商標法┃商標登録及び商標登録出願┃ポイントのまとめ

商標法

(商標登録の要件)第三条 

本条1項に該当するか否かの判断時期は、査定時のみ。

自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二 その商品又は役務について慣用されている商標
三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
四 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標
2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

1号 普通名称
2号 慣用商標
3号 記述的商標(使用による周知化で登録可能)
4号 ありふれた氏又は名称(使用による周知化で登録可能)
5号 極めて簡単かつありふれた商標(使用による周知化で登録可能)
6号 需要者が出所を認識できない商標(使用による周知化で登録可能)
「ふかきあきじ」は登録できない。

〇「使用をする商標」に該当しないもの
指定役務が、商標を使用できない蓋然性が高いものである場合、使用する意思がないものと判断される。
 例)
・弁護士(弁護士法人)でないものが、「訴訟事件その他に関する法律事務」を指定して出願
・弁理士(特許業務法人)でないものが、「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務」を指定して出願

〇「普通名称」の解釈(青本3条1項1号)
普通名称とは、取引界においてその名称が特定の業務を営む者から流出した商品又は特定の業務を営む者から提供された役務を指称するのではなく、その商品又は役務の一般的な名称であると意識されるに至っているものをいうのである。しかし、一般の消費者等が特定の名称をその商品又は役務の一般的名称であると意識しても普通名称ではない。問題は特定の業界内の意識の問題であり、それ故に、例えばある商標が極めて有名となって、それが一般人の意識ではその商品の普通の名称だと意識され、通常の小売段階での商品購入にその商品の一般的名称として使われても、それだけではその商標は普通名称化したとはいえないのである。つまり、取引界において特定の者の業務に係る商品又は役務であることが意識されないようになった名称をその商品又は役務について使っても出所表示機能あるいは自他商品又は自他役務の識別力がないことは明らかであるから、これを不登録理由として掲げたのである。

〇商品や役務について慣用されている商標(3条1項2号)の例

例)文字や図形等からなる商標
・商品「自動車の部品、付属品」について、商標「純正」、「純正部品」
・商品「清酒」について、商標「正宗」
・役務「宿泊施設の提供」について、商標「観光ホテル」

例) 色彩のみからなる商標
・ 役務「婚礼の執行」について、商標「赤色及び白色の組合せの色彩」
・ 役務「葬儀の執行」について、商標「黒色及び白色の組合せの色彩」

例) 音商標
・ 商品「焼き芋」について、商標「石焼き芋の売り声」
・ 役務「屋台における中華そばの提供」について、商標「夜鳴きそばのチャルメラの音」

〇需要者が何人の業務に係る商品または役務であることを認識することができない商標、とは(青本3条1項6号)
本号の意味するのは「需要者が何人かの 業務に係る商品又は役務であることを認識することができない」ことであって、必ずしも需要者がその商品又は役務が特定の者の業務に係るものであることを認識することができるかどうかを問題にしているのではない。現在の商品流通機構、サービス取引事情の中では、例えば、日常の消費物資等について、それが特定の業務を営む者から流出したことを認識してその者自身の信用を背景として当該商品を購入することは極めて稀であり、多くの場合同一商標の使用をした商品は以前に購入した商品と同等の品質があるだろうとの予測の下に購入するのが実情だから、商標のもつべき本質的機能としては自他商品又は自他役務を区別し、それが一定の出所から流出したものであることを一般的に認識させることができれば十分なのである。本号はこのことを意味しているのである。

〇需要者が何人の業務に係るか認識できない(3条1項6号)例
元号

(例題)
商品が通常発する音は、商標法第3条第1項第3号に規定される商品の「その他の特徴」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。

(答え)〇

判断主体について(EARL GREYS事件:東京高裁 昭和52年(行ケ)82号)

 商標登録出願に係る商標が、「指定商品の品質を表示するもの」に該当すると取引業者間で認識すれば本号に該当する。
(必ずしも一般消費者が「指定商品の品質を表示する」と認識する必要はない。)

商品の「産地」、「販売地」、役務の「提供の場所」について

 商品の「産地」、「販売地」、役務の「提供の場所」に該当するか否かは、取引者又は需要者が、その地理的名称の表示する土地において、指定商品が生産され若しくは販売され又は指定役務が提供されているであろうと一般に認識するか否かにより決まる
指定商品が商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることが要求されるわけではない(ジョージア事件:最高裁 昭和60年(行ツ)第68号)。

