B)ステアリン酸カルシ
ウムとを含有し、顆粒剤、細粒剤、散剤、又はカプセル剤である、固形製剤」か
ら[i]~[vi]の6つの態様を除くものである。
 ここで、令和6年2月5日付け早期審査に関する事情説明(以下、「事情説明
書」という。)において、「[i]~[vi]の態様が、いずれも外縁が明確である
ため、残る範囲の外縁も明確です。また、本願発明1から[i]~[vi]の態様が除
かれることで残る範囲が実質的に存在しなくなっているわけでもありません。」
と主張している。
 しかしながら、審査基準の「第IV部 第2章 新規事項を追加する補正」及び「
「第II部第2章第3節 明確性要件」の2.1(1)」にも記載のとおり、第一に「除く
クレーム」とする補正は、「(i) 請求項に係る発明が引用発明と重なるために新
規性等(第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)が否定されるおそれがある場
合に、その重なりのみを除く補正」である必要があるところ、「[ii]植物ステロ
ールを含むものと、[iii]酒粕発酵物を含むものと、[iv]紅麹以外の穀物麹を含
むものと、[v]ナットウキナーゼ含有納豆菌培養エキス末を含むものと、[vi]丹
参を含むもの」なる記載には、明らかに提示した各引用文献に記載された発明以
外の発明が包含されており、本願請求項1に係る発明の「除くクレーム」は、引
用文献との「重なりのみ」を除いた発明であるとはいえない
(例えば、「[ii]植
物ステロールを含むもの」は、関連出願(特願2022-121901)の引用
文献4、5の拒絶理由を回避するための発明特定事項である旨主張されているが
、「[ii]植物ステロールを含むもの」には、引用文献4、5に記載された発明以
外の多数の発明が存在するといえ、引用文献4、5に記載された発明との重なり
のみが除かれているとは解されない。)。そうすると、いかなる発明が除かれて
いるのかが明らかでなく、発明の範囲が明確であるとはいえない。

 第二に、上記審査基準指摘箇所にも記載のとおり、本願請求項1に係る発明は
「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めており、一の請求項から
一の発明が明確に把握できるとは認められない。

 請求項2、3に係る発明についても上記理由と同様である。
 よって、請求項1-3に係る発明は明確でない。

第IV部 第2章 新規事項を追加する補正

(4) 除くクレームとする補正の場合
「除くクレーム」とは、請求項に記載した事項の記載表現を残したまま
で、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した
事項から除外することを明示した請求項をいう。
補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、補正により当
初明細書等に記載した事項を除外する「除くクレーム」は、除外した後の
「除くクレーム」が新たな技術的事項を導入するものではない場合には、許
される。
以下の(i)及び(ii)の「除くクレーム」とする補正は、新たな技術的事項を
導入するものではないので、補正は許される。
(i) 請求項に係る発明が引用発明と重なるために新規性等(第29条第1項第3
号、第29条の2又は第39条)が否定されるおそれがある場合に、その重な
りのみを除く補正
(説明)
上記(i)における「除くクレーム」は、第29条第1項第3号、第29条の2又は第39
条に係る引用発明である、刊行物等又は先願の明細書等に記載された事項(記載
されたに等しい事項を含む。)のみを除外することを明示した請求項である。
上記(i)の「除くクレーム」とする補正は、引用発明の内容となっている特定の
事項を除外することによって、補正前の明細書等から導かれる技術的事項に何ら
かの変更を生じさせるものとはいえない。したがって、このような補正は、新た
な技術的事項を導入しないものであることが明らかである。
なお、「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、
引用発明と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引
用発明と重なるような発明である。引用発明と技術的思想としては顕著に異なる
発明ではない場合は、「除くクレーム」とすることによって進歩性欠如の拒絶理
由が解消されることはほとんどないと考えられる。
また、「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めたり、多数にわた
る場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがあるので、審
査官は留意する(「第II部第2章第3節 明確性要件」の2.1(1)参照)。
例4:
[補正前の請求項]
陽イオンとしてNaイオンを含有する無機塩を主成分とする鉄板洗浄剤。
[引用発明]
陰イオンとしてCO3イオンを含有する無機塩を主成分とする鉄板洗浄剤。
(具体例:陽イオンをNaイオンとした例)
(説明)
このときに、特許請求の範囲から引用発明との重なりを除外する目的で、特
許請求の範囲を「陽イオンとしてNaイオンを含有する無機塩(ただし、陰イオ
ンがCO3イオンの場合を除く。)……」とする補正は、許される。

(ii) 請求項に係る発明が、「ヒト」を包含しているために、第29条第1項柱
書の要件を満たさない、又は第32条に規定する不特許事由に該当する場
合において、「ヒト」のみを除く補正
(説明)
「ヒト」を発明対象から除外することによって、上記拒絶理由を解消する上記
(ii)の「除くクレーム」とする補正は、補正前の明細書等から導かれる技術的事
項に何らかの変更を生じさせるものとはいえない。したがって、このような補正
は新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかである。
例5:
[補正前の請求項]
配列番号1で表されるDNA配列からなるポリヌクレオチドが体細胞染色体中
に導入され、かつ該ポリヌクレオチドが体細胞中で発現している哺乳動物。
(説明)
この場合は、発明の詳細な説明で「哺乳動物」についてヒトを含まないこと
を明確にしている場合を除き、「哺乳動物」には、ヒトが含まれる。しかし、
ヒト自体をその対象として含む発明は、公の秩序、善良の風俗を害するおそれ
がある発明に該当し、第32条に違反するものである。
このときに、特許請求の範囲からヒトを除外する目的で、特許請求の範囲を
「……非ヒト哺乳動物」とする補正は、当初明細書等にヒトを対象外とするこ
とが記載されていなかったとしても許される。

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