【知財部の話】食品特許のざっくりイメージ

知財部の話

特許といえば発明、発明といえば機械のイメージってないでしょうか?
新しい家電に「特許取得の技術」などと書かれていれば、この機械はこの会社しか作れないんだなとなんとなくわかります。

私は前職は食品機械や農業機械を作っている会社の知財部に勤め、現在は食品や化粧品を作っているメーカーの知財部で日々クリアランス調査をメインに仕事をしているのですが、食品分野と機械分野では特許の捉え方がだいぶ違うなと感じることがあります。そこで、食品分野における特許の捉え方を私なりにまとめました。

特許の活用方法とは?

はじめに特許の活用方法として、大きく以下の2つの視点があると考えています。

●買ってもらうため活用
消費者の購買意欲を高めるための活用

●市場を守る・広げるための活用
他社に作らせない、自社しかできないための活用

1.販促(製造方法)活用のための特許

食品分野での特許活用として、製造方法の特許を販促に活用する、というものがあります。

例えば、明治は以下のようなニュースリリースを出しています。

もっと!新鮮な生乳のおいしさ、そのまま「明治おいしい牛乳」シリーズがこの春もっとおいしくなります!製法特許取得!
2018/03/14

発売から17年目を迎える「明治おいしい牛乳」は、“生乳へのこだわり”、“当社独自の「ナチュラルテイスト製法」”、“社内専門パネルによる出荷前検査”、により「新鮮な生乳のおいしさ」をご家庭までお届けするというコンセプトのもと、多くのお客さまにご愛飲いただいております。「ナチュラルテイスト製法」は、「新鮮な生乳のおいしさ」をお届けするために生まれた当社独自の製法で、殺菌前に、生乳に含まれる溶存酸素を低減することで、酸化による風味変化を抑え、新鮮な生乳の「自然でさわやかな香り」、「ほのかな甘み」、「まろやかなコクはそのままに、すっきりとした後味」を実現しました。今回、従来の殺菌前に加え、生乳を当社工場へ受け入れた後すぐに溶存酸素を低減することで、より酸化しにくくし、おいしさをさらに進化させました。

中略

当社独自の「ナチュラルテイスト製法」では、新鮮な生乳本来の、自然でさわやかな香りや、ほのかな甘み、まろやかなコクはそのままに、すっきりとした後味を実現。一般的な牛乳に比べ、新鮮なミルクの香りや口あたりの良さが向上しています。発売から17年目を迎え、今回、その「おいしさ」をより向上させるために、「ナチュラルテイスト製法」を進化させました。従来、殺菌前にだけ実施していた脱酸素工程を、生乳を受け入れた後の貯乳時にも実施することで、従来のナチュラルテイスト製法と比べ「新鮮なミルクの香り」「すっきりとした後味」でさらに高い評価を獲得しています。(新たに特許取得:特許第5008081号、特許第5259850号)

https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2018/20180314_02.html

これは買ってもらうための活用の側面が強いと思います。

2.販促(訴求)での活用

二つ目は訴求についての特許です。
これはヤクルト1000が分かりやすいかと思います。一時期、ヤクルト1000を飲むとよく眠れるという話がありましたよね。

企業HPのヤクルト1000の商品ページを見てみましょう。

Yakult(ヤクルト)1000
生きて腸内まで到達する「乳酸菌 シロタ株」がヤクルト史上最高密度※の1本(100ml)に1000億個入った、乳製品乳酸菌飲料。
機能性表示食品で、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能があります。
※1ml当たり10億個の「乳酸菌 シロタ株」が含まれており、これはヤクルト類で最高密度です。

https://www.yakult.co.jp/products/item0345.html

特許番号の記載はなかったですが、例えば、以下の特許などがヤクルト1000に当てはまります。

特許6279714

【請求項1】
ラクトバチルス・カゼイの菌体及び/又はその処理物を有効成分とする睡眠の質改善剤であって、入眠潜時短縮剤、日中覚醒困難改善剤及び中途覚醒数減少剤から選ばれる1種以上である睡眠の質改善剤。
【請求項2】
ラクトバチルス・カゼイが、ラクトバチルス・カゼイ YIT9029(FERM BP-1366)である請求項1記載の睡眠の質改善剤。
請求項3以下省略

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2015-146844/CA054731CA63245307DD2E995BF6AE987D47D19A60418433CF50FAAADA1396F4/19/ja

こちらは買ってもらうための活用、市場を守る・広げるための活用の両方の側面があるように思います。

3.市場を守るための活用

最後に、「他社に作らせない」ための特許です。いわゆる、特定の配合(レシピ)の特許で、自社でしか作れない商品を作る、というものです。

例えば、ハウスウェルネスフーズの以下の特許などです。

特許6871466号
【請求項1】
49.44重量%以上の水、5重量%〜20重量%の油脂及び0.1重量%〜5重量%のサイクロデキストリン、ならびに、5重量%〜30重量%のトレハロース及び1重量%〜30重量%のデキストリンを含むアイスクリーム様乳化組成物。

具体的にどの商品に使用されているかまではわかりませんでした。

上のように、レシピとして特許を取得すれば、他社は同じレシピを使用できません。
これは市場を守る・広げるための活用の側面が強いと思います。

まとめ

食品特許はあまり情報が多くなく、イメージ自体持ちにくいような気がします。この記事をきっかけに食品の特許に興味を持ってもらえれば幸いです。

なお、私個人の考えですので、この考え方が正しいとは限らない点、ご理解ください。
また、食品特許に詳しい先生方などがご覧になられていれば、補足やコメントなどいただければ幸いです。

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