特許法│補正│ポイントのまとめ

弁理士試験
2021年度知的財産権制度入門テキスト | 特許庁 より

第十七条(手続の補正) 

手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書、第四十一条第四項若しくは第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正若しくは訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。
2 第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人は、前項本文の規定にかかわらず、同条第一項の外国語書面及び外国語要約書面について補正をすることができない。
3 特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。
一 手続が第七条第一項から第三項まで又は第九条の規定に違反しているとき。
二 手続がこの法律又はこの法律に基づく命令で定める方式に違反しているとき。
三 手続について第百九十五条第一項から第三項までの規定により納付すべき手数料を納付しないとき。
4 手続の補正(手数料の納付を除く。)をするには、次条第二項に規定する場合を除き、手続補正書を提出しなければならない。

〇外国語書面を補正できる場合はない(17条2項)
外国語書面出願の場合、外国語書面の翻訳文が願書に添付して提出した明細書等とみなされるため(36条の2第8項)、外国語書面を補正する意味がない。

第十七条の二(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正) 

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
2 第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人が、誤訳の訂正を目的として、前項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない。
3 第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第八項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)。第三十四条の二第一項及び第三十四条の三第一項において同じ。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
4 前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。
5 前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 第三十六条第五項に規定する請求項の削除
二 特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
三 誤記の訂正
四 明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
6 第百二十六条第七項の規定は、前項第二号の場合に準用する。

特許・実用新案審査基準
条文拒絶理由異議理由無効理由
17条の2第3項違反(新規事項追加の補正(外国語書面出願の場合を除く))
17条の2第3項違反(外国語書面出願において手続補正書で誤訳訂正を行った場合)××
17条の2第4項違反(シフト補正)××

〇17条の2第3項から第6項の要件が課せられる条件
3項 ⇒ 常に(誤訳訂正書による補正を除く)
4項 ⇒ 拒絶理由通知を受けた後の補正(17条1項各号の補正)
5項 ⇒ 1項1号(50条の2の通知がある場合)、3号、4号の補正 
6項 ⇒ 17条の2第5項第2号の補正(特許請求の範囲の限定的減縮)

出願人は、出願から特許査定の送達前までの時期に、明細書等について補正をすることができる。但し、50条の通知(拒絶理由通知)を受けると、その後の補正の時期は拒絶理由通知において指定された期間内等に制限される。 
出願人は、実体的要件を満たす範囲で、明細書等について補正をすることができる(第17条の2第3項から第6項まで)。実体的要件は、補正をする時期に応じて定められていて、明細書等について補正をすることができる範囲は、審査が進行するにつれて次第に制限される。

趣旨

平成五年の一部改正前は、出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前は、拒絶理由通知の回数に関わらず、その応答期間内であれば、明細書又は図面の要旨を変更しない範囲で特許請求の範囲についても自由に補正することが認められていた(旧四一条)が、この規定の下においては、
⑴特許請求の範囲についての補正が何回も行われると、その都度審査を行うことが必要とされるため、●●●をもたらす一因となっていたこと
⑵補正を何回も行う出願と補正を行わない出願との間において、出願の取扱いの●●●が十分確保されていなかったのみならず、主要国と比べても特異な規定となっていたこと
等の問題点を有していた。
このため、平成五年の一部改正においては、
⑴第一回目の拒絶理由通知に対する補正については、特許請求の範囲の補正についても●●●を追加する補正を認めないこととするのみで、自由な補正を認めることとすること
⑵第二回目以降の拒絶理由通知に対する特許請求の範囲の補正については、既に行われた審査の結果を有効に活用できる範囲のものとすることにより、制度の●●●●●●及び●●●が図られることとなった。

工業所有権法逐条解説 21版

〇補正が可能な期間
一 「最初の拒絶理由通知」の指定期間内。審判(159条)、再審(174条)、前置審査(163条)において拒絶理由が通知された場合も同様に補正ができることを規定している。
二 文献公知発明に係る情報の記載についての通知
三 「最後の拒絶理由通知」の指定期間内
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき

新規事項追加の禁止についての規定(17条の2第3項)
誤訳訂正書[/memorizer]を提出してする場合を除き、新規事項を追加してはいけない。この規定に違反する補正を行った場合、特許出願が拒絶されるか(49条1号)、補正が却下される(53条1項)。

☆「最初に添付した明細書等に記載した範囲」に注意
下記のような補正も可能。

〇シフト補正禁止についての規定 (17条の2第4項)
この規定に違反する補正を行った場合、特許出願が拒絶されるか(49条1号)、補正が却下される(53条1項)。

補正目的の制限についての規定 (17条の2第5項)

〇補正が制限される要件 (17条の2第5項)
①最後の拒絶理由通知の指定期間内
②審判請求時の特許請求の範囲の補正
③50条の2の規定による通知を受けた場合

①・②は先行技術文献調査の結果等を有効利用できる範囲内に制限している。
③は分割出願制度の濫用抑制の観点から制限している。

〇制限された補正の目的
一 ●●●
二 ●●●
三 ●●●
四 ●●●

〇補正が制限された状態で、補正要件違反がある補正をした場合の規定(53条)
①最後の拒絶理由通知の指定期間内
②審判請求時の特許請求の範囲の補正
③50条の2の規定による通知を受けた場合
上記①~③の時期にした補正が、17条の2第5項に挙げる補正要件に違反している場合、補正が却下される。

〇第 17 条の 2 第 5 項の規定に違反する補正は、無効理由ではない
新規事項を追加するものとは異なり、発明の内容に関して実体的な不備をもたらすものではないから、無効理由とはされていない。

独立特許要件に関する規定(17条の2第6項)

〇最後の拒絶理由通知後の独立特許要件(17条の2第6項)
最後の拒絶理由通知を受け、特許請求の範囲の減縮を目的とした補正を行う場合、その補正における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。’

〇特許請求の範囲の減縮を目的とした補正が独立特許要件を満たさない場合
17条の2第5項第2号の補正を行うのは、17条の2第1項1号(50条の2の通知がある場合)、3号、4号の補正の場合のみ。これらの場合、補正要件違反があると補正が却下される(特許法第53条)。補正が却下されると、補正前の状態の書類を出してきたことになるので、拒絶査定をうてる。

外国語書面出願について補正を行う場合の規定

2 第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人は、前項本文の規定にかかわらず、同条第一項の外国語書面及び外国語要約書面について補正をすることができない。

2 第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人が、誤訳の訂正を目的として、前項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない。
3 第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第八項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)。第三十四条の二第一項及び第三十四条の三第一項において同じ。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。

〇外国語書面・外国語要約書面は補正できない(17条2項)
外国語書面(原文)の補正は例外なくできない(17条2項)。外国語書面の場合、その翻訳文が願書に添付した明細書等とみなされる(36条の2第8項)ので、原文を補正する意味がない。

〇外国語書面出願における補正の仕方
外国語書面出願について補正を行う場合、①手続補正書による補正と、②誤訳訂正書による補正のどちらを選択するかによって、新規事項に関する補正要件が決まる。外国語書面自身の補正は例外なくできない(17条2項)。外国語書面出願を手続補正書にて補正する場合、「過去に翻訳した事項の範囲で補正できる」。

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