商標権は、設定の登録により発生する。
2 第四十条第一項の規定による登録料又は第四十一条の二第一項の規定により商標登録をすべき旨の査定若しくは審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付すべき登録料の納付があつたときは、商標権の設定の登録をする。
3 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を商標公報に掲載しなければならない。
一 商標権者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 商標登録出願の番号及び年月日
三 願書に記載した商標
四 指定商品又は指定役務
五 登録番号及び設定の登録の年月日
六 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
4 特許庁長官は、前項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した商標公報(以下「商標掲載公報」という。)の発行の日から二月間、特許庁において出願書類及びその附属物件を公衆の縦覧に供しなければならない。ただし、個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがある書類又は物件及び公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある書類又は物件であつて、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるものについては、この限りでない。
5 特許庁長官は、個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがある書類又は物件であつて、前項ただし書の規定により特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるもの以外のものを縦覧に供しようとするときは、当該書類又は物件を提出した者に対し、その旨及びその理由を通知しなければならない。
商標権の存続期間は、設定の登録の日から十年をもつて終了する。
2 商標権の存続期間は、商標権者の更新登録の申請により更新することができる。
3 商標権の存続期間を更新した旨の登録があつたときは、存続期間は、その満了の時に更新されるものとする。
〔趣旨│商標19条〕
工業所有権法逐条解説21版 <>内は本記事著者が加筆した。
本条は、商標権の存続期間についての規定である。一項は商標権の存続期間は設定の登録の日から一〇年をもって終了することを規定する。商標権の存続期間については特許権、実用新案権及び意匠権の存続期間とは本質的に意味が違うことに注意する必要がある。すなわち、特許権等は、新規な発明等をした者は特許制度等によりそれを一般に公表し、技術の進歩を促進することに資する代わりに一定期間その実施の権利を独占するという利益を与えられるのであり、その独占期間経過後は何人もその技術的思想を利用し得ることとするのである。つまり、特許権の存続期間は新規な発明者のその発明を独占したいという要求と社会一般のその発明を早く自由に利用したいという要求との調和点としての意味をもつものだから、特許制度の本質的な一要素となっているわけであり、さらに特許制度が新規性をその要素としていることと不可分に結びついているのである。これに対して、商標権においては、その商標に化体された信用を保護することを目的とするのだから、特許権におけるような意味で存続期間を限る必要はない。むしろ、存続期間を限るということは長年にわたる商標の使用の結果蓄積された信用を保護するという立法趣旨と根本的に相反することなのである。しかし、だからといって、何らの制限なしに一度設定された商標権が永久に存続するということは、第一に権利者がもはや業務の廃止その他の理由によりその商標権の存続を希望しなくなったような場合に、第二にその商標が時代の推移とともに反公益的な性格を帯びるようになった場合に、第三に長期間にわたって使用されていない大量の登録商標が存在し続けることによって商標制度の本来の趣旨を逸脱するような事態となる場合等に不当な結果を招くことは明らかである。そこで、商標権の存続期間は一〇年とし、次項において、必要な場合は、何回でも存続期間を更新することができる旨を定めて、前に述べた三つの問題を解決しつつ権利の永続性という商標権のもつ本質的な要求を満足させているのである。なお、更新の単位は一〇年である。
二項は、商標権者が(特許庁長官に対し)、「更新登録の申請」をすることによってその商標権の存続期間を更新できることを規定したものである。この更新については、(中略)、更新登録の申請と料金納付のみにより、使用チェックや実体審査を行うことなく更新を認める更新申請制度を導入することとした。なお、この更新登録の申請は、商標権者のみがすることができ、使用権者や質権者などの利害関係を有する者であってもすることができない。<防護標章登録の更新は利害関係人も可能>
三項は、商標権の存続期間の更新の登録の効果について規定したものである。ここで「商標権の存続期間を更新した旨の登録」とは、二三条に規定する更新登録のことをいい、「(存続期間)の満了の時に」とは、存続期間の満了の日の翌日の午前零時を指す。すなわち、更新された存続期間はその時点(満了日の翌日の午前零時)から始まることを意味している。
商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 申請人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 商標登録の登録番号
三 前二号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項
2 更新登録の申請は、商標権の存続期間の満了前六月から満了の日までの間にしなければならない。
3 商標権者は、前項に規定する期間内に更新登録の申請をすることができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内<6月>にその申請をすることができる。
