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マドリッド協定議定書の概要
1.経緯
商標の国際的な登録制度としては、1891年4月に制定されたマドリッド協定があるが、未加盟国から、使用言語、審査期間、本国登録の従属性などその締結を困難にさせる問題点があることが指摘されていた。マドリッド協定議定書は、このような問題点を克服し、より多くの国が参加できるような商標の国際登録制度を確立することを目的に、マドリッド協定とは独立した条約として、1989年6月に採択された。この議定書は、1995年12月に発効し、翌1996年4月から制度運営が開始されている。
2.制度の骨子
締約国の官庁に商標出願をし又は商標登録がされた名義人は、その出願又は登録を基礎に、保護を求める締約国を指定し、本国官庁を通じて国際事務局に国際出願をし、国際登録を受けることにより、指定国官庁が12か月(又は、各国の宣言により18か月)以内に拒絶の通報をしない限り、その指定国において商標の保護を確保することができる。
・本国での基礎出願or登録が必要であり、ダイレクトに国際出願をするPCTとは違う。
3.商標の保護の具体的な内容
国際登録された商標は、指定国において、次の保護を受けることができる。
(1)国際登録日から、指定国の官庁に直接出願されていた場合と同一の効果。
(2)指定国の官庁が、拒絶の通報期間(12か月又は18か月)に拒絶する旨の通報をしない場合には同期間の経過時、又は後に拒絶する旨の通報を撤回した場合はその撤回時に、国際登録日から、その商標がその指定国の官庁に登録されていた場合と同一の効果。
(3)国際登録の存続期間は、国際登録日から10年(その後更新可能)。
4.主な手続の概略
(1)国際出願及び使用言語
商標の国際出願をする場合には、本国官庁を通じて、国際事務局に願書を提出する。国際出願の言語は、本国官庁の定めるところにより、英語、フランス語又はスペイン語のいずれかの言語。
(2)国際事務局による国際登録
国際事務局は、国際出願の方式審査をした後、国際登録簿に商標を国際登録する。国際登録された商標は、国際事務局により国際公表される。
(3)国際事務局による指定国官庁への通報
国際事務局は、国際登録後、その旨各指定国の官庁に対して通報する。
(4)指定国官庁による拒絶の通報
指定国の官庁は、その指定国において国際登録に係る商標の保護を拒絶する場合には、上記(3)の通報の日から12か月又は18か月以内にその旨国際事務局へ通報します。
(5)セントラルアタック(国際登録の基礎出願・登録への従属性)
国際登録の日から5年の期間が満了する前に本国における基礎出願が拒絶又は基礎登録が無効若しくは取り消しなどとなった場合には、国際登録も取り消されます。その際、国際登録の名義人であった者は、救済措置として各指定国において国際登録を国内出願へ変更することができる。
(6)更新
国際登録の存続期間は国際登録日から10年です。国際登録の存続期間は更新することができます。指定国ごとに更新申請をする必要はない。
(7)料金
一の通貨(スイスフラン)による料金支払いだけで、国際出願及び国際登録を更新することができます。
5.マドリッド協定議定書を利用した場合のメリット
(1)一度の手続で複数国に権利取得が可能
日本からの外国出願のうち、約1/3がマドリッド協定議定書の締約国へのものとなっている。
マドリッド協定議定書 | 従来の手続 |
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(2)複数の商標権の管理が容易化
複数の商標権の存続期間の更新が、国際事務局に対する一回の手続で可能となるため、個別の権利についての期間管理が不要。
(3)コストの低廉化が可能
各国ごとに料金の支払手続が不要となる(国際出願時に納付。)。
→マドリッド協定議定書への加入により、以上のような効果がもたらされ、
- 1)我が国企業の国際的経済活動に伴う高コストの改善
- 2)我が国企業の保有する商標権の複数国への権利保護の拡大 が期待される。
マドリッド議定書
第1条 マドリッド同盟の構成国
この議定書を締結した国(以下「国である締約国」という。)は、1967年にストックホルムで改正され及び1979年に修正された標章の国際登録に関するマドリッド協定(以下「マドリッド協定(ストックホルム改正協定)」という。)の当事国であるかどうかを問わず、同協定の当事国で構成する同盟の構成国であるものとし、また、この議定書を締結した第14条(1)(b)に規定する政府間機関(以下「締約国際機関」という。)は、当該同盟の構成国であるものとみなす。この議定書においては、国である締約国及び締約国際機関を「締約国」と総称する。
第2条 国際登録による保護の確保
