補正目的の制限┃17条の2第5項第2号

特許法

特許法第17条の2第5項

5 前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 第三十六条第五項に規定する請求項の削除
二 特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
三 誤記の訂正
四 明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)

特許請求の範囲の限定的減縮についての判断

以下、特許庁が公開している審査基準より抜粋引用する。

2.1 特許請求の範囲の限定的減縮(第 17 条の 2 第 5 項第 2 号)

審査官は、補正が第 17 条の 2 第 5 項第 2 号の限定的減縮を目的とするものであるか否かを、以下の(i)から(iii)までの要件が全て満たされているか否かで判断する。
(i) 補正が特許請求の範囲を減縮するものであること(2.1.1 参照)。
(ii) 補正が補正前の請求項に記載された発明(以下この部において「補正前発明」という。)の発明を特定するために必要な事項(以下この部において「発明特定事項」という。)を限定するものであること(2.1.2 参照)。
(iii) 補正前発明と補正後の請求項に記載された発明(以下この部において「補正後発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること(2.1.3 参照)。

2.1.1 補正が特許請求の範囲を減縮するものであること

(1) 特許請求の範囲を減縮する補正に該当しない具体例

以下(i)~(iii)の場合は特許請求の範囲を減縮する補正には該当しないため、最後の拒絶理由通知を受けた後に以下の補正をすると、特許法53条の規定により補正が却下される。

(i) 直列的に記載された発明特定事項の一部を削除する補正

拒絶理由の通知を最初に受けた際、この拒絶理由の通知で指定された期間内に、特許請求の範囲について、発明特定事項イ及びロを追加して減縮する補正をした。これに対し、発明特定事項イを追加する補正が特許法第 17 条の2第3項の要件(いわゆる新規事項の追加の禁止)を満たしていないとして最後の拒絶理由通知を受けた。特許請求の範囲について、この最後の拒絶理由通知で指定された期間内にした発明特定事項イを削除する補正。

弁理士短答試験R2特実17


(ii) 択一的記載の要素を付加する補正
(iii) 請求項数を増加する補正(以下の(2)(v)又は(vi)に該当する補正を除く。)

(2) 特許請求の範囲を減縮する補正に該当する具体例

(i) 択一的記載の要素を削除する補正
(ii) 発明特定事項を直列的に付加する補正

拒絶理由の通知を最初に受けた際、この拒絶理由の通知で指定された期間内に、特許請求の範囲について、発明特定事項イ及びロを追加して減縮する補正。

弁理士短答試験R2特実17


(iii) 上位概念から下位概念へ変更する補正
(iv) 多数項引用形式請求項の引用請求項を減少させる補正

例 :「A 機構を有する請求項 1 から請求項 3 のいずれか 1 項に記載のエアコン装置」を「A 機構を有する請求項 1 又は請求項 2 に記載のエアコン装置」とする補正

(v) n 項引用形式請求項を n-1 以下の請求項に変更する補正

例 :「A 機構を有する請求項 1 から請求項 3 のいずれか 1 項に記載のエアコン装置」という三つの請求項を引用する形式の請求項を「A 機構を有する請求項 1 記載のエアコン装置」と「A 機構を有する請求項 2 記載のエアコン装置」の二つの請求項に変更する補正

(vi) 発明特定事項が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更する補正

2.1.2 補正が補正前発明の発明特定事項を限定するものであること

(1) 「発明特定事項」の認定

審査官は、発明特定事項を、請求項の記載に基づき、明細書及び図面の記載を考慮して、その作用(働きや役割)と対応して把握する。

(2) 「限定する」の解釈

発明特定事項を「限定する」補正とは、以下の(i)又は(ii)の補正をいう。
(i) 補正前の請求項における発明特定事項の一つ以上を、概念的に、より下位の発明特定事項とする補正
(注) 作用で物を特定しようとする記載を用いた発明特定事項(機能実現手段等)に対し、その作用とは別個の作用を有する発明特定事項は、通常、概念的に下位のものとは認められない。
(ii) マーカッシュクレーム等、発明特定事項が選択肢として表現されている請求項においては、その選択肢の一部を削除する補正

(3) 判断手法

審査官は、補正が発明特定事項を限定するものであるか否かを、補正前発明と補正後発明のそれぞれの発明特定事項を把握し、両者を対比することにより判断する。

2.1.3 補正前発明と補正後発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること

(1) 「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」の認定

審査官は、発明の「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」を、発明の詳細な説明中の発明の属する技術分野及び課題についての記載を考慮しつつ、請求項の記載から把握した発明特定事項に基づいて、具体的に特定する。なお、発明の課題は、未解決のものである必要はない。

(2) 「同一である」の解釈

補正前後の発明の産業上の利用分野が「同一である」とは、以下の(i)又は(ii)の場合をいう。
(i) 補正前後の発明の属する技術分野が一致する場合
(ii) 補正前後の発明の属する技術分野が技術的に密接に関連する場合
補正前後の発明の解決しようとする課題が「同一である」とは、以下の(i)又は(ii)の場合をいう。
(i) 補正前後の発明の解決しようとする課題が一致する場合
(ii) 補正前後の発明の解決しようとする課題が技術的に密接に関連する場合
例えば、「補正前後の発明の解決しようとする課題が技術的に密接に関連する場合」とは、以下の(i)、(ii)等の場合をいうものとする。
(i) 補正後発明の解決しようとする課題が補正前発明の解決しようとする課題をより概念的に下位にしたものである場合(例えば、「強度向上」と「引っ張り強度向上」)
(ii) 補正前後の発明の解決しようとする課題が同種のものである場合(例えば、「コンパクト化」と「軽量化」)

(3) 判断手法

審査官は、補正前後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるか否かを、補正前発明と補正後発明のそれぞれの産業上の利用分野及び解決しようとする課題を把握し、両者を対比することにより判断する。
なお、第 36 条第 4 項第 1 号の委任省令要件についての判断に係る運用では、以下の(i)、(ii)等の発明のように、もともと解決しようとする課題が想定されていないと認められる場合には、課題の記載は求めないこととされている(「第 II 部第 1 章第 2 節 委任省令要件」の 2.(1)b(c)参照)。この場合に
は、課題の同一性を問わないこととする。
(i) 従来の技術と全く異なる新規な発想に基づき開発された発明
(ii) 試行錯誤の結果の発見に基づく発明

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