4 商標権者が前項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内に、その申請をしないときは、その商標権は、存続期間の満了の時にさかのぼつて消滅したものとみなす。
〇更新登録の申請
原則: 商標権の存続期間の満了前6月から満了の日まで。
例外: 存続期間の満了後6月以内(20条3項、商標法施行規則10条2項)。
(登録料)第四十条
商標権の設定の登録を受ける者は、登録料として、一件ごとに、二万八千二百円に区分(指定商品又は指定役務が属する第六条第二項の政令で定める商品及び役務の区分をいう。以下同じ。)の数を乗じて得た額を納付しなければならない。
2 商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、登録料として、一件ごとに、三万八千八百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。
3 前二項の規定は、国に属する商標権には、適用しない。
4 第一項又は第二項の登録料は、商標権が国と国以外の者との共有に係る場合であつて持分の定めがあるときは、第一項又は第二項の規定にかかわらず、これらの規定に規定する登録料の金額に国以外の者の持分の割合を乗じて得た額とし、国以外の者がその額を納付しなければならない。
5 前項の規定により算定した登録料の金額に十円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
6 第一項又は第二項の登録料の納付は、経済産業省令で定めるところにより、特許印紙をもつてしなければならない。ただし、経済産業省令で定める場合には、経済産業省令で定めるところにより、現金をもつて納めることができる。
(登録料の納付期限)第四十一条
前条第一項の規定による登録料は、商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付しなければならない。
2 特許庁長官は、登録料を納付すべき者の請求により、三十日以内を限り、前項に規定する期間を延長することができる。
3 登録料を納付すべき者は、第一項に規定する期間(前項の規定による期間の延長があつたときは、延長後の期間)内にその登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、その登録料を納付することができる。
4 登録料を納付すべき者がその責めに帰することができない理由により、前項の規定により登録料を納付することができる期間内にその登録料を納付することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその登録料を納付することができる。
5 前条第二項の規定による登録料は、更新登録の申請と同時に納付しなければならない。
前条第四項の規定により消滅したものとみなされた商標権の原商標権者は、同条第三項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内にその申請ができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、その申請をすることができる。
2 前項の規定による更新登録の申請があつたときは、存続期間は、その満了の時にさかのぼつて更新されたものとみなす。
〇消滅した商標権の更新申請(商標21条)
更新の申請を行わず、消滅した商標権の原商標権者は、正当な理由があるときは、存続期間の満了後6月以内で、正当な理由がなくなった日から2月以内に限り、更新の申請をすることができる(商標法施行規則10条3項)。
前条第二項の規定により回復した商標権の効力は、第二十条第三項に規定する更新登録の申請をすることができる期間の経過後前条第一項の申請により商標権の存続期間を更新した旨の登録がされる前における次に掲げる行為には、及ばない。
一 当該指定商品又は指定役務についての当該登録商標の使用
二 第三十七条各号に掲げる行為<間接侵害>
第四十条第二項の規定による登録料又は第四十一条の二第七項の規定により更新登録の申請と同時に納付すべき登録料の納付があつたときは、商標権の存続期間を更新した旨の登録をする。
2 第二十条第三項又は第二十一条第一項の規定により更新登録の申請をする場合は、前項の規定にかかわらず、第四十条第二項の規定による登録料及び第四十三条第一項の規定による割増登録料又は第四十一条の二第七項の規定により更新登録の申請と同時に納付すべき登録料及び第四十三条第二項の規定による割増登録料の納付があつたときに、商標権の存続期間を更新した旨の登録をする。
3 前二項の登録があつたときは、次に掲げる事項を商標公報に掲載しなければならない。
一 商標権者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 登録番号及び更新登録の年月日
三 前二号に掲げるもののほか、必要な事項
1項は、実態審査がないことを意味する。
(登録料の分割納付)第四十一条の二
商標権の設定の登録を受ける者は、第四十条第一項の規定にかかわらず、登録料を分割して納付することができる。この場合においては、商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に、一件ごとに、一万六千四百円に区分の数を乗じて得た額を納付するとともに、商標権の存続期間の満了前五年までに、一件ごとに、一万六千四百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。
2 特許庁長官は、前項の規定により商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付すべき登録料(以下「前期分割登録料」という。)を納付すべき者の請求により、三十日以内を限り、同項に規定する期間を延長することができる。
3 前期分割登録料を納付すべき者は、前期分割登録料を納付すべき期間(前項の規定による期間の延長があつたときは、延長後の期間)内に前期分割登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、前期分割登録料を納付することができる。
