【拒絶理由で学ぶ】除く補正が新規事項の追加と認定された事例(付記)

今回は、実務でついやってしまいがちな「除くクレーム(除く補正)」に関するリアルな拒絶査定の事例をご紹介します。

先行技術文献が提示されたとき、「じゃあ、その文献に書いてあるドンズバの実施例だけを特許請求の範囲から『除く』って書けば回避できるよね」と考える方は多いと思います。いわゆる「除く補正」は伝家の宝刀のように思えますが、実はやり方を間違えると「新規事項の追加」という思わぬカウンターパンチを食らうリスクがあるんです。

今回は、実際の特許出願(特願2024-192612)の拒絶査定の起案 を題材に、なぜ除く補正が新規事項の追加と判断されてしまったのか、審査基準と照らし合わせながら深掘りしてみたいと思います。

今回の事例:特願2024-192612での「除く補正」

この案件では、出願人が拒絶理由を解消するために、請求項1から特定の組成物を「除く」という補正を行いました 。具体的には、以下の(A)と(B)の組成物を権利範囲から除外したのです。

  • (A)玉露茶葉及びハス胚芽エキスを含有する粉末茶 。
  • (B)高麗人参エキス、紅花エキス、みかんの皮エキス、ナツメエキス、桂皮エキス、霊芝エキス、クコの実エキス、ウイキョウエキス、甘草エキス、チェストツリーエキス及びハトムギエキスを含有する清涼飲料水 。

出願人としては、引用文献1及び2に基づいて、これらと重なる部分を除外したのだから問題ない(新たな技術的事項を導入するものではない)という主張でした

審査官の厳しい判断:「それ、新規事項の追加ですよ」

これに対し、審査官は特許法第17条の2第3項に基づく新規事項の追加であると指摘しました

審査官のロジックは非常にシンプルかつ厳格です。 まず、上記(A)や(B)を除いたことによって特定される発明が、当初明細書に明示的に記載されていないし、自明でもない、とバッサリ斬っています

さらに痛い指摘として、「単に引用文献に記載された事項との重なりを除いたものであるというだけでは、新たな技術的事項を導入しないことの説明にはならない」と明言されています 。結果として、出願人からの十分な説明がないため、補正内容と当初明細書との対応関係が分からず、新規事項を追加する補正に該当する(特許・実用新案審査基準第IV部第2章4.(3)参照)と判断されてしまいました

審査基準ではどうなっているのか?

「除くクレームなら何でも許されるわけじゃない」というのは、特許庁の審査基準を読み込むとしっかり書かれています。

審査基準(第IV部 第2章 新規事項を追加する補正)によると、除くクレームとする補正が許される典型的なケースは以下の通りです。

  1. 請求項に係る発明が引用発明と重なるために「新規性等(第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)」が否定されるおそれがある場合に、その重なりのみを除く補正 。
  2. 発明が「ヒト」を包含していて不特許事由等に該当する場合に、「ヒト」のみを除く補正 。

特に注目したいのは、1つ目のパターンの説明書きです。引用発明と重なる部分を除外する補正は、技術的事項に変更を生じさせないから許されるとされています 。しかし、同時に「進歩性」の拒絶理由を解消するために除くクレームを使っても、ほとんど効果がない(引用発明と技術的思想として顕著に異なるわけではないから)とも記載されているんです

今回の事例でも、審査官は仮にこの補正が適法だったとしても、結局は引用文献に基づく進歩性欠如(第29条第2項)で拒絶されるという判断を併記しています

まとめ:除く補正は魔法の杖ではない

今回の事例から学べるのは、「とりあえず引用文献の実施例を除外しておけばOK」という安易な除く補正は、審査官には通用しないということです。

単に「重なりを除きました」と主張するだけでなく、「なぜその除外が、当初明細書等から導かれる技術的事項に新たな要素を付け加えることにならないのか」を、意見書で論理的に説明しきらないと、今回のように「対応関係が分からないから新規事項追加!」と判定されてしまいます

除く補正を検討する際は、それが本当に新規性等の回避(重なりのみの除外)になっているか、そして明細書全体の中で技術的な不自然さを生んでいないかを慎重に見極める必要がありますね。

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