(1) 標章について、いずれかの締約国の官庁に標章登録出願をした場合又はいずれかの締約国の官庁の登録簿に標章登録がされた場合には、当該標章登録出願(以下「基礎出願」という。)又は当該標章登録(以下「基礎登録」という。)の名義人は、この議定書の規定に従うことを条件として、世界知的所有権機関(以下「機関」という。)の国際事務局(以下「国際事務局」という。)の登録簿(以下「国際登録簿」という。)への標章登録(以下「国際登録」という。)を受けることにより、当該標章の保護をすべての締約国の領域において確保することができる。ただし、次の条件を満たす場合に限る。
(i) 国である締約国の官庁に基礎出願をし又は基礎登録がされた場合には、当該基礎出願又は当該基礎登録の名義人が、当該国である締約国の国民であるか又は当該国である締約国に住所若しくは現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有していること。
(ii) 締約国際機関の官庁に基礎出願をし又は基礎登録がされた場合には、当該基礎出願又は当該基礎登録の名義人が、当該締約国際機関の構成国の国民であるか又は当該締約国際機関の領域内に住所若しくは現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有していること。
(2) 国際登録の出願(以下「国際出願」という。)は、基礎出願を受理し又は基礎登録をした官庁(以下「本国官庁」という。)を通じ、国際事務局に対して行う。
(3) この議定書において「官庁」又は「締約国の官庁」というときは、締約国のために標章登録を担当する官庁をいうものとし、「標章」というときは、商標及びサービス・マークをいうものとする
(4) この議定書の適用上、「締約国の領域」とは、国である締約国についてはその領域、締約国際機関についてはその締約国際機関を設立する条約が適用される領域をいう。
第3条 国際出願
(1) この議定書に基づくすべての国際出願は、規則に定める様式の願書によって行う。本国官庁は、国際出願の願書の記載事項が基礎出願又は基礎登録の記載事項と一致している旨を証明する。この場合の基礎出願又は基礎登録の記載事項は、本国官庁による証明の時点におけるものとする。更に、本国官庁は、次の事項を当該願書に記載する。
(i)基礎出願については当該基礎出願の日及び番号
(ii)基礎登録については当該基礎登録の日及び番号並びに当該基礎登録の出願の日及び番号本国官庁は、また、自己が国際出願を受理した日を当該願書に記載する。
(2) 出願人は、保護を受けようとする標章に係る商品及びサービスを指定しなければならず、可能な場合には、標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定に規定する国際分類に従って1又は2以上の類を指定する。出願人が類を指定しなかった場合には、国際事務局が指定された商品及びサービスについて当該国際分類中の適当な類を指定する。出願人が指定した類は、国際事務局が本国官庁と協力して行う調整に服するものとする。本国官庁と国際事務局との間で意見の相違がある場合には、国際事務局の意見が優先する。
(3) 出願人は、標章の識別性のある特徴として色彩を主張する場合には、次の(i)及び(ii)の規定に従って国際出願をしなければならない。
(i)色彩を主張する旨を記載し、かつ、主張する色彩又はその組合せを国際出願に際して明示的に特定する。
(ii)当該標章の色彩を施した写しを国際出願に際して提出する。この写しは、国際事務局による通報に添付される。この写しの必要数は、規則で定める
(4) 国際事務局は、前条の規定に従って出願された標章を直ちに登録する。本国官庁が国際出願を受理した日から2箇月の期間内に国際事務局が国際出願を受理したときは、当該本国官庁が国際出願を受理した日を国際登録の日とし、当該2箇月の期間の満了後に国際事務局が国際出願を受理したときは、国際事務局が国際出願を受理した日を国際登録の日とする。国際事務局は、関係官庁に対し国際登録を遅滞なく通報する。国際登録簿に登録された標章は、国際出願の記載事項に基づき、国際事務局が定期的に発行する公報に掲載する。
(5) 国際登録簿に登録された標章の公表のため、官庁は、第10条に規定する総会(以下「総会」という。)で定める条件に従い、(4)の公報を無料で一定の部数ずつ及び割引価格で一定の部数ずつ国際事務局から受領する。当該標章は、このような方法によりすべての締約国との関係において十分に公表されたものとみなし、かつ、その国際登録の名義人が他の方法による公表を求められることはないものとする。
第3条の2 領域的効果
国際登録による標章の保護の効果は、国際出願の出願人又は国際登録の名義人がいずれかの締約国を指定した場合においてのみ当該いずれかの締約国に及ぶものとする。ただし、その官庁が本国官庁に当たる締約国については、そのような指定を行うことができない。
PCTの国際出願とは異なり、本国官庁は指定することができない。