4 前期分割登録料を納付すべき者がその責めに帰することができない理由により、前項の規定により前期分割登録料を納付することができる期間内に前期分割登録料を納付することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその登録料を納付することができる。
5 第一項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料(以下「後期分割登録料」という。)を納付すべき者は、後期分割登録料を納付すべき期間内に後期分割登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、その期間の経過後六月以内に後期分割登録料を追納することができる。
6 前項の規定により後期分割登録料を追納することができる期間内に後期分割登録料及び第四十三条第三項の規定により納付すべき割増登録料の納付がなかつたときは、その商標権は、存続期間の満了前五年の日に遡つて消滅したものとみなす。
7 商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、第四十条第二項の規定にかかわらず、登録料を分割して納付することができる。この場合においては、更新登録の申請と同時に、一件ごとに、二万二千六百円に区分の数を乗じて得た額を納付するとともに、商標権の存続期間の満了前五年までに、一件ごとに、二万二千六百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。
8 第五項及び第六項の規定は、前項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料を追納する場合に準用する。この場合において、第五項中「第一項」とあるのは、「第七項」と読み替えるものとする。
9 第四十条第三項から第五項までの規定は、第一項及び第七項の場合に準用する。
(後期分割登録料等の追納による商標権の回復)第四十一条の三
前条第六項の規定により消滅したものとみなされた商標権の原商標権者は、同条第五項の規定により後期分割登録料を追納することができる期間内に後期分割登録料及び第四十三条第三項の割増登録料を納付することができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、その後期分割登録料及び割増登録料を追納することができる。
2 前項の規定による後期分割登録料及び第四十三条第三項の割増登録料の追納があつたときは、その商標権は、存続期間の満了前五年の日の前日の経過の時に遡つて存続していたものとみなす。
3 前二項の規定は、前条第七項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料及び第四十三条第三項の割増登録料を追納する場合に準用する。
(割増登録料)第四十三条
第二十条第三項又は第二十一条第一項の規定により更新登録の申請をする者は、第四十条第二項の規定により納付すべき登録料のほか、その登録料と同額の割増登録料を納付しなければならない。ただし、当該更新登録の申請をする者がその責めに帰することができない理由により第二十条第二項に規定する期間内にその登録料を納付することができないときは、その割増登録料を納付することを要しない。
2 第四十一条の二第七項の場合においては、前項に規定する者は、同条第七項の規定により更新登録の申請と同時に納付すべき登録料のほか、その登録料と同額の割増登録料を納付しなければならない。ただし、当該者がその責めに帰することができない理由により第二十条第二項に規定する期間内にその登録料を納付することができないときは、その割増登録料を納付することを要しない。
3 第四十一条の二第五項(同条第八項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の場合においては、商標権者は、同条第一項又は第七項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料のほか、その登録料と同額の割増登録料を納付しなければならない。ただし、当該商標権者がその責めに帰することができない理由により同条第五項に規定する後期分割登録料を納付すべき期間内にその登録料を納付することができないときは、その割増登録料を納付することを要しない。
4 前三項の割増登録料の納付は、経済産業省令で定めるところにより、特許印紙をもつてしなければならない。ただし、経済産業省令で定める場合には、経済産業省令で定めるところにより、現金をもつて納めることができる。
商標権の分割は、その指定商品又は指定役務が二以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとにすることができる。
2 前項の分割は、商標権の消滅後においても、第四十六条第三項の審判(商標登録無効審判)の請求があつたときは、その事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に限り、することができる。
〇主体的要件
商標権者のみが分割可能。
〇客体的要件
指定商品又は指定役務ごと
〇時期的要件
商標権発生後、商標権が消滅するまでの期間。また、商標権の消滅後であっても、無効審判が請求された場合には、事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に商標権の分割をすることが可能。
商標権の移転は、その指定商品又は指定役務が二以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとに分割してすることができる。
2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であつて営利を目的としないものの商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。
