条文と逐条解説については、上記ページにてまとめた。しかし弁理士短答試験では、50条の2の具体事例が出題される頻度が非常に高い。そこで、短答・論文試験を意識してポイントをまとめた。
なお、本ページは、 改訂6版 解説 特許法 (現代産業選書 知的財産実務シリーズ) および、特許・実用新案審査基準をもとに作成した。
50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)
●●●は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。
趣旨
従来は、特許出願の審査において既に拒絶理由が通知されている発明をそのまま分割出願し、同じ拒絶理由の通知を受けても、最初の拒絶理由通知に際して可能な補正をすることが認められていた(44条1項)。
改訂6版 解説 特許法 (現代産業選書 知的財産実務シリーズ) を参考に作成
しかし、●●●を目的として、或いは●●●ことを期待して、拒絶理由通知の内容や特許請求の範囲の記載を十分に精査せず、同じ発明を繰り返し分割するといった分割出願制度の乱用がなされ、審査が遅延する原因となっていた。
そこで、分割出願について、原出願についてすでになされた拒絶理由通知で示された拒絶理由と同じであれば、本条の通知を併せて行い、最後の拒絶理由通知がされた場合と同様の補正制限が課すことで、審査の迅速化を図ることとした。
第 50 条の 2 の通知をするか否かの判断の要件
審査官は、拒絶理由を通知しようとする特許出願(以下この節において「本願」という。)に対して、他の特許出願に通知された拒絶理由に基づいて、第 50 条の 2 の通知をするか否かを、以下の(要件 1)から(要件 3)までが全て満たされているか否かで判断する。
(要件 1) 本願と他の特許出願とが第 44 条第 2 項の規定により同時にされたこととなっていること
(特許出願の分割)第四十四条
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。
4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であつて、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。
第 44 条第 2 項の規定が適用されるためには、特許出願の分割の実体的要件(44条1項)が満たされている必要がある。したがって、審査官は、本願及び他の特許出願のうち分割出願として出願されたものが特許出願の分割の実体的要件を満たすことで、本願と他の特許出願とが同時にされたこととなっているか否かについても確認する。
(i) 本願が、他の特許出願に基づく分割出願群の一の特許出願である場合
(ii) 他の特許出願が、本願に基づく分割出願群の一の特許出願である場合
(iii) 本願及び他の特許出願が、いずれも同じ特許出願に基づく分割出願群の一の特許出願である場合
(要件 2) 本願の拒絶理由が、他の特許出願の拒絶理由通知に係る拒絶理由と同一であること
本願の拒絶理由が、他の特許出願の拒絶理由通知に係る拒絶理由と同一であるとは、本願と他の特許出願の拒絶理由の根拠となる条文が同一であって、具体的な内容が実質的に同一であることをいう。
具体的には、審査官は、(要件 2)が満たされているか否かを、次のように判断する。本願の明細書等が他の特許出願の拒絶理由通知に対する補正後の明細書等であると仮定した場合に、本願の明細書等が他の特許出願の拒絶理由通知に係る拒絶理由を解消したか否かで判断する。審査官は、拒絶理由が解消されていないと判断した場合は、(要件 2)が満たされていると判断する。
(要件 3) 当該他の特許出願の拒絶理由通知が、本願の出願審査の請求前に本願の出願人が知り得る状態にあったこと
審査官は、(要件 3)が満たされているか否かを、当該他の特許出願の拒絶理由通知が以下の(i)又は(ii)に該当するか否かで判断する。
(i) 本願の出願審査の請求前に、本願の出願人の下に到達した拒絶理由通知
(ii) 本願の出願審査の請求前に、本願の出願人が閲覧することができた拒絶理由通知(注)
査定
審査の結果、特許査定または拒絶査定がなされる。
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