第3条の3 領域指定
(1) 国際出願に際しては、国際登録による標章の保護の効果が及ぶ領域としていずれの締約国を指定するかを特に記載する
(2) 領域指定は、標章の国際登録の後においても行うことができる。この領域指定は、規則に定める様式に従って行う。国際事務局は、領域指定を直ちに記録し、当該領域指定を関係官庁に対し遅滞なく通報する。記録された領域指定は、国際事務局が定期的に発行する公報に掲載する。領域指定は、当該領域指定が国際登録簿に記録された日から効力を生じ、当該領域指定に係る国際登録の存続期間の満了によりその効力を失う
〇防護標章との混同に注意
防護標章は、防護標章が登録されて10年間の保護期間だが、マドプロは、国債登録簿に記録された日から10年(基礎出願の期間に従う)。
第4条 国際登録の効果
(1)(a) 第3条及び前条の規定に従って行われた標章の国際登録又は領域指定の記録の日から、当該標章は、関係締約国において、標章登録を当該関係締約国の官庁に直接求めていたならば与えられたであろう保護と同一の保護を与えられるものとする。第5条(1)及び(2)の規定に基づく拒絶の通報が国際事務局に対して行われなかった場合又はそのような拒絶の通報がその後に取り消された場合には、標章の国際登録又は領域指定の記録の日から、当該標章は、関係締約国において、当該関係締約国の官庁による登録を受けていたならば与えられたであろう保護と同一の保護を与えられるものとする。
(b) 第3条に規定する商品及びサービスについての類の指定は、標章に与える保護の範囲を決定するに際して締約国を拘束するものではない。
(2) すべての国際登録について、その名義人は、工業所有権の保護に関するパリ条約第4条Dに定める手続に従うことを要することなく、同条に定める優先権を有する。
第4条の2 国際登録による国内登録又は広域登録の代替
(1) いずれかの締約国の官庁による国内登録又は広域登録の対象である標章が国際登録の対象でもあり、かつ、その名義人が国際登録の名義人と同一である場合には、当該国際登録は、当該国内登録又は広域登録により生ずるすべての権利を害することなく、かつ、次の(i)から(iii)までの条件を満たすことを条件として、当該国内登録又は広域登録に代替することができるものとみなす。
(i) 国際登録による標章の保護の効果が第3条の3(1)又は(2)の規定に基づいて当該締約国に及んでいること
(ii) 国内登録又は広域登録において指定されたすべての商品及びサービスが当該締約国に係る国際登録においても指定されていること。
(iii) (i)に規定する効果が国内登録又は広域登録の日の後に生じていること
(2) (1)に規定する官庁は、求めに応じ、自己の登録簿に国際登録について記載しなければならない。
第5条 特定の締約国に係る国際登録の効果の拒絶及び無効
- (1) 第3条の3(1)又は(2)の規定に基づき国際登録による標章の保護について国際事務局から領域指定の通報を受けた締約国の官庁は、関係法令が認める場合には、当該締約国においては当該標章に対する保護を与えることができない旨を拒絶の通報において宣言する権利を有する。このような拒絶は、当該拒絶の通報を行う官庁に直接求められた標章登録について工業所有権の保護に関するパリ条約上援用可能な理由に基づく場合にのみ行うことができる。もっとも、一定数以上の類又は一定数以上の商品若しくはサービスを指定する標章登録が関係法令上認められないという理由のみによっては、保護の拒絶は、部分的な拒絶であってもこれを行うことができない。
- (2)(a) (1)の権利を行使しようとする官庁は、関係法令に定める期間内に、かつ、国際事務局が(1)に規定する領域指定の通報を当該官庁に行った日から、(b)及び(c)に規定する場合を除くほか、遅くとも1年の期間が満了する前に、国際事務局に対し、すべての拒絶の理由を記載した文書と共に拒絶の通報を行う。
(b) (a)の規定にかかわらず、締約国は、この議定書に従って行われた国際登録については、(a)に規定する1年の期間を18箇月の期間とする旨を宣言することができる。
(c) (b)の宣言には、保護の拒絶が当該保護を与えることに対する異議の申立ての結果行われる可能性がある場合には、締約国の官庁から国際事務局に対する当該拒絶の通報が18箇月の期間の満了後においても行われることがある旨を明示することができる。当該官庁は、いずれの国際登録についても、次の(i)及び(ii)の条件を満たす場合にのみ、18箇月の期間の満了後に保護の拒絶を通報することができる。
(i) 18箇月の期間の満了後に異議が申し立てられる可能性のあることを当該期間の満了前に国際事務局に通報していること。
(ii) 異議の申立てに基づく拒絶の通報を異議申立期間の満了の時から1箇月以内で、かつ、いかなる場合においても、当該異議申立期間の開始の日から7箇月以内に行うこと。