3 公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者の商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、その事業とともにする場合を除き、移転することができない。
4 地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない。
【趣旨】
旧法一二条一項は「商標權ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ」移転することができる旨を規定していたが、現行法ではこれに相当する条文がない。すなわち、現行法では、商標権は営業と分離して自由に売買その他の手段によって移転することができるのである。いわゆる商標権の自由譲渡である。商標権はその初めには人格権的性質が濃く、その営業と固く結びついていた。また、商標権を営業と分離して移転することを認めると商品の出所の混同を生ずるおそれがあるし、その商標を使用した商品の品質保持についての保証がないという理由で自由譲渡を認めなかった。しかし、その後次第に商標権の財産権としての地位の強化の傾向が一般的となり、経済界においても、商標に化体された信用そのものに財産的価値を認め、営業と離れての譲渡を認めるべきだという要請がきわめて強く、形式的にはともかく実体的には自由譲渡が行われていたといわれる。また商品の出所の混同の問題についても、一般消費者は品質についての保証があれば出所のいかんは問わないだろうし、その品質の保証についても商標権者が同一でも必ずしも法的に品質の保証があるわけではなく、逆に自由譲渡を認めたとしても商標権を譲り受けた者はそれまでに築かれた信用の維持につとめる結果品質が劣ることもないだろうから、一般的に自由譲渡を禁止する根拠とはなり得ない。かような理由により現行法では商標権の自由譲渡を認めたのである。【商標権の分割移転を認める理由】
工業所有権法逐条解説21版
⑴商標権は私的財産権である工業所有権の一つとして位置付けられるものである以上、類似商標の分離移転や同一商標の分割移転といえども、誤認混同のおそれが生じないよう公益的観点から別途の方法により担保することが可能であれば、あとは私益の問題であるから、当事者間の合意があれば基本的に自由に処分(移転)することを認めることが適当であること。
⑵類似商標の分離移転や同一商標の分割移転がなされた場合であっても、それぞれの商標権者が誤認混同のおそれが生じるような使用をすることは、それをすれば損害を蒙るのは自分自身である以上、考えにくく、使用地域を分けたり、自主的に適切な混同防止表示を付す等による棲み分けが行われ、平穏に使用されるのが通常であろうこと。
⑶従来の商標制度の下においても、使用許諾制度、サービスマークの特例出願に係る重複登録制度、商標権の共有等、一定の誤認混同防止のための担保措置の下で同一・類似商標の併存を認めているが、いずれについても特段の問題が生じているわけでないこと
〇分割・移転の関連規定
① 商標権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持ち分を目的として質権を設定できない(準特73条1項)。
② 商標権の分割、移転(相続その他一般承継によるものを除く。)は、登録しなければその効力は生じない(準特98条第1項第1号)。
〇移転できない商標(商標24条の2③)
公益に関する事業であって営利を目的としないものを行っている者が登録を受けたその事業を表示する標章であって著名なものと同一の商標に係る商標権は、その事業とともにする場合を除き、一切移転することができない。
〇地域団体商標に係る商標権の移転は一般承継のみ(青本21版)
地域団体商標登録に係る商標権の自由な譲渡を認めた場合には、地域団体商標につき主体要件を定めた趣旨を没却することになるため、二項と同様に、組合等の団体の合併のような一般承継の場合に限り移転することができるものとし、譲渡は認めないこととした。
(例題)
公益に関する事業であって営利を目的としないものを行っている者がその事業を表示する著名な標章について商標登録を受けたときは、その商標権は、一般承継であっても、その事業とともにする場合を除き、移転することができない。(答え)〇
(例題)R2商標5
1 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であって営利を目的としないものの商標登録出願であって、商標法第4条第2項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができず、他人に通常使用権を許諾することもできない。(答え)×
(団体商標に係る商標権の移転)第二十四条の三
団体商標に係る商標権が移転されたときは、次項に規定する場合を除き、その商標権は、通常の商標権に変更されたものとみなす。
2 団体商標に係る商標権を団体商標に係る商標権として移転しようとするときは、その旨を記載した書面及び第七条第三項に規定する書面を移転の登録の申請と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
(商標権の移転に係る混同防止表示請求)第二十四条の四
〔趣旨〕
工業所有権法逐条解説21版
本条は、平成八年の一部改正において、連合商標制度の廃止に伴って分離移転を認めたこと、及び類似関係にある商品・役務についても商標権の分割移転を認めたこと(二四条の二〔趣旨〕参照)に対応する誤認混同防止のための担保措置の一つを定めたものであり、商標権が移転された結果、互いに抵触する商標権が異なった商標権者に属することとなった場合において、双方の商標権者又は専用使用権者が互いに混同防止表示の請求をし得ることを規定したものである。すなわち、商標権者が有する二以上の商標権のうちの一つが分離して移転され、又は商標権者が有する商標権(二以上の指定商品若しくは指定役務を指定しているもの)が二四条の二第一項の規定により分割して移転された結果、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なった商標権者によって保有されることとなった場合において、一方の商標権者又は使用権者がその登録商標をその指定商品又は指定役務について使用をし、他方の商標権者又は専用使用権者の業務上の利益を害することとなっても、当該他方の商標権者又は専用使用権者は、差止請求権等の商標権の権利行使をすることができない。そこで、業務上の利益が害されるおそれのあるときには混同防止表示請求を認めることにより、自己の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる事態を回避し、その商標権者又は専用使用権者の業務上の信用の保護とともに、需要者の利益の保護を図ることとしたものである。
