商品で見る特許の第4弾です。
特許を見ることで、その企業の強みであったり、どのような研究に力を入れているかなどが見えてきます。
普段意識することはあまりないですが、私たちが目にする商品には特許がありふれています。
そんな特許を見ていこう、という企画です。
今回は、”紅麴”に関する特許から、どのような企業が紅麴の開発をしているのかをみていこうと思います。
紅麴の特許
ざっと紅麴に関する特許の出願人を調べてみたところ、グンゼ株式会社と小林製薬株式会社の出願数がダントツで多いことが分かりました。
データの個数:出願人/権利者 | 出願人/権利者 | |
出願日 | グンゼ株式会社 | 小林製薬株式会社 |
1986 | 1 | |
1987 | 3 | |
1988 | 3 | |
1989 | 4 | |
1992 | 3 | |
1993 | 1 | |
1996 | 1 | |
1998 | 3 | |
1999 | 2 | |
2000 | 2 | |
2002 | 2 | |
2004 | 3 | |
2005 | 1 | |
2006 | 4 | |
2007 | 2 | |
2008 | 4 | |
2009 | 1 | |
2010 | 1 | |
2011 | 1 | |
2018 | 6 | |
2019 | 2 | |
2020 | 1 | |
2021 | 2 | |
2022 | 5 | |
2023 | 2 | |
2024 | 1 | |
総計 | 42 | 19 |
この紅麴という素材、2011年まではグンゼ株式会社が定期的に出願していましたが、ぱったり途絶えています。その後、2018年ごろから小林製薬の出願が急増しています。
紅麴に関する研究はグンゼから小林製薬に
この時期になんらかの動きがあったのかを調べてみたところ、グンゼから小林製薬に、紅麴に関する事業が移転されていました。
小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、2016年6月に紅麹事業をグンゼ株式会社から譲り受け、伝統的発酵法により製造した紅麹を用いて、BtoB事業、機能性の研究、新製品開発に取り組んでおります。今回、国内唯一の固体発酵法により生産される紅麹の発酵過程における形態・色、機能性成分、色素成分等の変化を世界で初めて解明し、2018年6月30日に福岡市で開催された「発酵と酵素の機能食品研究会 第3回 定期大会」において発表いたしました。
https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2018/180717_02/
また、グンゼ株式会社が取得した紅麴に関する特許が、小林製薬に移転していることも確認できました。「紅麴」については、小林製薬が市場を独占しているといえそうです。
企業HPにも、詳細な説明がなされています。
独り言:直近の紅麴に関する出願について
本記事をまとめるにあたり小林製薬の直近の紅麴に関する出願を見てみましたが、かなり攻めた内容で権利化を狙っている心証です。
たとえば、特願2023-171672を見てみます。
特願2023-171672
【請求項1】
(A)2重量%以上の紅麹及び/又はその加工物と、(B)ヒドロキシプロピルメチルセルロースとを含有する、固形製剤(但し、紅麹以外の麹を含むものを除く)。
なかなか広い範囲で出願をしています。本特許の内容としては、紅麴とヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を配合した固形製剤は変色しにくい、といった内容です。
ただ、本願明細書で具体的に確認されているのは、 紅麹が90重量%、HPMCが10重量%含有されている場合と (実施例1-1)、紅麹が50重量%、HPMCが50重量%含 有されている場合(実施例1-2)の2つの場合のみなんですよね。案の定、2023/12/5の拒絶理由通知では、新規性・進歩性に加え、サポート用件違反が指摘されています。
それに対する補正は以下です。
【請求項1】
(A)2重量%以上の紅麹及び/又はその加工物と、(B)ヒドロキシプロピルメチル セルロースとを含有し、 前記紅麹及び/又はその加工物が、乾燥紅麹、乾燥紅麹の粉末物、又は乾燥紅麹の細粒 物である、固形製剤(但し、紅麹以外の麹を含むものを除く)。
※下線は2024/3/1の補正
濃度は絞ってないんですよね。意見書では実験成績証明書を提出したうえでサポート用件違反について反論しています。
恥ずかしながら、意見書内で実験成績証明書を提出した反論を見るのが初めてです。今後、審査官がどのように判断するのか気になっています。
正直な感想として、拒絶理由の指摘に沿う形で、HPMCの濃度を絞って特許査定を狙う方針ではだめだったのかが気になります。現時点ではまだ攻めれるという判断なのか、どうしても濃度限定をせずにとりたい事情があるのか・・・。
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