(商標登録を受けることができない商標)第四条 

〇「有する」「含む」と規定されている登録要件(589を含む有する17号)
 ・4条1項5号(政府の監督用印章等)
 ・4条1項8号(他人の肖像等)
 ・4条1項9号(博覧会の賞)
 ・4条1項17号(ぶどう酒の産地等)

〇大臣指定が要件となっている規定(大臣の235(ファミコン))
 ・4条1項2号(国の紋章等)
 ・4条1項3号(国際連合の標章等)
 ・4条1項5号(政府の監督用印章等)

〇特許長官が定める基準又は指定が要件となっている規定
 ・4条1項9号(政府等以外の者が開設する博覧会であって特許庁長官の定める基準に適合するもの)
 ・4条1項17号(日本国のぶどう酒・蒸留酒の産地のうち特許長官が指定するもの)

〇両時判断(はとこなく)
以下の規定は、査定・審決時に該当しても、出願時に該当しなければ、適用されない(登録される)。
 ・4条1項8号(他人の肖像等)
 ・4条1項10号(他人の周知商標)
 ・4条1項15号(混同のおそれがある商標)
 ・4条1項17号(ぶどう酒等の産地)
 ・4条1項19号(周知商標の不正目的での登録)

〇4条1項各号の主な例外のまとめ

次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
一 国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標

(例題)正誤問題
菊花紋章を一部に含む図形商標であっても、商標登録を受けることができる場合がある。

(答え)

二 パリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

三 国際連合その他の国際機関(ロにおいて「国際機関」という。)を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標(次に掲げるものを除く。)
イ 自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものであつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
ロ 国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標であつて、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用をするもの

国際機関と関係があるとの誤認を生じない商標については商標登録を行うことができるとする例外規定。

(例題)
国際連合その他の国際機関を表示する標章と同一又は類似の商標は、商標登録されることはない。

(答え)×

四 ①赤十字の標章及び②名称等の使用の制限に関する法律(昭和二十二年法律第百五十九号)第一条の標章若しくは名称又は③武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)第百五十八条第一項の特殊標章同一又は類似商標

立法趣旨はこのような法律で使用を禁止しているものに商標権を設定することは妥当でないからであり、同時に赤十字社等の権威を傷つけるおそれがあるからである

工業所有権法逐条解説

五 日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの

以下の要件を満たすとき、商標登録を受けることができない。

① 日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち
② 経済産業大臣が指定するものと
③ 同一又は類似の標章を有する商標で、
④ その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用するもの

4条1項1号から4号までと異なり、5号については、指定商品・役務との関係が考慮される。
・4条1項1号から4号: 商標が同一・類似 ⇒ 該当
・4条1項5号: 商標が同一・類似でも、指定商品・役務が非類似 ⇒ 該当せず

「同一又は類似の標章を有する商標」
商標の一部としてその標章と同一・類似の標章を使用している場合も不登録になり得る。

(例題)
地方公共団体の監督用の記号のうち著名なものと同一又は類似の標章を有する商標であって、その記号が用いられている商品と同一又は類似の商品について使用をするものは、商標登録される場合はない。

(答え)×;経済産業大臣が指定するものと同一または類似の標章

六 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標

2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

〇 公益に関する団体であって営利を目的としないものの例
 ① 日本オリンピック委員会
 ② 日本貿易振興機構
 ③ 政党
 ④ 国際オリンピック委員会
 ⑤ 国際パラリンピック委員会及び日本パラリンピック委員会
 ⑥ キリスト教青年会

〇 公益に関する事業であって営利を目的としないものの例
 ① 地方公共団体や地方公営企業等が行う水道事業、交通事業、ガス事業
 ② 国や地方公共団体が実施する事業(施策)
 ③ オリンピック
 ④ パラリンピック

(例題)
商標登録出願に係る商標が、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章と同一又は類似の商標である場合、商標登録出願人が当該団体でなくても、商標登録を受けることができる場合がある。

(答え)〇 著名なものでなければ、登録されうる。

七 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

九 政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)