なお、混同を防ぐのに適当な表示としては、三二条二項(先使用による商標の使用をする権利を有する者に対する混同防止表示請求)等に規定する場合と同様に、一般需要者が取引上の通常の注意力をもって自他識別し得る程度のもの(例えば、自己が業務を行っている地域の地名等を付して需要者の注意を促し得るもの等)であればよいものと考えられる。
商標権が移転された結果、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なつた商標権者に属することとなつた場合において、その一の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の指定商品又は指定役務についての登録商標の使用により他の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者の業務上の利益(当該他の登録商標の使用をしている指定商品又は指定役務に係るものに限る。)が害されるおそれのあるときは、当該他の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者は、当該一の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者に対し、当該使用について、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
〇業務上の利益が害されるおそれのあるとき
業務上の利益が現実に害されたことまでは必要とせず、利益を害される具体的危険性(例えば、売上げの減少、得意先の喪失、業務上の信用や名声の毀損、登録商標の出所表示機能や品質・質の保証機能の毀損等についての具体的な危険性)があれば足りる。
(登録商標に類似する商標等についての特則)第七十条
第二十五条、第二十九条、第三十条第二項、第三十一条第二項、第三十一条の二第一項、第三十四条第一項、第三十八条第三項若しくは第四項、第五十条、第五十二条の二第一項、第五十九条第一号、第六十四条、第七十三条又は第七十四条における「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとする。
2 第四条第一項第十二号又は第六十七条における「登録防護標章」には、その登録防護標章に類似する標章であつて、色彩を登録防護標章と同一にするものとすれば登録防護標章と同一の標章であると認められるものを含むものとする。
3 第三十七条第一号又は第五十一条第一項における「登録商標に類似する商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含まないものとする。
4 前三項の規定は、色彩のみからなる登録商標については、適用しない。
商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
〇「登録商標」に色彩類似は含まれる(商標25条・70条)
商標権で占有できる登録商標の使用について、その登録商標には色彩のみ類似(色を変えれば登録商標になる)も含まれる。
〇侵害とみなす行為には類似範囲が含まれる(商標第三十七条)
次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
(商標権の効力が及ばない範囲)第二十六条
〔趣旨〕
工業所有権法逐条解説21版
本条一項は、商標権の効力が制限される場合を規定する。すなわち、業務を行う者がその商品又は役務について本項各号に掲げる商標を普通に用いられる方法で使用をする場合にまで商標権の効力を及ぼすのは妥当でないと考えられるからである。本項の立法趣旨は三つある。第一に過誤登録に対する第三者の救済規定であると考えられる。すなわち、他人の肖像等については四条一項八号で、また商品又は役務の普通名称等は三条一項一号から三号までによって特別顕著性がないものとして登録されないのであるが、誤って商標登録があった場合でも商標登録の無効審判手続によるまでもなく、他人に商標権の効力を及ぼすべきではないとの趣旨によるのである。この点はとくに四七条の除斥期間が経過して無効審判の請求ができなくなった後に実益がある。第二はその商標自体は不登録理由に該当しないため商標登録を受けることができ、したがって、類似部分については禁止権の効力が及ぶこととなったが、その類似部分に本条に掲げられたものを含むため、その部分にまで商標権の効力を及ぼすのは妥当ではないと考えられるときに、当該部分の禁止的効力を制限する場合である。たとえば、仮に「アスカレーター」と「エスカレーター」とが類似であるとし、「アスカレーター」は登録要件を満たしているが「エスカレーター」は普通名称であるというような場合があるとすると「アスカレーター」は登録されるが当該商標権の効力は本条によって「エスカレーター」には及ばないのである。第三は後発的に本条に定めるものとなった場合に商標権の効力を制限し、一般人がそのものを使うことを保障するためである。例えば、従来から使用されていた登録商標の名称と同一の名称の都市ができた場合等が考えられよう。
商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 ①自己の肖像又は②自己の氏名若しくは名称若しくは③著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
他の商標の一部となつているものを含む:商標Aが他の商標Bの一部になっている場合には、商標Bが登録になっても、その商標権の効力は商標Aには及ばないことを意味します。