(d) (b)又は(c)の規定に基づく宣言は、第14条(2)に規定する批准書、受諾書、承認書又は加入書において行うことができるものとし、その効力は、当該宣言を行った国又は政府間機関についてこの議定書が効力を生ずる日に生ずる。また、この宣言は、その後においても行うことができるものとし、この場合に当該宣言は、その効力が生ずる日以降の日を国際登録の日とする国際登録について、機関の事務局長(以下「事務局長」という。)が当該宣言を受領した後3箇月で又は当該宣言において指定されたそれ以降の日に効力を生ずる。
(e) 総会は、この議定書の効力発生から10年を経過したときは、(a)から(d)までの規定により設けられた制度の運用状況を調査する。これらの規定は、その後において、総会の全会一致の決定により修正することができる(注)。
注 マドリッド同盟総会により採択された解釈声明
この議定書の第5条(2)(e)は、(a)から(d)までの規定により設けられた制度の運用状況について引き続き検討を行うことを総会に認めるものと了解し、また、これらの規定の修正には、総会の全会一致の決定を必要するものと了解する - (3) 国際事務局は、国際登録の名義人に拒絶の通報の写し1通を遅滞なく送付する。当該名義人は、拒絶の通報を行った官庁に標章登録を自ら直接求めていたならば与えられたであろう救済手段を与えられる。国際事務局は、(2)(c)(i)の規定に基づく通報を受領した場合には、国際登録の名義人に当該通報を遅滞なく送付する。
- (4) 標章の保護を拒絶する理由は、求めに応じ、すべての利害関係者に対して国際事務局が通報する。
- (5) いずれかの国際登録について、(1)及び(2)の規定に従い暫定的又は最終的な拒絶の通報を国際事務局に対して行わなかった官庁は、当該国際登録につき(1)に定める権利を主張する利益を失う。
- (6) 締約国の領域における国際登録の効果に関するその締約国の権限のある当局による無効の決定は、当該国際登録の名義人に自己の権利を防御する機会を適時に与えることなく行うことができない。無効の決定については、国際事務局に通報する。
第5条の2 標章における特定の要素の使用の正当性に関する証拠書類
紋章、盾形、肖像、尊称、称号、商号、出願人以外の者の氏名又は名称その他これらに類する表示等特定の要素を使用して標章を構成することについての正当性に関する証拠書類であって締約国の官庁が要求するものは、本国官庁による認証及び証明を除くほか、いかなる認証及び証明も免除される
第5条の3 国際登録簿における記載事項の写し,先行する標章についての調査及び国際登録薄の抄本
- (1) 国際事務局は、すべての申請者に対し、規則に定める手数料の支払を受けて、特定の標章についての国際登録簿における記載事項の写しを交付する。
- (2) 国際事務局は、費用の支払を受けて、ある標章に先行する標章が国際登録の対象である標章中にあるかどうかを調査することができる。
- (3) 1の締約国における提出のために請求された国際登録簿の抄本は、いかなる追加的な認証も免除される。
第6条 国際登録の存続期間並びに国際登録の従属性及び独立性
- (1) 国際事務局における標章登録の存続期間は、10年とし、及び次条に定める条件に従って更新することができる。
- (2) 国際登録は、当該国際登録の日から5年の期間が満了したときは、(3)及び(4)に規定する場合を除くほか、基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録から独立した標章登録を構成するものとする。
- (3) 国際登録による標章の保護については、当該国際登録が移転の対象となったかどうかを問わず、その国際登録の日から5年の期間が満了する前に、基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ、消滅し、放棄され又は、確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され若しくは無効とされた場合には、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部について主張することができない。当該5年の期間の満了前に次の(i)、(ii)又は(iii)の手続が開始され、当該5年の期間の満了後に基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され、無効とされ又は取下げを命ぜられた場合においても、同様とする。 また、当該5年の期間の満了後に基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ又は放棄された場合であって、当該基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録がその取下げ又は放棄の時に次の(i)、(ii)又は(iii)の手続の対象であり、かつ、当該手続が当該5年の期間の満了前に開始された場合においても、同様とする。