〇4条1項9号の博覧会
 4条1項9号は以下のいずれかの博覧会を対象とする。
 ・●●●が開設する博覧会
 ・政府等以外の者が開設する博覧会であって●●●に適合するもの
 ・外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会

十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十二 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの

〇他人の登録防護標章の日が後の場合(3条1項12号)
12号では出願日の先後については定められていない。つまり、甲の商標登録出願に係る商標が、その出願の日後の出願に係る他人乙の登録防護標章と同一の商標であって、当該防護標章登録に係る指定役務について使用をするものである場合、それを理由として当該商標登録出願は拒絶される。

十三 削除

十四 種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

本号に該当するか否かの判断基準は、出願時及び査定時(4条3項)。

【要旨1】商標法四条一項一五号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。
 そして、【要旨2】「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。

レールデュタン事件(最高裁判決平成10年(行ヒ)第85号)

十六 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

十七 ①日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は②世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、③当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの

本号に該当するか否かの判断基準は、出願時及び査定時(4条3項)。

(例題)
商標登録出願に係る商標が、日本国のぶどう酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章であって、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒について使用するものに該当していても、特許庁長官による指定が、その商標登録出願の出願日の後になされた場合には、商標法第4条第1項第17号には該当しない。

(答え)〇

十八 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標

十九 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

本号に該当するか否かの判断基準は、出願時及び査定時(4条3項)。

(例題)
甲の商標登録出願Aに係る商標イに類似する他人乙の商標ロは、出願Aの出願時及びその査定時において、乙の業務に係る商品を表示するものとして日本でほとんど知られていないが、イタリアで需要者の間に広く認識されている。この場合、甲により商標イの使用に不正の目的があれば、甲は、商標イについて商標登録を受けることができない。

(答え)〇

2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

3 第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。

商標登録出願・出願の日の認定等に関する規定 

商標登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に必要な書面を添付して特許庁長官に提出しなければならない。
一 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 商標登録を受けようとする商標
三 指定商品又は指定役務並びに第六条第二項の政令で定める商品及び役務の区分
2 次に掲げる商標について商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならない。
一 商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであつて、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標
二 立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる商標(前号に掲げるものを除く。)
三 色彩のみからなる商標(第一号に掲げるものを除く。)
四 音からなる商標
五 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める商標
3 商標登録を受けようとする商標について、特許庁長官の指定する文字(以下「標準文字」という。)のみによつて商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならない。
4 経済産業省令で定める商標について商標登録を受けようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載し、又は経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない。

5 前項の記載及び物件は、商標登録を受けようとする商標を特定するものでなければならない。
6 商標登録を受けようとする商標を記載した部分のうち商標登録を受けようとする商標を記載する欄の色彩と同一の色彩である部分は、その商標の一部でないものとみなす。ただし、色彩を付すべき範囲を明らかにしてその欄の色彩と同一の色彩を付すべき旨を表示した部分については、この限りでない。

商標法第五条第四項(同法第六十八条第一項において準用する場合を含む。以下同じ。)の経済産業省令で定める商標は、次のとおりとする。
一 動き商標
二 ホログラム商標
三 色彩のみからなる商標
四 音商標
五 位置商標
2 商標法第五条第四項の記載又は添付は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるところにより行うものとする。
一 動き商標 商標の詳細な説明の記載
二 ホログラム商標 商標の詳細な説明の記載
三 色彩のみからなる商標 商標の詳細な説明の記載
四 音商標 商標の詳細な説明の記載(商標登録を受けようとする商標を特定するために必要がある場合に限る。)及び商標法第五条第四項の経済産業省令で定める物件の添付
五 位置商標 商標の詳細な説明の記載
3 商標法第五条第四項の経済産業省令で定める物件は、商標登録を受けようとする商標を特許庁長官が定める方式に従つて記録した一の光ディスクとする。
4 前項に掲げる物件であつて、商標法第六十八条の十第一項に規定する国際商標登録出願(以下「国際商標登録出願」という。)に係るものを提出する場合は、様式第九の二によりしなければならない