2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。
(例題)
いわゆるハウスマークに代表されるような識別力のある商標に識別力のない文字等を結合させた商標について、その商標中の当該識別力のない文字等の部分には商標権の効力は及ばない。(答え)〇
二 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
三 当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
四 「当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務」について慣用されている商標
五 商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標
〇政令で定める特徴
立体的形状、色彩又は音(役務にあつては、役務の提供の用に供する物の立体的形状、色彩又は音)
五 商標権の効力は、商品等が当然に備える特徴のうち、立体的形状、色彩又は音(役務にあっては、役務の提供の用に供する物の立体的形状、色彩又は音)のみからなる商標には及ばない。
(例題)
商標権の効力は、当該指定商品又は指定役務について慣用されている商標に類似する商標には及ばない。(答え)×
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
〇巨峰事件(福岡地方裁判所S46年9月17日 S44(ヨ)第41号)
概要:「包装用容器」について「巨峰」という商標権を有する原告が、「巨峰ぶどう」を内容物にする段ボールに「巨峰」「KYOHO」の標章を付した被告に対して、その使用の停止を求めた裁判。
結論:本件各段ボール箱に表示された「巨峰」「KYOHO」の標章は、その客観的機能からみても、又これを製造している被申請人の主観的意図からみても、内容物たる巨峰ぶどうの表示であり、包装用容器たる段ボール箱についての標章の使用ではないというべきであり、本件商標権に対する侵害行為を構成するものとは認められない(商標権侵害を否定)。
2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。
3 商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。ただし、その行為が不正競争の目的でされない場合に限る。
一 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号。以下この項において「特定農林水産物等名称保護法」という。)第三条第一項(特定農林水産物等名称保護法第三十条において読み替えて適用する場合を含む。次号及び第三号において同じ。)の規定により特定農林水産物等名称保護法第六条の登録に係る特定農林水産物等名称保護法第二条第二項に規定する特定農林水産物等(当該登録に係る特定農林水産物等を主な原料又は材料として製造され、又は加工された同条第一項に規定する農林水産物等を含む。次号及び第三号において「登録に係る特定農林水産物等」という。)又はその包装に同条第三項に規定する地理的表示(次号及び第三号において「地理的表示」という。)を付する行為
二 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により登録に係る特定農林水産物等又はその包装に地理的表示を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
三 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により登録に係る特定農林水産物等に関する広告、価格表若しくは取引書類に地理的表示を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に地理的表示を付して電磁的方法により提供する行為
(登録商標等の範囲)第二十七条
登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。
2 指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない。
3 第一項の場合においては、第五条第四項の記載及び物件を考慮して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するものとする。
第二十八条
商標権の効力については、特許庁に対し、判定を求めることができる。
2 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。
3 特許法第七十一条第三項及び第四項の規定は、第一項の判定に準用する。
〇請求人適格
何人も請求することが可能、利害関係は不要。
〇判定の効果
法律的な拘束力を有するものではない。
第二十八条の二
特許庁長官は、裁判所から商標権の効力について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。
2 特許法第七十一条の二第二項の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。
(他人の特許権等との関係)第二十九条
商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用がその使用の態様によりその商標登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは意匠権又はその商標登録出願の日前に生じた他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。
商標権の禁止権同士の抵触について
禁止権の範囲が他の商標権の禁止権の範囲と相互に抵触した場合、出願の先後を問わず、抵触する部分は両方とも使用が禁止される。
抵触が生じた際の対策
