用途を限定した特許と限定しない特許とは?
組成物の特許とは、文字通り、「AとBとCを含有する、組成物。」のような特許です。
これに対し、用途を限定した特許とは、「AとBとCを含有する、○○用組成物。」のような特許をいいます。
権利範囲の広さで考えると、「AとBとCを含有する、組成物。」のほうが用途を限定しない分だけ範囲が広くなることはわかると思います。
その用途の限定、絶対必要?
例えば「A、B、C」の3成分を組み合わせることで美白効果が奏されることを発見した場合、特許請求の範囲を「AとBとCを含有する、美白用組成物。」にしてしまいがちに思います。代理人弁理士からの案文に「AとBとCを含有する、美白用組成物。」と書かれていることもあるでしょう。
あるいは拒絶理由通知において審査官から、「本願請求項●に係る発明は、用途を特定しない組成物であり、▲▲以外の用途の組成物を包含しており、▲▲以外の用途における効果は不明であるので、本願発明が請求の範囲全てにわたって当業者が予測もし得ない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。」というような、実施例の用途への限定を促す指摘を受ける場合もあります。
ただ、その用途の限定、絶対必要でしょうか。もしかしたらそれは自分から権利範囲を狭めてしまっているかもしれません。
用途限定について 審査基準
用途について、審査基準には以下の記載があります。
3.2.1 引用発明と比較した有利な効果引用発明と比較した有利な効果は、進歩性が肯定さ
れる方向に働く要素である。このような効果が明細書、特許請求の範囲又は図面の記載か
ら明確に把握される場合は、審査官は、進歩性が肯定される方向に働く事情として、これ
を参酌する。ここで、引用発明と比較した有利な効果とは、発明特定事項によって奏され
る効果(特有の効果)のうち、引用発明の効果と比較して有利なものをいう。例:
[審査基準第III部第2章第2節3.2.1(1)]
請求項に係る発明が特定のアミノ酸配列を有するモチリンであって、引用発明のモチリン
に比べ6~9倍の活性を示し、腸管運動亢進効果として有利な効果を奏するものである。こ
の効果が出願当時の技術水準から当業者が予測できる範囲を超えた顕著なものであること
は、進歩性が肯定される方向に働く事情になる。
注目していただきたいのは、審査基準の例では用途を限定していないということです。これを知っているのはいないのとでは権利範囲が大きく変わってきます。
用途限定をしていない特許の例
実際、以下の特許は用途限定をせずに権利化されています。
このことからも明らかなように、実施例の用途への限定は必ずしも必要ではありません。
また、仮に拒絶理由通知において『▲▲以外の用途の組成物を包含 しているため格別顕著な効果を奏するものとは認められない』と審査官から認定された場合、それは審査基準と運用に即したものではないため、適切ではない可能性があります(審査の状況、明細書等の記載、これまでの主張等があるため、一概に誤っているとは言えない点は注意)。
特許3040992号
皮膚の美白効果に基づき、食品組成物として特許されています。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 プロアントシアニジン及びグルタチオンを含有することを特徴とする食品組成物。
【請求項2】 美白食品である請求項1の組成物。
【請求項3】 プロアントシアニジンが、ブドウ、ブルーベリー、イチゴもしくはアボガドの果実もしくは種子、または大麦、小麦、小豆、大豆、黒大豆、カカオまたはそれらの抽出エキスに含有されるものであることを特徴とする請求項1または2の組成物。
【請求項4】 グルタチオンが、酵母菌糸体粉末または酵母菌体エキス、または牛、豚もしくは鳥の肝臓またはそれらの抽出物に含有されるものであることを特徴とする請求項1または2の組成物。
【請求項5】 コラーゲンまたはコラーゲン分解物を含有することを特徴とする請求項1または2の組成物。
特許5665946号
抗疲労効果に基づき、飲料として特許されています。
【請求項1】
少なくとも1種のセサミン類と少なくとも1種のビタミンB1類を含有する飲料であって、
飲料100mL中のセサミン類の総含量が1~100mgであり、ビタミンB1類の総含量が1~100mgであり、
セサミン類が、セサミン、エピセサミン、又はこれらの混合物であり、
ビタミンB1類が、チアミン、チアミンジスルフィド、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、ビスベンチアミン、ジセチアミン、チアミンエチルジスルフィド、チアミンプロピルジスルフィドおよびそれらの塩から選択された1種または2種以上であり、
セサミン類とビタミンB1類の配合量比が1:1~2:1である、
前記飲料。
特許6499740号
免疫機能増進効果に基づき、食品組成物として特許されています。
【請求項1】
ベニクスノキタケと、
ナリネ菌と、
を含む食品組成物。
特許6621463号
異常な血糖値と関連する疾病及び疾患の治療効果に基づき 、健康食品組成物として特許されています。
【請求項1】
1-デオキシノジリマイシンを含む白桑抽出物と、クロロゲン酸を含むグリーンコーヒー豆抽出物と、ファソラミンを含む白インゲン豆抽出物と、を栄養補助有効成分として含む健康食品組成物。
特許6940296号
脂溶性ビタミンの抗酸化能増強効果に基づき、組成物として特許されています。
まとめ
これら審査基準や事例より、必ずしも用途を限定する必要はないと言っていいのではないかと考えます。研究成果を適切に権利化するためにも、できるだけ用途は絞らず権利化を目指したいところです。




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