サポート要件の考え方と企業知財実務について

学ぶシリーズ

備忘録としてまとめたものです。内容には誤りがあるかもしれません。


審査基準とサポート要件の類型

■審査基準

(1) 特許請求の範囲の記載が「サポート要件」を満たすか否かの判断は、請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとを対比、検討してなされる。
(2)審査官は、この対比、検討に当たって、請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとの表現上の整合性にとらわれることなく、 実質的な対応関係について検討する。
(3) 審査官によるこの実質的な対応関係についての検討は、請求項に係る発明が、 発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるか否かを調べることによりなされる。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/02_0202bm.pdf

■サポート要件違反の類型

(1) 請求項に記載されている事項が、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない場合

(2) 請求項及び発明の詳細な説明に記載された用語が不統一であり、その結果、 両者の対応関係が不明瞭となる場合

(3) 出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合

(4) 請求項において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる場合

実務_サポート用件違反の情報提供を行う場合の流れ

競合他社の権利範囲を狭めるためにサポート用件違反の情報提供をする場合の検討フローについてまとめます。前提として、他社の出願中特許の特許請求の範囲に自社商品が該当しているので、商品が該当しない範囲まで権利を狭めたいという状況を想定しています。

1.請求項に記載される各構成要件について、効果を確認している実施例をチェックする。

パターン1 特許請求の範囲には該当するが実施例には該当しない場合

この場合は実施例の範囲まで限定させれば問題がなくなります。

パターン2 実施例にも該当する場合

この場合は実施例まで限定させても懸念はなくなりません。
このケースは次の二点を考えます。

① 製造方法や原料の使用部位を実施例に限定させれば当社製品が外れないか
② 別の構成要件を実施例に限定させれば当社製品が外れないか

2.「請求項に合致していても、実施例と異なる成分の場合には発明の課題を解決できるか不明」を説明するロジックを考える

例:特開2022-076152
解決課題:鉄塩とアスコルビン酸ナトリウムとの変色が抑制された経口組成物及びその変色抑制方法を提供すること
請求項:(C)亜鉛化合物、マグネシウム化合物から選択される1以上
実施例:(C)グルコン酸亜鉛、亜鉛酵母、酸化マグネシウム


ロジックを考える:
「亜鉛化合物やマグネシウム化合物はその種類により特性が異なるので、あらゆる亜鉛化合物やマグネシウム化合物について本願発明の効果が奏されることを当業者は理解できない。」

3.ロジックの証拠を探す

グルコン酸亜鉛が他の亜鉛化合物と異なる特性(課題と関係する特性)を奏することが記載された文献や、「グルコン酸亜鉛ではない亜鉛化合物は変色抑制の効果がないことを示す文献」などを調べる。

4.書類の作成

■論理展開の基本構成

・発明の目的→目的達成には●●(成分や製造工程など)が必要→請求項では●●が特定されていない→発明の効果が達成されるか不明。

(1)解決課題の認定
本願発明は鉄塩とアスコルビン酸ナトリウムとの変色が抑制された経口組成物及びその変色抑制方法を提供することを解決するものと認められる。

(2)特許請求の範囲の認定
そして、本願発明は「(C)亜鉛化合物、マグネシウム化合物から選択される1以上」を構成要件とするものであり、具体的な化合物は特定されていないため、あらゆる亜鉛化合物、マグネシウム化合物が包含される。

(3)実施例の認定
しかしながら、本願発明の実施例にて具体的に効果が確認されている(C)は、グルコン酸亜鉛、亜鉛酵母、酸化マグネシウムのみである。

(4)実施例以外の成分で課題が解決できるか不明であることの説明
化合物の種類により特性が異なることは技術常識である。このことは、例えば刊行物1でグルコン酸亜鉛が他の亜鉛化合物の変色抑制作用を比べて異なる結果が得られたことからも明らか(※あくまで記載のイメージで、実際にそのようなデータがあるかは不明です。)です。よってあらゆる亜鉛化合物、マグネシウム化合物の場合に本願発明の効果が奏されることを当業者は理解できません。

(5)結論
出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、サポート用件を満たしません。

参考 特願2020-186437 2024/4/24 拒絶理由通知

●理由1(サポート要件)について
・請求項1~6について
本願明細書の段落[0007]によると、本願発明の課題は、「鉄塩とアスコルビン酸ナトリウムとの変色が抑制された経口組成物及びその変色抑制方法を提供すること」であると認められる。
本願明細書の実施例では特定の(C)成分を用いることによって、組成物の変色を抑制していることが分かる。
一方、鉄塩とアスコルビン酸ナトリウムとの変色を、亜鉛化合物、マグネシウム化合物を含有させることによって上記課題を解決できるかについての作用機序は何ら記載されておらず、また、亜鉛化合物、マグネシウム化合物を含有させることと上記課題との関係自体が本願出願時の技術常識である、又は、上記関係を本願出願時の技術常識から当業者が合理的に理解できるものではない。
すなわち、本願明細書において、本願発明の課題を解決し得る根拠は実施例においてのみ得られるものといえる。
そうすると、実施例において記載された特定の化合物以外の(C)成分を用いた際に、上記課題が解決できることについては記載されておらず、また、自明であるとはいえず、本願出願時の技術常識であるともいえない。
よって、本願請求項1~6に記載された発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものともいえないから、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。

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