商標法┃総則┃ポイントのまとめ

商標法


1〈立体的形状〉三次元の物の形状をいう。なお、四項一号において単に「形状」の語を使用したのは、二次元の平面的な物の形状と三次元の物の形状の双方を含ませるためであり、三条一項三号、二六条一項二号、三号の規定において用いられている「形状」も同様の解釈である。
2〈色彩〉白及び黒もここにいう色彩のうちに入る。
3〈商品〉商取引の目的たり得るべき物、特に動産をいう。
4〈役務〉他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいう。
5〈証明〉ここで「証明」というのは、主として商品の品質又は役務の質を保証するような場合である。
6〈包装〉容器を含む。しかし、実際に商品を包むのに用いられていない包装用紙等は含まれない。
7〈引渡し〉「引渡し」は一般的に三つの意味をもつ。第一は広く物又は人についての支配を移転すること、第二は占有を移転すること、第三は物のうえの現実の支配を移転することである。現行法では第三の意味で使っている。
8〈広告〉旧法の看板、引札を含む。さらに街頭のネオンサイン、飛行機が空に描いたもの、テレビによる広告、カレンダー等も含まれる。
9〈取引書類〉注文書、納品書、送り状、出荷案内書、物品領収書、カタログ等である。
10〈商品に標章を付したもの〉商品が電子情報財の場合は、それ自体無体物であるため商標を物理的に付着させることはできない。この場合の「付する」とは、商標の電磁的な情報が当該プログラム起動時や作業時のインターフェースに顧客が商標として視認できるよう、商標の電磁的な情報を組み込む行為をいう。
コンピュータプログラムのコードデータ又はメタタグ等に、商標と同一又は類似の文字列を含むコード等を埋め込むことも標章を付する行為と観念的には捉えることが可能であるが、これらは通常の用途でプログラムを利用する者には視認されることはない。このため、コードデータ等に組み込まれた商標が視覚的に商標の出所表示機能を果たし
ていない場合には、商標としての使用から排除されることが多いと考えられる。
11〈電気通信回線を通じて提供する行為〉「電気通信回線」は、有線であるか無線であるかを問わない。光ファイバによる通信網も含まれる。「電気通信回線を通じて提供する行為」には、物理的な記録媒体を用いる提供ではなく、電気通信回線を利用して電子情報財を需要者に実際に送信して利用させること(プログラム等のダウンロード、電子メールでの送信等)が含まれる。なお、CD―ROM等に記録して販売する流通行為は、従来どおり「譲渡」「引渡し」に含まれると解釈される。
12〈電磁的方法〉「電気通信回線を通じて」の用語では一方向にしか情報を送信できない放送が基本的には除かれるため、放送も含み得る広い概念として「電磁的方法」の用語を用いた。
13〈その映像面に標章を表示して役務を提供する行為〉商標の使用行為として、モニター、ディスプレイ等の「映像面」に商標を表示してサービスを提供する行為である。「その映像面」と規定したのは、サービス提供時の映像面と密接なつながりのある画面において商標が表示される必要があることを特定するためである。なお、「映像面」は事業者のものか顧客のものかを特定していないため、事業者のモニターを通じてサービス提供がされる場合も当号に含まれる。
14〈これらを内容とする情報〉広告、価格表又は取引書類を内容とする情報であり、ちらし広告や契約書等と同様の機能を期待される情報のことである。具体的にはホームページ上のバナー広告、自己のホームページの出所を示す広告、オンライン取引や双方向デジタルテレビ放送における契約フォーム等が挙げられる。
工業所有権法逐条解説21版

この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の●●●を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて●●●を保護することを目的とする。

商標法は、特許法、実用新案法及び意匠法と異なり、「産業の発達」以外に、「需要者の利益を保護」することも目的としている。

〔趣旨│商標法1条〕
本条は、商標法の目的を掲げたものである。平成三年の一部改正において●●●登録制度を導入したことにより、商標法の保護を受ける商標は、●●●の双方となった。商標を使用する者は商品や役務の提供に係る物品等に一定の商標を●●●することによって●●●を獲得するものであるが、この信用は有形の財産と同様に●●●を有する。全く同様の質を有する商品又は役務が、それに使用される商標の相違によってその市場価格を異にしていることは通常みられる現象である。したがって、商品の製造業者若しくは販売業者又は役務の提供者は絶えず自己の商品又は役務に使用される商標に対し、細心の注意を払い、不正な競業者が自己の商標と紛らわしい商標を使用して自己の商品又は役務と混同を生ぜしめるような行為を排除しようとする。そのような不正な競業者の不正な行為に対する法規として不正競争防止法(平成五年法律第四七号)及び商標法が存在するのである。商標を使用する者の業務上の信用を維持するという目的は、不正競争防止法も商標法も共通のものであるが、商標法が商標権を設定するという国家の行政処分を媒介としている点が不正競争防止法と異なるところである。「商標を保護することにより」とは、右の趣旨をあらわしているということができる。
また、商標を保護することは、一定の商標を使用した商品又は役務は必ず一定の出所から提供されるということを確保することになる。消費者等の側からみて、過去において一定の商標を付した商品を購入し、又は役務の提供を受けて満足した場合、当該商標を付した商品又は提供を受けた役務が出所の異なったものであったというのではその利益を害することになる。
したがって、一定の商標を使用した商品又は役務は一定の出所から提供されるという取引秩序を維持することは、消費者等の利を保護することになると同時に、商品及び役務の取引秩序の維持ということを通じて産業の発達にも貢献することとなるのである。