特許庁長官は、商標登録出願が次の各号の一に該当する場合を除き、商標登録出願に係る願書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。
一 商標登録を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二 商標登録出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が商標登録出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三 願書に商標登録を受けようとする商標の記載がないとき。
四 指定商品又は指定役務の記載がないとき。
2 特許庁長官は、商標登録出願が前項各号の一に該当するときは、商標登録を受けようとする者に対し、相当の期間を指定して、商標登録出願について補完をすべきことを命じなければならない。
3 商標登録出願について補完をするには、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。
4 特許庁長官は、第二項の規定により商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が同項の規定により指定された期間内にその補完をしたときは、手続補完書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。
5 特許庁長官は、第二項の規定により商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が同項の規定により指定された期間内にその補完をしないときは、当該商標登録出願を却下することができる。

〇出願日の認定できない4要件(商標5条の2第1項)
以下のいずれかに該当しない場合、商標登録出願日を認定しなければならない。
●●●
●●●
●●●
●●●

(一商標一出願)第六条 

商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、商標ごとにしなければならない。
2 前項の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従つてしなければならない。
3 前項の商品及び役務の区分は、商品又は役務の類似の範囲を定めるものではない。

(団体商標)第七条 

一般社団法人その他の社団(法人格を有しないもの及び会社を除く。)若しくは事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く。)又はこれらに相当する外国の法人は、その構成員に使用をさせる商標について、団体商標の商標登録を受けることができる。
2 前項の場合における第三条第一項の規定の適用については、同項中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。
3 第一項の規定により団体商標の商標登録を受けようとする者は、第五条第一項の商標登録出願において、商標登録出願人が第一項に規定する法人であることを証明する書面を特許庁長官に提出しなければならない。

主体要件

主体要件はけっこう厳しい

一般社団法人その他の社団(法人格を有しないもの及び会社を除く。) 
 ⇒ その他の社団の例
・商工会議所法に基づく商工会議所
・商工会法に基づく商工会
・特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)

事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く。)
 ⇒ その他の特別の法律により設立された組合の例
・農業協同組合法により設立された農業協同組合 等

③ 上記①及び②に相当する外国の法人
 ⇒ 欧州諸国のぶどう酒組合 等

団体商標の商標登録を受けることができない者の例

財団法人
財団法人は、財産の集団(財産自体がその実体)であり、業として商品の生産や役務の提供等をする事業者を構成員として有していないことから、団体商標の商標登録を受けることができない。

株式会社
株式会社の構成員に当たる株主は、株式に相当する出資義務を負うだけの者であることからすれば、その株主が商品・役務の生産・提供等をする事業者であって、しかも、会社がその株主の事業について自己の商標を使用させるとは考え難いことから、団体商標の商標登録を受けることができない。

フランチャイズチェーン
フランチャイズチェーンは、フランチャイザーとフランチャイジーの間の事業契約により成立するものであって、団体とその構成員の関係にあるものではなく、団体商標の商標登録を受けることができない。

(例題)
団体が団体商標の商標登録を受けるためには「その構成員に使用させる商標」でなくてはならないので、その団体だけが使用する商標は登録できない。

(答え)〇

(団体商標に係る商標権の移転)第二十四条の三 

団体商標に係る商標権が移転されたときは、次項に規定する場合を除き、その商標権は、通常の商標権に変更されたものとみなす。
 団体商標に係る商標権を団体商標に係る商標権として移転しようとするときは、その旨を記載した書面及び第七条第三項に規定する書面を移転の登録の申請と同時に特許庁長官に提出しなければならない。

(団体構成員等の権利)第三十一条の二 

団体商標に係る商標権を有する第七条第一項に規定する法人の構成員(以下「団体構成員」という。)又は地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(以下「地域団体構成員」という。)は、当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。ただし、その商標権(団体商標に係る商標権に限る。)について専用使用権が設定されたときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

 団体構成員は、当該団体の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。したがって、個別に使用許諾契約を結ぶ必要はない。

2 前項本文の権利は、移転することができない。

団体構成員の権利は、相続その他の一般承継の場合を含め、移転できない。

3 団体構成員又は地域団体構成員は、第二十四条の四、第二十九条、第五十条、第五十二条の二、第五十三条及び第七十三条の規定の適用については、通常使用権者とみなす。

 24条の4(混同防止表示請求)
 29条(他人の特許権等との関係)
 50条(不使用取消審判)
 52条の2、53条(不正使用取消審判)
 73条(商標登録表示)

4 団体商標又は地域団体商標に係る登録商標についての第三十三条第一項第三号の規定の適用については、同号中「又はその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者」とあるのは、「若しくはその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者又はその商標の使用をする権利を有する団体構成員若しくは地域団体構成員」とする。