- (i) 基礎出願の効果を否認する決定に対する不服の申立て
- (ii) 基礎出願の取下げを求める申立て又は基礎出願による登録若しくは基礎登録の抹消、取消し若しくは無効を求める申立て
- (iii) 基礎出願に対する異議の申立て
- (4) 本国官庁は、規則の定めるところにより、国際事務局に対し(3)の規定に関連する事実及び決定を通報するものとし、国際事務局は、規則の定めるところにより、当該事実及び決定を利害関係者に通報し、かつ、これを公表する。本国官庁は、該当する範囲について国際登録の取消しを国際事務局に請求するものとし、国際事務局は、当該範囲について国際登録を取り消す。
第7条 国際登録の更新
- (1) 国際登録の存続期間は、次条(2)に規定する基本手数料並びに、同条(7)に規定する場合を除くほか、同条(2)に規定する追加手数料及び付加手数料の支払のみにより、10年の当該存続期間の満了の時から更に10年間の更新を行うことができる。
- (2) 存続期間の更新は、国際登録の最新の態様にいかなる変更ももたらすものではない。
- (3) 国際事務局は、国際登録の名義人及びその代理人がある場合には当該代理人に対し、国際登録の存続期間が満了する6箇月前に非公式の通報を行うことにより、当該存続期間が満了する正確な日付について注意を喚起する。
- (4) 規則に定める割増手数料の支払により、6箇月の猶予期間が国際登録の存続期間の更新について認められる。
第8条 国際出願及び国際登録の手数料
- (1) 本国官庁は、国際出願又は国際登録の更新について、それぞれの出願人又は名義人に対し自己の裁量により定める手数料の支払を求め、かつ、当該手数料を自己の収入として徴収することができる。
- (2) 国際事務局における標章登録を受けるに当たっては、(7)(a)に規定する場合を除くほか、次の国際手数料を前払しなければならない。
- (i) 基本手数料
- (ii) 標章を使用する商品又はサービスの属する国際分類の類の数が3を超える場合における一類ごとについての追加手数料
- (iii) 第3条の3の規定に基づく領域指定についての付加手数料
- (3) (2)(ii)に規定する追加手数料については、商品又はサービスの類の数が国際事務局によって決定され又は争われた場合には、規則に定める期間内に支払うことができる。ただし、このことは、国際登録の日の日付を変更するものではない。当該期間の満了の時に、出願人が追加手数料を支払っていない場合又は指定される商品若しくはサービスの指定を必要な範囲にまで減縮していない場合には、国際出願は、放棄されたものとみなす。
- (4) 国際登録による各種の収入((2)(ii)及び(iii)に規定する手数料の収入を除く。)の年間の総額は、この議定書の実施に要した費用を控除した後に国際事務局がすべての締約国に平等に配分する。
- (5) (2)(ii)に規定する追加手数料の収入総額は、各年の終了に当たり、当該各年において各締約国が標章の保護につき領域指定の通報を受けた件数(標章登録に際して審査を要件とする締約国については規則に定める係数を当該件数に乗じて得た数)に応じて関係締約国に比例配分する。
- (6) (2)(iii)に規定する付加手数料の収入総額は、(5)に定める方法と同一の方法により関係締約国に配分する。
- (7)(a) 締約国は、第3条の3の規定に基づき自国を指定する国際登録及び当該国際登録の更新について、追加手数料及び付加手数料による収入の配分を受けることに代えて個別の手数料(以下「個別手数料」という。)の支払を受けることを希望する旨を宣言することができる。個別手数料の額については、その宣言において指定するものとし、その後の宣言において変更することができる。もっとも、個別手数料の額は、当該締約国の官庁が自己の登録簿における10年の存続期間の標章登録をするため又は当該標章登録の存続期間を10年間更新するために当該標章登録の名義人に支払わせることのできる額から国際手続の利用による節約分を減じた額に相当する額を上回ることができない。このような個別手数料が支払われる場合には、次の規定が適用されるものとする。
(i) (2)(ii)に規定する追加手数料は、この(a)の規定に基づく宣言を行った締約国のみを第3条の3の規定に基づいて指定したときは、支払う必要がない。
(ii) (2)(iii)に規定する付加手数料は、この(a)の規定に基づく宣言を行った締約国については、支払う必要がない。
(b) (a)の規定に基づく宣言は、第14条(2)に規定する批准書、受諾書、承認書又は加入書において行うことができるものとし、その効力は、当該宣言を行った国又は政府間機関についてこの議定書が効力を生ずる日に生ずる。また、この宣言は、その後においても行うことができるものとし、この場合に当該宣言は、その効力が生ずる日以降の日を国際登録の日とする国際登録について、事務局長が当該宣言を受領した後3箇月で又は当該宣言において指定されたそれ以降の日に効力を生ずる。