・抵触する場合に、その部分の使用をしたいときは、特許権、実用新案権又は意匠権については実施許諾を得ることで対応可能。著作権については利用許諾を得ることで対応可能。
・特許法等とは異なり、裁定についての規定はない。
禁止権と特許権、実用新案権又は意匠権とが抵触する場合について
特許権等に係る出願日の方が先の場合には禁止権の範囲が制限され、逆の場合には抵触する部分は商標権者及び特許権者等の双方とも互いに使用できなくなる。
(専用使用権)第三十条
商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。ただし、①●●●に係る商標権及び②●●●については、この限りでない。
2 専用使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。
3 専用使用権は、①●●●を得た場合及び②●●●の場合に限り、移転することができる。
特許法と異なり「実施の事業とともにする場合」が規定されていない。 事業の移転に伴って専用使用権を移転できなかったとしても、別の商標を使用すれば良いため。
(例題)
商標権に係る専用使用権の移転が認められるのは、①当該専用使用権者の事業とともにする場合、②当該商標権者の承諾を得た場合、③相続その他の一般承継の場合のいずれかに限られる。(答え)×
4 特許法第七十七条第四項及び第五項(質権の設定等)、第九十七条第二項(放棄)並びに第九十八条第一項第二号及び第二項(登録の効果)の規定は、専用使用権に準用する。
・専用使用権者は商標権者の承諾を得れば他人に通常使用権・質権を許諾することが可能(準特77条4項)。
・商標権が共有に係るときは、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、その商標権について専用使用権を設定できない(準特77条5項)。
・専用使用権者は、質権者又は通常使用権者がいるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、専用使用権を放棄できる(準特97条2項)。
・専用使用権は登録しなければ効力を生じない(準特98条1項2号)。
概要│通常使用権
商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。
2 通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有する。
3 通常使用権は、①商標権者(専用使用権についての通常使用権にあつては、商標権者及び専用使用権者)の承諾を得た場合及び②相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
4 通常使用権は、その登録をしたときは、その商標権若しくは専用使用権又はその商標権についての専用使用権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる。
5 通常使用権の移転、変更、消滅又は処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
6 特許法第七十三条第一項(共有)、第九十四条第二項(質権の設定)及び第九十七条第三項(放棄)の規定は、通常使用権に準用する。
〇通常使用権の許諾(31条1項)
商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。
※地域団体商標に係る商標権にも通常使用権を許諾することが可能。専用使用権の許諾は不可。
〇通常使用権の移転(31条3項)
通常使用権の移転ができる場合は下記の2パターンに限る。
①●●●場合
②●●●の場合
(例題)
5 通常使用権は、①商標権者(専用使用権についての通常使用権にあっては、商標権者及び専用使用権者)の承諾を得た場合、②相続その他の一般承継の場合、又は③当該通常使用権者の事業とともにする場合のいずれかに限り、移転することができる。(答え)
R2商標5
×
(団体構成員等の権利)第三十一条の二
団体商標に係る商標権を有する第七条第一項に規定する法人の構成員(以下「団体構成員」という。)又は地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(以下「地域団体構成員」という。)は、当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。ただし、その商標権(団体商標に係る商標権に限る。)について専用使用権が設定されたときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
2 前項本文の権利は、移転することができない。
3 団体構成員又は地域団体構成員は、第二十四条の四、第二十九条、第五十条、第五十二条の二、第五十三条及び第七十三条の規定の適用については、通常使用権者とみなす。
4 団体商標又は地域団体商標に係る登録商標についての第三十三条第一項第三号の規定の適用については、同号中「又はその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者」とあるのは、「若しくはその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者又はその商標の使用をする権利を有する団体構成員若しくは地域団体構成員」とする。
(先使用による商標の使用をする権利)第三十二条
他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
2 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
(例題)
3 他人の商標登録出願前から日本国内においてその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されており、その者が、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をしていても、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有さない場合がある。(答え)〇