(地域団体商標)第七条の二 

〔趣旨〕
本条は、平成一七年の一部改正において新設されたものであり、地域団体商標の商標登録を受けるための要件を規定したものである。
地域団体商標制度は、地域の産品等についての事業者の信用の維持を図り、地域ブランドの保護による我が国の産業競争力の強化と地域経済の活性化を目的として、いわゆる「地域ブランド」として用いられることが多い地域の名称及び商品(役務)の名称等からなる文字商標について、登録要件を緩和するものである。
平成一七年の一部改正前においては、地域の名称と商品(役務)の名称等からなる文字商標については、事業者が広く使用を欲する商標であり一事業者による独占に馴染まない、一般的に使用をされるものであり自他商品(自他役務)の識別力を認めることができないといった理由から、三条一項各号に該当するとして登録が認められず、登録を受けるためには使用により識別力を取得して三条二項の要件を満たす必要があった。三条二項は、どの範囲の需要者にどの程度認識されている必要があるかについては規定していないが、実務上は、全国的な範囲の需要者に高い浸透度をもって認識されていることが必要とされている。このため、事業者の商標が全国的に相当程度知られるようになるまでの間は他人の便乗使用を排除できず、また、他人により使用されることによって事業者の商標としての識別力の獲得がますます困難になるという問題があった。
一方、地域の名称や商品(役務)名を含む商標であっても、特徴のある図形が付加された商標については、当該図形部分において自己の商品(役務)を他人の商品(役務)から識別することができるため、商標全体として識別力を有するものとして三条一項に該当せず、他の登録要件を満たす限り、商標登録を受けることができる。しかしながら、このような図形入りの商標については、他人が文字部分は同一であっても図形部分が異なる商標を使用した場合には、原則としてこれらの商標が類似とは認められないことから、他人による文字部分の便乗使用を有効に排除できないという問題があった。
こうしたことから、地域団体商標制度においては、地域の名称と商品(役務)の名称等からなる文字商標について、三条二項よりも登録要件を緩和し、三条二項の適用にあたり実務上要求される商標の認識範囲及び程度よりも範囲が狭くまた程度が低い場合であっても商標登録を受けられるようにしている

工業所有権法逐条解説

事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除き、当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)、商工会、商工会議所若しくは特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人又はこれらに相当する外国の法人(以下「組合等」という。)は、その構成員に使用をさせる商標であつて、次の各号のいずれかに該当するものについて、その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、第三条の規定(同条第一項第一号(普通名称)又は第二号慣用商標に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。

主体要件

① 事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合 
法人格を有しないものは除かれる。 「加入自由の定め」があるものに限られる。
(例)以下の条文に「加入自由の定め」が規定されている。
(ア)中小企業等協同組合法 第14条
(イ)農業協同組合法 第20条
(ウ)酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律 第10条
② 商工会
③ 商工会議所
④ 特定非営利活動法人
⑤ 上記①から④に相当する外国の法人

一 地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
二 地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
三 地域の名称及び自己若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務の普通名称又はこれらを表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字並びに商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字として慣用されている文字であつて、普通に用いられる方法で表示するもののみからなる商標

(例題1)正誤問題
地域の名称のみからなる商標又は地域の名称と図形を組み合わせてなる商標は、地域団体商標として登録を受けることができない。

(答え)〇

(例題2)正誤問題
「○○メロン」(「○○」は地域の名称)の文字からなる商標について、指定商品中に「メロンジュース」を含む地域団体商標の商標登録出願は、地域団体商標の商標登録を受けることはできない。

(答え)〇

〇「慣用名称」
工芸品における「」(陶器、磁器)、「」(織物)、「」(漆器、塗物)
食品における「」(牛肉)、「」(豚肉)、「」(漬物)
温泉浴場施設の提供における「温泉
中華料理を主とする飲食物の提供について、「中華街

〇「慣用されている文字」
該当するもの:「本場」、「特産」、「名産」、「名物」など ← 土地・由来を意味する
該当しないもの:「特選」、「元祖」、「本家」、「特級」、「高級」