第9条 国際登録の名義人の変更の記録
国際事務局は、国際登録が領域内で効力を有する締約国の全部若しくは一部について又は国際登録において指定された商品及びサービスの全部若しくは一部について国際登録の名義人の変更が生じた場合には、当該国際登録の従前の名義人からの請求又は関係官庁からの職権による若しくは利害関係者の求めに応じた請求により、当該変更を国際登録簿に記録する。ただし、新たな名義人が第2条(1)の規定に基づき国際出願をする資格を有する者である場合に限る。
第9条の2 国際登録に関する特定の事項の記録
国際事務局は、国際登録簿に次の事項を記録する。
- (i) 国際登録の名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更
- (ii) 国際登録の名義人の代理人の選任及び当該代理人に関する他の関連事項
- (iii) 国際登録において指定された商品及びサービスに関し締約国の全部又は一部について付された限定
- (iv) 国際登録に関し締約国の全部又は一部について行われた放棄、取消し又は無効
- (v) 国際登録の対象である標章についての権利に関する他の関連事項であって規則に定めるもの
第9条の3 特定の記録の手数料
第9条又は前条の規定に基づく記録をすることについては、手数料の支払を条件とすることができる。
第9条の4 2以上の国である締約国の共通の官庁
- (1) 2以上の国である締約国が標章に関するそれぞれの国内法令を相互に統一することを合意したときは、これらの国である締約国は、事務局長に次のことを通報することができる。
- (i)1の共通の官庁がこれらの国である締約国それぞれの官庁を代行すること。
- (ii)前各条、次条及び第9条の6の規定の全部又は一部の適用上、これらの国である締約国がそれらの領域の全体にわたって単一の国とみなされること。
- (2) (1)の規定に従って通報された内容は、事務局長が他のすべての締約国に対して当該内容を通報した日の後3箇月を経過するまでは、有効とならない。
第9条の5 国際登録の国内出願又は広域出願への変更
国際登録が、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部につき第6条(4)の規定に基づく本国官庁の請求により取り消された場合において、当該国際登録に係る領域指定が行われていた締約国の官庁に対し当該国際登録の名義人であった者が同一の標章に係る標章登録出願をしたときは、当該標章登録出願は、次の(i)から(iii)までの条件を満たすことを条件として、第3条(4)に規定する国際登録の日又は第3条の3(2)に規定する領域指定の記録の日に行われたものとみなし、かつ、当該国際登録についてその名義人が優先権を有していた場合には、当該名義人であった者は、同一の優先権を有するものとする。
- (i) 標章登録出願が国際登録の取り消された日から3箇月以内に行われること。
- (ii) 標章登録出願において指定された商品及びサービスが当該締約国に係る国際登録において指定されていた商品及びサービスに実際に含まれること。
- (iii) 標章登録出願が手数料の支払を含む関係法令上のすべての要件を満たしていること。
第9条の6 この議定書及びマドリッド協定(ストックホルム改正協定)の双方を締結した国の間の関係
- (1)(a) この議定書及びマドリッド協定(ストックホルム改正協定)の双方を締結した国の相互の関係について、この議定書のみが適用される。
(b) (a)の規定にかかわらず、第5条(2)(b)若しくは(c)又は第8条(7)の規定に基づいて、この議定書及びマドリッド協定(ストックホルム改正協定)の双方を締結した国によって行われた宣言は、この議定書及び同協定の双方を締結した他の国との関係にいかなる影響も及ぼすものではない。 - (2) 総会は、2008年9月1日から三年を経過した後は、(1)(b)の規定の適用について検討するものとし、その後いつでも、四分の三以上の多数による議決で、同規定を廃止し、又はその適用範囲を制限することができる。この場合においては、マドリッド協定(ストックホルム改正協定)及びこの議定書の双方を締結した国のみが総会の投票に参加する権利を有する。
第10条 総会
- (1)(a) 締約国は、マドリッド協定(ストックホルム改正協定)の当事国と共に同一の総会の構成国となるものとする
(b) 各締約国は、総会において1人の代表により代表されるものとし、代表は、代表代理、顧問及び専門家の補佐を受けることができる