R2商6
(例題)
先使用による商標の使用をする権利を有する者は、他人の登録商標に係る商標登録出願の際に使用していたその登録商標と同一の商標については、その使用に係る商品に類似する商品についても、この権利の行使として使用をすることができる。(答え)×
第三十二条の二
他人の地域団体商標の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
2 当該商標権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
32条の先使用権とは異なり、周知性は要求されない。
(無効審判の請求登録前の使用による商標の使用をする権利)第三十三条
次の各号のいずれかに該当する者が第四十六条第一項の審判の請求の登録前に商標登録が同項各号のいずれかに該当することを知らないで日本国内において指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について当該登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、その商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
一 同一又は類似の指定商品又は指定役務について使用をする同一又は類似の商標についての二以上の商標登録のうち、その一を無効にした場合における原商標権者
二 商標登録を無効にして同一又は類似の指定商品又は指定役務について使用をする同一又は類似の商標について正当権利者に商標登録をした場合における原商標権者
三 前二号に掲げる場合において、第四十六条第一項の審判の請求の登録の際現にその無効にした商標登録に係る商標権についての専用使用権又はその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者
2 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
3 第三十二条第二項の規定は、第一項の場合に準用する。
(特許権等の存続期間満了後の商標の使用をする権利)
第三十三条の二 商標登録出願の日前又はこれと同日の特許出願に係る特許権がその商標登録出願に係る商標権と抵触する場合において、その特許権の存続期間が満了したときは、その原特許権者は、原特許権の範囲内において、その商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその登録商標又はこれに類似する商標の使用をする権利を有する。ただし、その使用が不正競争の目的でされない場合に限る。
2 第三十二条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
3 前二項の規定は、商標登録出願の日前又はこれと同日の出願に係る実用新案権又は意匠権がその商標登録出願に係る商標権と抵触する場合において、その実用新案権又は意匠権の存続期間が満了したときに準用する。
第三十三条の三
商標登録出願の日前又はこれと同日の特許出願に係る特許権がその商標登録出願に係る商標権と抵触する場合において、その特許権の存続期間が満了したときは、その満了の際現にその特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者は、原権利の範囲内において、その商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその登録商標又はこれに類似する商標の使用をする権利を有する。ただし、その使用が不正競争の目的でされない場合に限る。
2 第三十二条第二項及び第三十三条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
3 前二項の規定は、商標登録出願の日前又はこれと同日の出願に係る実用新案権又は意匠権がその商標登録出願に係る商標権と抵触する場合において、その実用新案権又は意匠権の存続期間が満了したときに準用する。
(質権)第三十四条
商標権、専用使用権又は通常使用権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定めをした場合を除き、当該指定商品又は指定役務について当該登録商標の使用をすることができない。
2 通常使用権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
3 特許法第九十六条(物上代位)の規定は、商標権、専用使用権又は通常使用権を目的とする質権に準用する。
4 特許法第九十八条第一項第三号及び第二項(登録の効果)の規定は、商標権又は専用使用権を目的とする質権に準用する。
(特許法の準用)第三十五条
特許法第七十三条(共有)、第七十六条(相続人がない場合の特許権の消滅)、第九十七条第一項(放棄)並びに第九十八条第一項第一号及び第二項(登録の効果)の規定は、商標権に準用する。この場合において、同法第九十八条第一項第一号中「移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)」とあるのは、「分割、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)」と読み替えるものとする。
(登録の効果)第九十八条
次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
一 商標権の移転(分割、相続その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限
2 前項各号の相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。
(例題)
(イ) 商標権の分割、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限は、登録しなければその効力を生じない。(答え)〇
R2商標7
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