2 前項において「地域の名称」とは、自己若しくはその構成員が商標登録出願前から当該出願に係る商標の使用をしている商品の産地若しくは役務の提供の場所その他これらに準ずる程度に当該商品若しくは当該役務と密接な関連性を有すると認められる地域の名称又はその略称をいう。
3 第一項の場合における第三条第一項(第一号及び第二号に係る部分に限る。)の規定の適用については、同項中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。

4 第一項の規定により地域団体商標の商標登録を受けようとする者は、第五条第一項の商標登録出願において、①商標登録出願人が組合等であることを証明する書面及び②その商標登録出願に係る商標が第二項に規定する地域の名称を含むものであることを証明するため必要な書類を特許庁長官に提出しなければならない。

4 商標法第24条の2第4項

4 地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない。

一般承継の場合には移転が可能。

商標法第30条第1項

(専用使用権)
第三十条 商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権及び地域団体商標に係る商標権については、この限りでない。

商標法第31条の2

(団体構成員等の権利)
第三十一条の二 団体商標に係る商標権を有する第七条第一項に規定する法人の構成員(以下「団体構成員」という。)又は地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(以下「地域団体構成員」という。)は、当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。ただし、その商標権(団体商標に係る商標権に限る。)について専用使用権が設定されたときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
2 前項本文の権利は、移転することができない。
3 団体構成員又は地域団体構成員は、第二十四条の四、第二十九条、第五十条、第五十二条の二、第五十三条及び第七十三条の規定の適用については、通常使用権者とみなす。
4 団体商標又は地域団体商標に係る登録商標についての第三十三条第一項第三号の規定の適用については、同号中「又はその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者」とあるのは、「若しくはその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者又はその商標の使用をする権利を有する団体構成員若しくは地域団体構成員」とする

(先願)第八条 

同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に二以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。
2 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について同日に二以上の商標登録出願があつたときは、商標登録出願人の協議により定めた一の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。
3 商標登録出願が放棄され取り下げられ若しくは却下されたとき、又は商標登録出願について査定若しくは審決が確定したときは、その商標登録出願は、前二項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。
4 特許庁長官は、第二項の場合は、相当の期間を指定して、同項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を商標登録出願人に命じなければならない。
5 第二項の協議が成立せず、又は前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。

(例題)
甲の商標登録出願に係る商標イと乙の商標登録出願に係る商標ロとは、どちらも周知又は著名ではなく、かつ、互いに類似し、指定商品も類似する。この場合に、ロについての出願がイについての出願より先の日に行われた場合、ロの商標登録がされた場合、甲の商標登録出願は第8条第1項(先願主義)の規定に違反するとして拒絶される。

(答え)× 拒絶理由ではない

(出願時の特例)第九条 

政府等が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するものに、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会に、又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国のいずれにも該当しない国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するものに出品した商品又は出展した役務について使用をした商標について、その商標の使用をした商品を出品した者又は役務を出展した者がその出品又は出展の日から六月以内にその商品又は役務を指定商品又は指定役務として商標登録出願をしたときは、その商標登録出願は、その出品又は出展の時にしたものとみなす。
2 商標登録出願に係る商標について前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を商標登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、その商標登録出願に係る商標及び商品又は役務が同項に規定する商標及び商品又は役務であることを証明する書面(次項及び第四項において「証明書」という。)を商標登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
3 証明書を提出する者が前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、その証明書を特許庁長官に提出することができる。
4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により、前項の規定により証明書を提出することができる期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

(パリ条約の例による優先権主張)第九条の二 

パリ条約の同盟国でされた商標(第二条第一項第二号に規定する商標に相当するものに限る。)の登録の出願に基づく優先権は、同項第一号に規定する商標に相当する商標の登録の出願に基づく優先権についてパリ条約第四条に定める例により、これを主張することができる。

第九条の三 

次の表の上欄に掲げる者が同表の下欄に掲げる国においてした出願に基づく優先権は、パリ条約第四条の規定の例により、商標登録出願について、これを主張することができる。
日本国民又はパリ条約の同盟国の国民(パリ条約第三条の規定により同盟国の国民とみなされる者を含む。)
世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国
世界貿易機関の加盟国の国民(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書一C第一条3に規定する加盟国の国民をいう。)又は商標法条約の締約国の国民
パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国

(指定商品等又は商標登録を受けようとする商標の補正と要旨変更)第九条の四 

願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものと商標権の設定の登録があつた後に認められたときは、その商標登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。

