【1/2】請求項を「本明細書に記載の発明。」とした特許出願についての調査

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先日、特許調査をしている際に、請求項を「本明細書に記載の発明。」とした公報を発見しました。公開公報だったのですが、これに対し、審査官がどう反応するのかが気になったため、今回調査してみました。

本記事の内容
・請求項を「本明細書に記載の発明。」とした特許出願数の調査
・特許請求の範囲「本明細書に記載の発明。」に通知される拒絶理由
・なぜ「本明細書に記載の発明。」とするのかの考察

請求項を「本明細書に記載の発明。」とした特許出願数の調査方法と結果

調査方法は、J-platpatで下記のように検索しました。結果、4747件がヒットしました(2022/02/27)。

試しに、2016年の1年間の発行数に絞ってみたところ、255件がヒットしました。

特許請求の範囲「本明細書に記載の発明。」に通知される拒絶理由

十数ほどの拒絶理由通知を確認したところ、主に下記の理由で拒絶されることが確認できた。

●理由1
(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

●理由2
(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

 なお、この出願は、発明の詳細な説明及び図面の記載並びに本願出願時の技術常識を参酌しても、発明を把握することができない程度に請求項の記載が不明確であるから、請求項1に係る発明については、新規性、進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。

※実施可能要件は、理由として挙げていない通知も見受けられた。

なぜ「本明細書に記載の発明。」とするのかの考察

出願時に、明確性違反が通知されることは、知財業務に従事する人間には容易に想定できると思います。では、なぜこのようにするのでしょうか。今回の調査で、私が気づいたことをまとめます。

①審査前に補正している

審査前に補正をしている公報は、体感5割程度ありました。なんらかの事情があり、出願時に請求項がまとまらなかったのでしょう。外国の企業が多いことからも、期日までに間に合わず仕方なく、、、の出願が多いのではないかと推測します。数は少ないですが、結果として特許査定を受けているもの確認できました。

②出願がノルマになっている?

外国企業が多い中、JX金属(株)さんと(株)ニコンさんは、他社よりも明らかに多くヒットしました。また、両企業とも公開日が2015年以前はヒットせず、2016年以降のみがヒットしました。特にニコンさんは、2016年公開分だけで15件と、明らかに突出してます。この2社では、出願時に請求項をまとめることができない(間に合わない)何らかの事情を抱えているのではないでしょうか。
まず思いつくのは、「出願数のノルマがあり、半ば無理やり出願している」、「事業の都合上、期日直前に出願しておくことになった」あたりですが、気になるところです。

まとめ

手続き補正書で事情を説明していたり、特定の企業が浮かんできたりと、個人的には楽しい結果でした。ざっくり調査なので調査の方法や正確性には難ありかもしれません。気になる方はJ-platpatでチェックしてみてください。

追記:読者のコメント紹介

ツイッターでいただいたリプライの紹介です。このほかにも様々な考察やご指摘をいただきました。ありがとうございます!

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