青本1条参照

商標に該当し得るもの(2条)

この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
2 前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。
3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号及び第二十六条第三項第三号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為
十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為
4 前項において、商品その他の物に標章を付することには、次の各号に掲げる各標章については、それぞれ当該各号に掲げることが含まれるものとする。
一 文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合の標章 商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすること。
二 音の標章 商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告に記録媒体が取り付けられている場合(商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告自体が記録媒体である場合を含む。)において、当該記録媒体に標章を記録すること。
5 この法律で「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいう。
6 この法律において、商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする。

〇商標に該当し得るもの
(① 文字② 図形③ 記号④ 立体的形状 ⑤ 色彩 )またはこれらの結合、⑥ 音 ⑦ 動き商標⑧ ホログラム商標⑨ 位置商標  
※現行法上「におい」は、商標の構成要素になり得ない。

・音と動きが結合したものは、商標法上の商標には該当しない
テレビCMにおいて、コマーシャルソングのリズムに合わせてキャラクターの図形が踊るものについては、音と動きが結合した一つの商標として、商標法上の商標に該当しない。(参考:R2商標3)

商標の類型

〇商品商標
業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をする商標(2条1項1号)

〇役務商標
業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(商品商標を除く。)(2条1項2号)。

〇商標法上商品に該当しないもの 

・それ自体が商取引の目的となっていないもの
有価証券,無料配布するノベルティ、など

・動産ではないもの
※「土地・建物の管理、土地・建物の売買の代理又は媒介」は、役務の提供に該当する。

・ダウンロードできない電子出版物
ダウンロードできない電子出版物の提供は、役務に該当する。一方、ダウンロード可能であれば商品に該当する。

・料理店の店内で消費される料理
持ち帰り用に包装されたものは商品になるが、店内で消費される場合、「飲食物の提供」という役務に該当する。

(例題)正誤問題
商品は流通性のあるものでなくてはならず、その場で消費される、料理店が提供する料理は、商標法上の商品ではない。

(答え)〇

〇有体物でもなく電子情報財でもないもの

 例)特許権などの知的財産権、電気、熱

役務とは

 商標法上、定義されてないが、役務とは「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」と解されている。

〇小売等役務の解釈(審査基準)
(1) 小売等役務とは、小売又は卸売の業務において行われる総合的なサービス活動(商品の品揃え、陳列、接客サービス等といった最終的に商品の販売により収益をあげるもの)をいうものとする。
(2) 小売等役務には、小売業の消費者に対する商品の販売行為、卸売業の小売商人に対する商品の販売行為は含まれないものとする。

標章の「使用」の規定

3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。

①商品商標の使用については1号・2号に、②役務商標の使用については3号から7号に、③商品・役務商標のどちらにも該当する使用行為については8号から10号にそれぞれ規定。

商品商標の使用の規定(商標法第2条第3項第1号、第2号)

一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

〇商品又は商品の包装に標章を付する行為
・商品自体に標章を焼印する行為も含む。
立体的な標章を商品自体の形状とする行為も含む(2条4項1号)。
・音の標章を記録媒体に記録することが含む(2条4項2号)。

(例題)
2 立体的形状からなる標章については、これを商品自体の形状として当該商品を生産することは商品に標章を付する行為として商標法上の使用に該当し、これを広告用の店頭人形自体の形状として当該店頭人形を作成する行為は、広告に標章を付する行為となるため、商標法上の使用に該当する。

(答え)×

役務商標の使用の規定(商標法第2条第3項第3号から第7号)

三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為

例)レストランが、飲食提供用の食器類に標章を付する行為

四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為

例)ホテルが、宿泊客が利用できるように室内に標章を付したバスローブを置いてホテルのサービスを提供する行為

五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為

例)喫茶店が自己の標章を付したコーヒーサイフォンを客席から見えるカウンター上に置いて役務を提供する行為

六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為

例)クリーニング店が、クリーニング後の顧客の被服類に自己の標章を表示したタグを付す行為

(例題)正誤問題
和菓子店が、自ら製造した饅頭に自己の標章を焼印で付する行為は、和菓子の小売の業務において行われる役務についての標章の使用に該当しない。

(答え)〇

七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号及び第二十六条第三項第三号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為

例)通信講座において、顧客のパソコンの画面に標章を表示させ知識の教授を行う行為

商標法第2条第3項第8号から第10号

八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為
十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為

標章の使用に該当しない例

〇標章の使用に該当しない行為
会社の商号の略称について商標登録を受けている場合に、その会社自体の宣伝のために、自社の商品や役務が記載されていない封筒にその登録商標を表示する行為。(R1商標2)

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