(商標登録出願の分割)第十条 

商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合であつて、かつ、当該商標登録出願について第七十六条第二項の規定により納付すべき手数料を納付している場合に限り、二以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。

分割と同時の補正

分割を行う場合、元の出願から分割した商品を削除する補正が必要となるが、出願を補正することができるのは審査、審判、再審係属中(68条の40)。条文だけを見れば、「 拒絶をすべき旨の審決に対する訴え」が係属している間は、出願の分割はできるけれども、68条の40の補正はできないということになる。 ⇒そこで、分割と同時の補正は、単に分割の体裁を整えるために必要な訂正であるので、商標法上の補正の時期の制限規定の制約を受けることなく、商標法施行規則第22条第2項で準用する特許法施行規則第30条に基づき、補正ができるものと解されている。

親出願の出願手数料の納付

親出願の出願手数料を納付していることを要件とし、親出願の出願手数料を納付していない場合には分割出願の出願日の遡及効を認めないこととしている。 

2 前項の場合は、新たな商標登録出願は、もとの商標登録出願の時にしたものとみなす。ただし、第九条第二項並びに第十三条第一項において準用する特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十三条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、この限りでない。

(例題)
甲が、「ビール,清涼飲料」を指定商品とする商標イについて商標登録出願Aをし、その出願の日から6月を経過した後、乙が、「ビール」を指定商品とするイに類似する商標ロについて商標登録出願Bをした。その後、甲が、Aの一部につき、商標法第10条(商標登録出願の分割)の規定により適法に「ビール」を指定商品とする新たな商標登録出願Cをしたとき、Cは、Bに係るロが商標登録されているときは、そのことを理由として、拒絶される場合がある。

(答え)×

3 第一項に規定する新たな商標登録出願をする場合には、もとの商標登録出願について提出された書面又は書類であつて、新たな商標登録出願について第九条第二項又は第十三条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十三条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな商標登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

以下の手続については、新たな商標登録出願は現実の出願日に出願されたものとされ、新たな商標登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされる。
・ 出願時の特例(9条2項)
・ 優先権主張書面及び優先権証明書の提出(準用する特許法43条1項、2項)

以下の手続については、新たな商標登録出願は現実の出願日に出願されたものとされ、新たな商標登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされる。
・ 出願時の特例(9条2項)
・ 優先権主張書面及び優先権証明書の提出(準用する特許法43条1項、2項)

eAccess事件(最高裁平成16年(行ヒ)第4号)

【判示事項】 
商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に分割出願がされもとの商標登録出願について指定商品等を削除する補正がされたときにおける補正の効果が生ずる時期
【要旨】
商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,分割出願がされ,もとの商標登録出願について指定商品等を削除する補正がされたときには,その補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはない。

eAccess事件(最高裁平成16年(行ヒ)第4号)

(出願の変更)第十一条 

商標登録出願人は、団体商標の商標登録出願を通常の商標登録出願(団体商標の商標登録出願及び地域団体商標の商標登録出願以外の商標登録出願をいう。以下同じ。)又は地域団体商標の商標登録出願に変更することができる。
2 商標登録出願人は、地域団体商標の商標登録出願を通常の商標登録出願又は団体商標の商標登録出願に変更することができる。
3 商標登録出願人は、通常の商標登録出願を団体商標の商標登録出願又は地域団体商標の商標登録出願に変更することができる。
4 前三項の規定による商標登録出願の変更は、商標登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。
5 第一項から第三項までの規定による商標登録出願の変更があつたときは、もとの商標登録出願は、取り下げたものとみなす。
6 前条第二項及び第三項の規定は、第一項から第三項までの規定による商標登録出願の変更の場合に準用する。
第十二条 防護標章登録出願人は、その防護標章登録出願を商標登録出願に変更することができる。
2 前項の規定による出願の変更は、防護標章登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。
3 第十条第二項及び第三項並びに前条第五項の規定は、第一項の規定による出願の変更の場合に準用する。

(出願公開)第十二条の二 

特許庁長官は、商標登録出願があつたときは、出願公開をしなければならない。
2 出願公開は、次に掲げる事項を商標公報に掲載することにより行う。ただし、第三号及び第四号に掲げる事項については、当該事項を商標公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。
一 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 商標登録出願の番号及び年月日
 願書に記載した商標(第五条第三項に規定する場合にあつては標準文字により現したもの。以下同じ。)
 指定商品又は指定役務
五 前各号に掲げるもののほか、必要な事項