(c) 各代表団の費用は、その代表団を任命した締約国が負担する。ただし、各締約国の1人の代表の旅費及び滞在費については、同盟の基金から支弁する。 - (2) 総会は、マドリッド協定(ストックホルム改正協定)に基づく任務に加えて、次の任務を有する。
- (i) この議定書の実施に関するすべての事項を取り扱うこと。
- (ii) 国際事務局に対し、この議定書の改正会議の準備に関する指示を与えること。この場合において、締約国でない同盟国の意見を十分に考慮するものとする。
- (iii) この議定書の実施に関する規則を採択し及び修正すること。
- (iv) この議定書上適切と認める他の任務を遂行すること。
- (3)(a) 各締約国は、総会において1の票を有する。マドリッド協定(ストックホルム改正協定)の当事国のみに関する事項については、同協定の当事国でない締約国は投票権を有しないものとし、また、締約国のみに関する事項については、締約国のみが投票権を有する
(b) 各事項に係る総会においての投票については、当該各事項について投票権を有する構成国の2分の1をもって定足数とする。
(c) 総会は、(b)の規定にかかわらず、いずれの会期においても、各事項について投票権を有し、かつ、総会に出席した構成国の数が当該各事項について投票権を有する構成国の2分の1に満たないが3分の1以上である場合には、決定を行うことができる。その決定が総会の手続以外の事項に関する決定である場合には、国際事務局は、当該事項について投票権を有するが総会に出席しなかった構成国に対し、当該決定を通報するとともに、その通報の日から3箇月の期間内に書面によって投票し又は棄権するよう要請する。当該3箇月の期間の満了に当たり、投票権を有するが総会に出席しなかった構成国であって書面によって投票し又は棄権したものの数により当該会期における定足数の不足分が満たされ、かつ、必要多数の賛成が得られている場合に限って、当該決定は、効力を生ずる。
(d) 総会の決定は、第5条(2)(e)、前条(2)、第12条及び第13条(2)に規定する場合を除くほか、投票数の3分の2以上の多数による議決で行う。
(e) 棄権は、投票とみなさない。
(f) 代表は、総会の1の構成国のみを代表し、その構成国の名においてのみ投票することができる。 - (4) 総会は、マドリッド協定(ストックホルム改正協定)に定める通常会期及び臨時会期の会合に加えて、いずれかの事項について投票権を有する構成国の4分の1以上の要請があったときは、事務局長の招集により、当該事項を議題とする臨時会期の会合を開催する。このような臨時会期の議事日程は、事務局長が作成する。
第11条 国際事務局
- (1) この議定書に基づく国際登録及び関連の任務並びにこの議定書に関連するすべての管理業務は、国際事務局が行う。
- (2)(a) 国際事務局は、総会の指示に従ってこの議定書の改正会議の準備を行う。
(b) 国際事務局は、改正会議の準備に関し政府間機関及び国際的な非政府機関と協議することができる。
(c) 事務局長及びその指名する者は、改正会議における審議に投票権なしで参加する。 - (3) 国際事務局は、この議定書に関連して国際事務局に与えられる他の任務を遂行する。
第12条 財政
同盟の財政については、マドリッド協定(ストックホルム改正協定)第12条の規定を締約国に準用する。ただし、同条中、同協定第8条の引用はこの議定書第8条の引用に読み替えるものとする。また、同協定第12条(6)(b)の規定の適用上、締約国際機関は、総会が全会一致の議決で別段の決定を行う場合を除くほか、工業所有権の保護に関するパリ条約に基づく分担金の等級Ιに属するものとする。
第13条 この議定書の特定の規定の修正
- (1) 第10条からこの条までの規定の修正の提案は、締約国又は事務局長が行うことができる。その提案は、総会による審議の遅くとも6箇月前までに、事務局長が締約国に送付する。
- (2) (1)に規定する条の修正は、総会が採択する。採択には、投票数の4分の3以上の多数による議決を必要とする。ただし、第10条及びこの(2)の規定の修正には、投票数の5分の4以上の多数による議決を必要とする。
- (3) (1)に規定する条の修正は、その修正が採択された時に総会の構成国であって当該修正についての投票権を有していた国及び政府間機関の4分の3から、それぞれの憲法上の手続に従って行われた受諾についての書面による通告を事務局長が受領した後1箇月で効力を生ずる。このようにして受諾された修正は、当該修正が効力を生ずる時に締約国であり又はその後に締約国となるすべての国及び政府間機関を拘束する。
第14条 この議定書の締結及び効力発生
- (1)(a) 工業所有権の保護に関するパリ条約の当事国であるいずれの国も、この議定書を締結することができる。
(b) いずれの政府間機関も、次の(i)及び(ii)の条件を満たす場合には、この議定書を締結することができる。- (i) 当該政府間機関の構成国のうち少なくとも1の国が工業所有権の保護に関するパリ条約の当事国であること。