(特許法の準用)第十三条 

特許法第四十三条第一項から第四項まで及び第七項から第九項まで並びに第四十三条の三第二項及び第三項の規定は、商標登録出願に準用する。この場合において、同法第四十三条第一項中「経済産業省令で定める期間内」とあるのは「商標登録出願と同時」と、同条第二項中「明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面」とあるのは「商標登録を受けようとする商標及び指定商品又は指定役務を記載したもの」と、「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月」とあるのは「商標登録出願の日から三月」と、同条第七項中「前項の規定による通知を受けた者は」とあるのは「第二項に規定する書類を提出する者は、同項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出することができないときは、その期間が経過した後であつても」と、「第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面」とあるのは「経済産業省令で定めるところにより、同項に規定する書類」と、同条第八項中「第六項の規定による通知を受けた者」とあるのは「第二項に規定する書類を提出する者」と、「第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面」とあるのは「第二項に規定する書類」と、「その書類又は書面」とあるのは「その書類」と、同条第九項中「第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面」とあるのは「第二項に規定する書類」と、同法第四十三条の三第二項中「又は世界貿易機関の加盟国」とあるのは「、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国」と、「若しくは世界貿易機関の加盟国の国民」とあるのは「、世界貿易機関の加盟国の国民若しくは商標法条約の締約国の国民」と、同条第三項中「前二条」とあるのは「第四十三条」と、「前二項」とあるのは「前項」と読み替えるものとする。
2 特許法第三十三条第一項から第三項まで及び第三十四条第四項から第七項まで(特許を受ける権利)の規定は、商標登録出願により生じた権利に準用する。

商標登録出願人<防護標章登録出願人含む>は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。

2 前項の規定による請求権は、商標権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない。

3 第一項の規定による請求権の行使は、商標権の行使を妨げない。
4 商標登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第四十三条の三第二項の取消決定が確定したとき、又は第四十六条の二第一項ただし書の場合を除き商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。
5 第二十七条、第三十七条、第三十九条において準用する特許法第百四条の三第一項及び第二項、第百五条、第百五条の二の十一、第百五条の四から第百五条の六まで及び第百六条、第五十六条第一項において準用する同法第百六十八条第三項から第六項まで並びに民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条及び第七百二十四条(不法行為)の規定は、第一項の規定による請求権を行使する場合に準用する。この場合において、当該請求権を有する者が商標権の設定の登録前に当該商標登録出願に係る商標の使用の事実及びその使用をした者を知つたときは、同条第一号中「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「商標権の設定の登録の日」と読み替えるものとする。

概要│金銭的請求権
商標登録出願から商標権の設定登録までの間に、出願人以外の者が出願に係る商標を使用することにより出願人に生じた業務上の損失を補填するために認められる権利。請求できるのは使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭であり、ライセンス料相当額(使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭)ではない。(特許法の補償金請求権はライセンス料相当額)

〇金銭的請求権の発生要件。

 ① 商標登録出願後、出願に係る内容を記載した書面を提示して警告していること
 ② 警告後、商標権の設定登録前に出願に係る指定商品・役務について商標の使用をしていること
 ③ 当該使用により業務上の損失が生じていること

☆補償金請求権との相違点

出願公開されていることが要件となっていない。
 → 出願公開による損失の填補を目的とした権利ではないため。

相手方が悪意で使用していても警告は必須。
 → 金銭的請求権により請求できるのは業務上の損失に相当する額であることから、損失が発生していることを出願人が認識した上で初めて請求するものであり、また、金銭的請求権の行使が不意打ちとなるのを防ぐため。

損失が発生していなければ警告をしても金銭的請求権は生じない。
 → 発明などの創作物とは異なり、商標は選択物であって、それ自体に価値があるとはされず、商標の価値は商標に化体した業務上の信用であるため。

(例題)正誤問題
商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、当該商標登録出願に係る商標の無断使用に対して、金銭的請求権を行使できるが、その無断使用者が商標登録出願に係る商標であることを知っている場合は、商標登録出願人による警告は不要である。

(答え)×

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