- (ii) 当該政府間機関がその領域内において効力を有する標章の標章登録を担当する1の広域官庁を有していること。ただし、当該広域官庁が第9条の4の規定に基づく通報の対象でない場合に限る。
- (2) (1)に規定する国又は政府間機関は、この議定書に署名することができるものとし、この議定書に署名している場合にはその批准書、受諾書又は承認書を、また、この議定書に署名していない場合にはその加入書を寄託することができる。
- (3) (2)に規定する文書は、事務局長に寄託する。
- (4)(a) この議定書は、4の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された後3箇月で効力を生ずる。ただし、これらの文書のうち少なくとも1の文書をマドリッド協定(ストックホルム改正協定)の当事国が寄託し、かつ、これらの文書のうち少なくとも1の文書を同協定の当事国でない国又は(1)(b)に規定する政府間機関が寄託することを条件とする。
(b) (a)に規定する場合を除くほか、この議定書は、(1)に規定する国又は政府間機関について、事務局長が当該国又は政府間機関の批准、受諾、承認又は加入を通報した日の後3箇月で効力を生ずる。 - (5) (1)に規定する国又は政府間機関は、この議定書の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の際に、この議定書が自己について効力を生ずる日前にこの議定書に基づいて行われたいずれの国際登録についても、そのような国際登録による標章の保護の効果が及ぶ領域として当該国又は政府間機関を指定することを認めない旨を宣言することができる。
第15条 廃棄
- (1) この議定書は、無期限に効力を有する。
- (2) いずれの締約国も、事務局長にあてた通告によりこの議定書を廃棄することができる。
- (3) 廃棄は、事務局長がその通告を受領した日の後1年で効力を生ずる。
- (4) いずれの締約国も、この議定書が当該締約国について効力を生じた日から5年を経過するまでは、この条に定める廃棄の権利を行使することができない。
- (5)(a) いずれかの標章が、廃棄の効力を生ずる日においても当該廃棄を行う国又は政府間機関に係る領域指定を行っていた国際登録の対象である場合には、当該国際登録の名義人は、当該廃棄を行う国又は政府間機関の官庁に対し同一の標章に係る標章登録出願をすることができる。当該標章登録出願は、次の(i)から(iii)までの条件を満たすことを条件として、第3条(4)に規定する国際登録の日又は第3条の3(2)に規定する領域指定の記録の日に行われたものとみなし、かつ、当該国際登録についてその名義人が優先権を有していた場合には、当該名義人であった者は、同一の優先権を有するものとする。
(i) 標章登録出願が、廃棄が効力を生じた日から2年以内に行われること。
(ii) 標章登録出願において指定された商品及びサービスが当該廃棄を行う国又は政府間機関に係る国際登録において指定されていた商品及びサービスに実際に含まれること。
(iii) 標章登録出願が手数料の支払を含む関係法令上のすべての要件を満たしていること。
(b) (a)の規定は、廃棄が効力を生ずる日においても当該廃棄を行う国又は政府間機関以外の締約国に係る領域指定を行っていた国際登録の対象である標章につき当該国際登録の名義人が当該廃棄のために第2条(1)の規定に基づき国際出願をする資格を有する者でなくなった場合に準用する。
第16条 署名,言語及び寄託者の任務
- (1)(a) この議定書は、英語、フランス語及びスペイン語による本書1通について署名するものとし、マドリッドにおける署名のための開放が終了したときは、事務局長に寄託する。本書は、これらの3の言語をひとしく正文とする。
(b) 事務局長は、関係する政府及び当局と協議の上、アラビア語、中国語、ドイツ語、イタリア語、日本語、ポルトガル語、ロシア語及び総会が指定する他の言語によるこの議定書の公定訳文を作成する。 - (2) この議定書は、1989年12月31日まで、マドリッドにおいて署名のために開放しておく。
- (3) 事務局長は、締約国となることができるすべての国及び政府間機関に対し、スペイン政府が認証したこの議定書の署名本書の謄本2通を送付する。
- (4) 事務局長は、この議定書を国際連合事務局に登録する。
- (5) 事務局長は、締約国であり又は締約国となることができるすべての国及び政府間機関に対し、署名、批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託、この議定書の効力発生、この議定書の修正、廃棄の通告及びこの議定書に定める宣言を通報する。
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